第13話 反撃への布石
夜になり、セイバは宿屋から少し離れた空き地に赴き、稽古を始めようとする。ただ空き地の端にゴミが捨てており、目に止まる。
「む、誰だこんなとこにゴミを捨てた不届き者は」
セイバはゴミを片付ける。すると、地面を掘り返した形跡があった。
「何か埋まってる?……」
土をかき分けていくと、そこには小さなメモがあった。
セイバへ
この前は本当にすまなかった。でも大事な話がある。会って話をしたい。ギルド集会所に、ヒトクイドリの巣の討伐依頼を貼っておく。明日の朝、その依頼を受けて森林地帯に来て欲しい。後、俺と会うことはライアン騎士団長には伏せてくれ。……疑わしいと思うが頼む。
センより
「これは……」
〜〜〜〜〜
エマの部屋にて。
「あとは明日次第ですね」
「悪いなエマ、お使いみたいなことを頼んで」
エマには日中の間、師匠のマリアさんの姿に変身してもらい、空き地にゴミとメモを埋めてきてもらった。なるべくセイバの普段の行動になぞって不自然がないようにしたつもりだ。問題はセイバが来てくれるかだが……
「全然大丈夫です。それじゃ、センさんに
【ワシグナル】をかけますね」
明日はエマと別行動をとる。俺はセイバと森林地帯に、エマにはライアン騎士団長の監視をしてもらう。もし、ライアン騎士団長が消えた場合に、俺達の方に来てもらう手筈にしてる。そのために、俺の居場所がわかるよう、エマに【ワシグナル】をかけてもらった。
「さて、食事にしましょう!あぶら鶏のレモンペッパー焼きですよ〜」
「家でもあぶら鶏安定ですね〜」
「だって安くおいしいんですもん」
ギルドでもこのあぶら鶏のメニューだけ、リーズナブルだった。物価が相当安いのだろう。
「まぁな、これの唐揚げとかあったら食いたよ」
食事処や他の店にも見てみたが、なかなか置いてない。大好物なのに。
「? カラアゲってなんです?」
「あ〜ほら、鶏肉に小麦粉とかつけて、油で揚げるアレだよ」
もしかして名前が違うのかな? それなら俺が見落としてるだけかもしれん。
「油で……アゲル? どういうことですか?」
ま、まさか……
「ほ、ほら!鍋とかフライパンに油をたっぷり入れて温め、鶏肉を入れてさ!」
「へ、へぇ〜……聞いたことないですね。なんだか油が勿体なくて、ベタベタしそうですけど」
エマがちょっと引き気味に答えてる。嘘だろ、唐揚げを食えば絶対そんな感想は持たないのに……
「……なん……だと」
そんなまさか、この世界には唐揚げが、いや油で揚げる文化がない……だと……
「嘘だろ、ありえない、唐揚げが……俺の……」
「そんな、光の騎士団長が魔王軍だった時より驚かれても」
「じゃあ……食べたことないのか?」
「えぇ、そのカラアゲっていうのは」
「それは死に等しいよ」
「んな大袈裟なっ!?」
……そういや違う世界から来たって言ってないが、エマには打ち明けるか? いや、やめておこう。混乱するだろうし、ひと段落ついたらでいっか。
「それなら今度食べさせてくださいよ!」
「あぁ俺がお前を蘇らせてやる」
「それまで私死人扱いですか!?」
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