第12話 怒りと今後
「全くあいつ! とんでもない野郎じゃないか……くそっ!」
沸々と怒りが込み上げる。別に正義感を感じてるわけじゃない。ここに至るまで、あいつにしいていいようにやられたこと。
それに、セイバを騙している。俺が闇の力を使ってると知っただけで、あんなに怒り心頭だったのに、諸悪の根源みたいな奴が隣で飄々と立ってんのは癪に触る。
「……ゆ、許しません」
エマはプルプルと腕を震わせ、ボソッと言う。
「そうだな……ん?」
あれ? エマは別にセイバのことを知らないし、何に対して怒ってんだ?
「ひ、非道なことをしてる者に、わ、私の夢をあんな馬鹿にして笑うなんてっ! 絶対に、絶対に許しません!! このことを公表して地の底に堕ちてもらいましょう!! 大体、あんな不当な輩がいるからっ! 闇の力が悪い印象に傾くんですよ!!」
涙目をしながら、拳を固く握って怒り出す。
ああ、そういえばこの人、こんな人だった。
「お、落ち着けエマ! 俺らがこのことを公表したって、世間が信じてくれるどころか、俺らが闇の力を使ってると言われたら、誹謗中傷を受けんのは俺達だ。
それに、他にも何らかの対策をしてるだろう。あいつが俺達にペラペラ喋ったのは、知られても問題ないと判断してるからだ。ここに至るまでだってあいつは……!?」
そうだ、そもそも何で居場所がわかったんだ? 俺が遠回りして追跡が振り切れなかったとしてもだ……【エニウェイドア】で移動した先まではわからないはず……GPSみたいに俺の居場所わかってないと無理だ。
センはすぐさまポケットや服を調べ始める。
「どうかなさったんですか?」
「多分俺の居場所がわかる、何かが仕込まれてる!」
「……ちょっとお待ちください」
エマはセンに手をかざす。
「左肩に少ないですけど、闇のエネルギーを感じます……ちょっと失礼しますね」
エマはセンの服の襟を引っ張り、肩の肌を露出させる。見たことがない黒い文字が刻まれていた。
「やはり、【ワシグナル】でした。センさんの読み通り、離れていても相手の場所が把握できる魔法です。解除しときますね」
「いつの間にこんなを……あ」
教会の別室から出ようとした際に、左肩に手を置かれたのを思い出す。
「あのゲス野郎、用意周到だな……けっ、後で目にもの見せてやる」
許せん、絶対許せん。手のひらで踊らされたうえに、セイバを騙して飄々と生きてやがる。絶対ぶん殴ってやる。
「そうですね、生き地獄にあわせましょう」
「それはちょっと言いすぎ」
何はともあれ、このまま黙っているわけいかない。
「さて、これからの方針なんだが」
「カチコミに行きますか?」
「エマさん?暴走してない?」
エマは侮辱されたことが相当許せないみたいだ。ちょっと怖い。それに自分の怒りが冷めてきた。
「……俺はセイバを助けてやりたいと思ってる。当分は何もしないと言ってたが、その内殺るということだ。何より、真実を知ったら、セイバにとって最大の裏切りで仇だ。ぶちのめしてやりたい……エマはあいつ倒せそう?」
肝心なとこは人任せになってしまうが、腐っても光の騎士団長だ。セイバは剣の腕だけなら勝てると言っていたが、それでも実力はあるだろうし、策略家だ。加えて闇の力も使う。俺なんかじゃ太刀打ちできそうにない。
「……負けない自信はあります。ただ【、エニウェイドア】を使う以上、簡単に逃げられる可能性があるんです。」
確かにあれは、出してくぐれば、即座にどこでも移動できる優れものだ。不利になっても、少しの隙があれば逃げられるか……
「【エニウェイドア】に弱点みたいなのはあるか?」
「難しいですね…強いて言うなら、相手に張り付くよう猛攻を仕掛け続け、使わせない、もしくは出させてもくぐらせないようにすることですね。ただ、相手もそれなりの手練れでもあるでしょうし……」
「そうか…」
アゴに手をつき考える。出したらくぐらないといけない……それに逃げられたら居場所がわからなくなるか……
「でもやってみないとわかりません。闘うときは私も全力で……」
「……2つ、攻略法を思いついた。といってもエマじゃないとできないことだが」
「えっどんな策ですか?」
「いや、後で教える。まずはどうにかしてセイバに真実を伝えて、味方につけよう。セイバは副騎士団長だ。何もせずに騎士団長を襲えば、闘うことになる。まぁ下手したら騎士団全員と闘う羽目になるから、そこら辺は慎重に事を運ばないとな」
幸い、セイバは別行動してることが多い。おおかた、あの騎士団長がいかがわしいことを、セイバに勘付かれないように距離を置いてるとかだろう。それを利用してやる。
「でも流石に宿は変えないとなぁ。お隣だから、あいつも警戒してるだろうし。安かったのになぁ……」
500円で1泊できるもんなのに。他の宿だとその4倍はするから痛手だ。ちくしょう、益々ぶっ飛ばしたくなる。
「なら、私が借りてる部屋に泊まっても構いませんよ?」
「えっ、ホンマでっか?」
「断片的にしかわからなかったんですが、騎士団に捕らわれても、私のこと喋らなかったんでしょう?せめてもの恩返しです」
エマはにっこりと笑った。
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