第11話 光の騎士団長

 【エニウェイドア】中から出て来たのは、光の騎士団の団長。

「やぁ、さっきぶりだね〜」

「おい……なんでアンタが闇の魔法を……?」


光の騎士団の団長ともあろう者が、魔王が与えたと言われる闇の力を……?


エマは警戒し、大きな鎌を出す。

「おっと、怖い怖い。君がセン君の協力者か〜、闇のゲートを使えるとはなかなかの使い手みたいだね」

その男は笑顔で拍手する。


「それにおたくの部下、脅しても君のことを喋らなかった。良い教育をしてるようで、素晴らしいよ」

「……あなたは何者です?」

エマはいつになく真剣な表情で疑問を投げる。


「これはご紹介が遅れました。光の騎士団団長兼、魔王軍配下、ライアン・フェアラート。以後、お見知り置きを」


魔王軍……だと……!?


「混乱してるねぇ〜。質問したいことがあるのはこっちなんだけど」


「魔王軍の反勢力の長が、魔王軍の配下、そんな馬鹿げた話があるのか……?」


キナ臭い奴だと思ってたが、とんでもない事実だ。


「最初はただの騎士で、ただのスパイだったさ。でも情報を流し、時には有力な騎士を暗殺していく内に、僕が1番の古株になって団長になったんだよ。納得してくれたかな?」


「お、おかしいですよ! だったらとっくに光の騎士団は壊滅できるはずなのに、何故トップになってまで続けて?」


エマの言う通りだ。何故そんな猿芝居を続ける……? それに、だとしたらセイバはこんな奴の下に……!


「魔王軍と戦いたいと思った人は、どこに集まると思う? そう、この騎士団だ。有力な芽を早いうちから消せる。それに、光の騎士団が魔王軍と戦っている、ということが他の反勢力を増やす抑止力になる。簡単に言うと、誰かがやってるから自分はやらなくていいって思うわけ。だから利用価値があるんだ」


サディストってレベルじゃない、ド悪党だ。


「さて、今度はこっちの番。君は何をやってる? 活動内容によっては魔王軍への勧誘をやるつもりなんだ」


「……私は闇の力の正しい使い方を普及させることです! それ以外はありません!」


「ぷっ、あっはっはっ! そうなんだ! それなら光の騎士団としても、魔王軍の立場としても、邪魔立てすることはないから安心して続けていいさ」


嘘じゃないとわかったからか、高らかに笑ってやがる。ただ、気になるのはセイバだ。セイバは少なからず、こいつのことを信頼してた。なのに、心底恨んでる奴が側にいる。これを知ったら激怒するはず。協力関係ではないだろう。


だが、こいつは今まで騎士団の団員を殺してきた。それならセイバだって……


「…セイバも殺すつもりなのか?」

「当分は何もしないよ。彼女は騎士団のエースで、看板娘だ。町で殺したら事後処理が面倒くさいし、人気がガタ落ちになる。これでもちゃんとバランスとって運営してるんのさ。いやぁ〜掛け持ちは大変だよ」

ため息を吐いて言う。


「さて、君たちの目的を聞いて害はないとわかったし、去るとするよ。後、君たちが何もしなければ、何もしない。それじゃ〜」


【エニウェイドア】が現れ、光の騎士団長ライアンは闇の中へ消えていった。

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