第10話 深まる謎

えっ?膝から下がおさらば? 普通指の1本からとか始めない? しかも両脚でやるんですか!?


「治癒魔法はで止血くらいはできるから、死なせはしない。ただ、君は一生立ち上がることができないだけだ」


マジか!? マジなのか!? 両脚切断とか【リボーンス】でも戻るか!?


「5……4……3……」

 カウントされるなかで、エマとの思い出が浮かぶ。まだ会って3日間だが、今ではもうイジったり、冗談を言い合う仲だ。何より、この世界に来て俺を救ってくれた、強くしてくれた、優しくしてくれた。いつも気さくに笑うかけてくれる。


エマのことだけは絶対に……


「2……1……残念だ」

騎士団長は剣を振り下ろす。


うおぉぉさらば俺の両脚ぃぃぃぃ!!!?


剣は両脚の直前で留まっていた。

「あっはっはっ、ここまでやって喋んないなら無理だね、立派立派〜!」


……こんっのサディスト野郎っ!!


「こんなひどい非道なことはやんないさ。もう帰っていいし」

「何……?」

は? 帰えれる? 何も聞き出せてないのに……?


「君から聞き出すことはもうできそうにないから、大丈夫ってこと。あ、帰るときは裏口から帰ってほしいな〜。騎士団長がこうもあっさりと敵? を返すと、他の団員に示しがつかないからね」

拘束が外される。


……いや、だとしても普通返すか?


「あっ、紅茶飲む?」

「いや、いい……」

 切断の寸止めと唐突な申し出に頭が真っ白になる。俺は立ち上がり、裏口の方へと足を運ぶ。


「あっ、そうそう! セイバとは当分顔を合わせ無い方がいい。気まずいだろうし、あの子はうちのエースだ。あまり困らせないでくれるとありがたい」

俺の左肩にポンッと手を置いて言った。


 教会の裏口から外へ出る。そしてセンはしばらく歩きながら考える。


 ありえない。目的と協力者が不明な奴をみすみす返すのは……考えられるのは俺の後を追跡して、協力者をあぶり出すこと。


だとしたらこのままエマに会うのはまずい。だが、俺にはエマしか頼る人がいない。ギルド集会所で待ち合わせになっているが、俺が姿を現さなかったら、エマはきっと俺を探すだろう。そうなると居場所がわからなくなる。なんとか追跡をかわして、今エマの元に行かなくては……


 俺は路地裏に入り、【バスターク】を唱え、一気に走り抜ける。直線的に移動して目的地がバレるのもまずい。遠回りしながら、大通り、小道、時には建物の屋上を走ってギルド集会所へ向かった。


 〜〜〜〜〜

「……センさん、遅いなぁ。もしかして闇の力を見限られて、セイバさんに教わってるとか……」

「エマァァァァ!」

「はいっ!? って遅くな……どうしてそんな汗だくなんですか?」


「今から一緒に人目のないとこへ行くぞ!」

「私に何をする気ですか!?」

「違う、そこで【エニウェイドア】使って、一旦街から離れるんだ!」


「な、何があったんですか?」

「正体バレて、光の騎士団に連行、尋問、追跡されてんだ」

「えっ? えっ? えっ!?」

説明してる暇はない、今は一刻も早く逃げなければ……


 〜〜〜〜〜

 安定の森林地帯に来た2人。

「よし……ここまで来れば」

「整理できてないんで、詳細に教えてください!」


「あぁ、実は……」


 話そうとしたとき、2人の目の前に黒オーラの塊が揺らめきながら現れる。たった今俺達が使って飛び込んだものーー


【エニウェイドア】だった。

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