第9話 嘘の攻防戦

エセ・マルエツのことを嘘だと言われ、困惑し、思わず冷や汗が流れる。


おかしい、俺らのことを知っているなら、そもそもこんな質問はしない。それに教会前でセイバはエセ・マルエツとまだ勘違いしていたし、さっきこのおっさんと会った印象からにして、俺のことはノーマークだったはずだ。嘘とわかる根拠がわからねぇ……


「……あんた達は知ってるはずだ。タイラントウルフを最近倒した者の名前を。俺とさっき言った名だ。少なくともセイバは知ってる。調べればすぐわかるはずだ」


「それはそうなんだけど、君と何かをしてるのはその人じゃないってこと。でしょ〜?」

嘘のハッタリ……じゃあなさそうだ。


「さて、本当は誰と何をしてるんだい?」

不敵に笑みを浮かべ、ティースプーンで紅茶をかき混ぜる。


「……闇の力の正しい使い方を練習してる」

 エマのことは出さず、「何をしてる」部分にだけ本当のことを言ってみる。


「へ〜!そりゃまたどうして?」

本来なら、この答えは疑われるはずだ。光の騎士団は取り締まってるはずなんだ。闇の力の正しい使い方なんて、信じられるほうがおかしい。


「……魔王を討つためだ」

セイバみたいのことを言う。無論その気は毛頭なかったが、闇の力を正しく使って魔王を倒すっていうのは筋は通ってると思う。どうだ?


「はい、ダウト」

「あんた……嘘か本当かがわかるんだな」

心が読まれてるなら、このやり取り自体意味がない。そうなると魔法かなにかの判別だろう。


「正解〜。僕は生まれつきの光の力で、嘘がわかるんだよ〜。そして、色々答えを絞って、何故嘘かと見抜くのは見ててなかなか楽しかったよ〜」


くっそ!はなからバレてもいいと思ってて、マジで楽しんでやがったなぁこの野郎!


「さてさて〜、嘘をつくのが無意味とわかったうえで、質問タイムの再開だ。闇の力の正しい使い方なんて覚えてどうすんだい?」

「ただ強くなって、冒険者として頑張るだけだよ」

嘘が意味ないなら、本心で答えざるを得ない。まぁやってることはやましいことじゃない。言っても全然構わないが……


「ほうほう、いい心がけだ。ただ、闇の力じゃなかったらね。そして益々気になるなぁ〜君と一緒にやってる人、いや魔族?何が狙いなんだろうかねぇ〜。是非会ってお話しが聴きたいねぇ〜」


「……」

 ここからは黙秘権だ。エマの情報までは売れない。嘘がバレるなら言わなきゃいいだけだ。


「だんまりは良くないな〜。仕方ないっ!」

 その男は立ち上がってセンの横に立ち、剣を引き抜いて上に振りかぶる。


「人間相手にこんなことしたくないけど……5秒以内に喋ってもらおう。でなければ、君の両脚は膝から下がおさらばだ」

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