第2話 神聖なる隣人
「ぬぁ〜〜、にしてもほんっと、ミスった〜〜!!」
ギルド集会所の食事処でうなだれる。
「いやもう、引きずり過ぎですよ!」
エマは呆れ気味に言う。
「いやだってさ、今日結構ヤバかったじゃん?午前中は自分の魔法で自爆して、午後は暴走しかけるって……」
「午前中のはちょっと……アレですけど、でも暴走するのしょうがないです。今日初めて力を使ったんですし、そうならないために私がついているんですから。……それに私だって本気を出すと、気性が荒くなりますし」
今、午前中はアレって言ったな、内心結構馬鹿にされてたなこれ。にしても、優しいエマの気性が荒くなるか……どうなんだろう、すげー気になる。
「えっ何それ超見たい!ちょっと本気出してくんない?」
「もう!怒りますよ!」
「計 画 通 り」
「と・に・か・く!今日の反省を踏まえて明日はスパルタで行きますよ!!」
「調子に乗ってすいませんでした」
腹ごしらえを済ませ、俺達は解散する。ちょっと残念に思いつつ、悪ふざけが過ぎた。でも、気になるなぁ。
〜〜〜〜〜
「あっ」
宿屋の入り口で、エマを付け狙っていた、光の騎士団の女性と出会う。
「む?何か用か」
ヤベッ、思わず声に出てしまった。慌てて言葉を取り繕う。
「あ、いや〜、今日ギルド集会所にいたな〜と思って」
「あの時いたのか。確か君は……ササガミという人物で合っているか?」
「え!?」
俺はこの人に名を名乗っていない、どころかまともに喋ったことがない…ま、まさか、エマのことを嗅ぎ付け、俺の存在まで知られている!? もしかして、隣の部屋にいたのも偶然じゃなくて、いつでも捕まえられるように……
「え、えっと、何で俺の名を……ご存知何ですか?」
勇気を振り絞り、恐る恐る聞いてみる。
「冒険者として登録したその日に、タイラントウルフキングを倒した者達がいると。その名がササガミ・センとエセ・マルエツ、そうギルドでは話題になっていた。その冒険者との特徴が似ているから、君だと判断したんだ。驚かせてしまったなら、すまない」
申し訳なそうに答える。
どうやら気づかれてるわけじゃなさそうだ。エマは偽名でも使ってるのか?にしてもエセ・マルエツて……
「あはは、倒したのは俺じゃなくて、連れのもう1人何ですけどね。」
「何?タイラントウルフキングを1人で?是非立ち会ってみたいものだ。そのエセっていう人を紹介してはくれまいか?」
「あ、いや!そ、その人は極度の人見知りなんで、なかなかそいうのは許してくれなくて…」
「そうか……それは残念だ」
あ、危ねぇ。結局バラす原因になるとこだった。
「えっとあなたの名は?」
「私はセイバ・エンリヒトと申す。そなたの隣人でもあるな、よろしく頼む」
隣人……神聖そうな騎士団の人があの格安宿にってのが気になる。それに闇の力を取り締まれてるとなると、緊張する。
「…あなたは光の騎士団の方でしょ?そんな人がどうしてこんな格安宿に?」
「私達の旅は、国の税金、行く先々の住民の援助で成り立っている。余計な贅沢は無用だ」
「うわ〜、素晴らしい心がけですね〜」
うわ〜クッソ真面目やんこの人。バレたらまずそうかも……
「む?君も剣を使うのか?」
「あ、えぇ。といっても今日買って、初めて使ったので腕前はとてもとても……」
「それなら私と稽古をしないか?丁度体を動かそうと宿から出たのだ。剣なら多少、手ほどきができる」
まさかのお誘い。でも、武器の扱いについてはまだ何も知らないし、ゴブリン戦は知恵を使って上手くいっただけだしな。こういう技術面を磨ける良い機会かもしれない。上達してエマを驚かせてやろう。
「本当ですか! 是非お願いします!」
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