第2章 闇の修行と光の騎士団
第2章 プロローグ
エマとセンは草原地帯に来ていた。依頼は受けてなく、闇の力の付与と訓練に専念するためだった。
「それでは与えますね」
エマはセンの胸に手を当てる。そこから黒いオーラが出て、すぐ消える。
「はいっ終了です」
「早っ!?」
「それじゃ早速やってみましょう!まずはこのように、闇のエネルギーを、手から出すようにイメージしてください」
エマの手から黒いオーラが現れ、同じようにイメージしてみる。しかし、なかなか出てこない。
「くっ……!」
拳を固め、力を込める。そしてパッと開くと手から黒いオーラが現れた。
「うおっ!?本当にできた…」
「では、それを出したり消したりします」
消すようにイメージしたが消せず、マッチの火を消すみたいに手を振ると、何とか消すことができた。
「フフッ、そのように最初は体を動かしながらやると、イメージしやすいかもしれません。慣ればノーモーションでできますから」
「あぁ、俺には動かしながらやると、やりやすいみたいだ」
手を開くと黒いオーラが現れ、握ると消える。それを何度か繰り返す。段々コツが掴めてきた。
「OKです。それでは最初にやるのは、【黒弾】です!」
【黒弾】、ゴブリンを一撃で倒し、あのタイラントウルフキングをよろめきさせた、黒い球だ。
「闇のエネルギーを出して、1箇所にギュッと圧縮するイメージです。」
「ギュッと圧縮ね……なら!」
両手から黒いオーラを出し、おにぎりを握るように手を重ねる。てか完全におにぎり作ってるイメージだわ。
でも、丸くて圧縮って言ったらこれだな。そうするとテニスボールくらいの黒い球ができた。
「うんうん、順調です! では、それを自由に動かしてみましょう。」
手を前に突き出すと、黒い球も前に飛んで行く。なかなかのスピードだ。これを自由に軌道を操れるのだから、遮蔽物とかも避けて当てられる。使い勝手のいい攻撃だ。
今度は掌を返し、肘をクイッと曲げると、黒い球が戻ってくる。
あ、ちょっと待っーー
「ぐほっ!?」
「ちょ!?センさん!?」
俺の身体に直撃し、強烈な衝撃と痛みが走り、5mぐらいぶっ飛んだ。
「ば、馬鹿かよ……」
ガクッと意識を失った。
「センさーん!!?」
〜〜〜〜〜
ギルド集会所の食事処にいた。あの後、エマが治してくれ、何とか意識を取り戻した。闇の力様様だ。
「えと……すいません、私の監督不行きです」
何故か謝られる。エマもこんなことは想定していなかったのだろう。自由に軌道を操れる魔法で自爆って……スマブラのネスかよ……
「いや、もうほんと、ご迷惑お掛けしてすいませんでした」
恥ずかしすぎて死にたくなる。
「ま、まぁご飯でも食べて、気を取り直しましょ!午後はいよいよ実戦としますから!」
いつもフォローしてくれるエマだが、今回ばっかしは心が痛い。というか、この様で実戦って大丈夫なんですかね……
料理が運ばれてきた。メニューはあぶら鶏の甘酢照り焼き。このあぶら鶏っていうのは、鶏肉なのにジューシーで、値段もリーズナブルな600ゴルド。しばらくは、このあぶら鶏にお世話になるだろう。
料理を堪能していると、依頼受け付けのところに、人だかりができている。目をやると、白い甲冑を着た人が何人もいる。冒険者というよりは、兵士や騎士に近い印象だ。
「エマ、あれってなんだかわかる?」
話を振り、エマが白い甲冑の人達に視線を向ける。すると、顔を青ざめ、ワナワナと手を震わせながらフードを被る。
「あ、あれはですね、光の騎士団といわれ、魔王の軍勢と戦ったり……闇の力を持つ者を取り締まってる……人達です」
ほー、今更ながら聞いたけど、魔王とかやっぱいんだ……ん??
「えっ、今取り締まるとか言った? 闇の力を持つ者を!? な、なんで!?」
「そ、それは、魔王やその部下の魔族が闇の力を使っているから、疑いをかけられるんです。当然、私は何の関与もありません。ですけど…」
何てこった、そんないわくつきな力だとは。しかも取り締まられてるとは…
「以前、この力を使って、犯罪集団を懲らしめたことがあるんです。そしたら偶然、光の騎士団の方に見られ、金品を掻っ攫う魔族と勘違いされ、追われていて……」
俺の師は、指名手配されてました。
「しかしなんで、魔王の支配領域から最も遠いこの街に……あ、あの人に追われていたんです。肌が黒く焼けてるあの人」
光の騎士団とやらの中に、黒髪のポニーテールで褐色肌、目がキリッとしている女性がいる。
あ、お隣さんじゃないですか……
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