第1章 エピローグ

わっ!本当にタイラントウルフキングを討伐してくれたんですね!これで行者や運搬が安全に再開できます!ありがとうございました!それでは報酬をお受け取りください!」


  ギルド集会所に戻り、タイラントウルフキングの牙や爪、毛皮などの証拠品を渡して報酬を受け取る。


エマさんなら丸ごと持ち帰れるんじゃね?疑問投げかけたところ、あんな大きい物を持ってきたら騒ぎになり、目立ちたくないとのこと。そりゃそうか。


「報酬が20万ゴルドだったんで、半分の10万ゴルドです」

ゴルドが詰まった袋を渡そうとするエマ。


ちなみに、いろんな商品と値段を見てみたところ、日本円と大した差はないみたいだ。

それよりも……


「いや、流石に受け取れんよ、マジで俺は見てただけなんだから」

「でも同行したからには、受け取る権利はあります。それに無一文なら絶対必要です」

半ば強引に渡される。口ではああ言ったものの、生きてくためにはめっちゃ助かる。


「……すまない、ありがとう。ところでその、闇の力を教えてもらうことなんだけどさ」

「は、はい!」

心配そうにこちらを見つめてくる。


そんな顔をされたら、ますます断りにくい。まぁ答えはとっくに決まっていた。この子は、闇の力を語る時は変人顔負けだったが、依頼中は俺に不安がらせなよう笑いかけ、気配りしてくれていた。悪い奴には到底思えない。


「こんな俺でもちゃんと使えるのかな?」


1番の不安がこれ。一度モンスターにボコられて、もう自信が皆無。それにあんな化け物を倒せるようになれるのだろうか……


「はい、保証します! それに、センさんなら使いこなせると思いますよ!」


「 えっ?そりゃまたどうして?」

「……闇の力を使い過ぎると暴力的になると前に言いましたよね?元々攻撃的な人とかがこの力を使うと、暴走して事件を起こすこともあるので…だから今日1日同行して、そんな人じゃないと確信しました。」


「あはは、まぁ疑ったり、帰ろうとも言ってたけどね」


あれ?俺この世界に来て、開口1番に怒鳴り散らしたんだけど大丈夫かな?


「いいえ、力を疑うことは、正しく知るために重要ですし、戦いにおいて臆病なのは、生きるために必須です。命あってこその冒険ですから」

ことごとくフォローされ、ちょっと目頭が熱くなる。もう最初の印象と全然違う。えぇ子や。


「…それならどうか、俺に正しい闇の力を教えてください。よろしくお願いします。」

深く頭を下げて言う。


今日からこの子の弟子だ。師匠は敬わらないと。


 エマは少し驚くも、満面の笑みで答える。

「はいっ! よろしくです!」


 〜〜〜〜〜

 俺は宿屋に来ていた。部屋は2畳程で布団しかなく、灯りもないが一泊500ゴルドという格安宿。貰った10万ゴルドがあるが、それでも生活費を切り詰めてくために、当分の間はここにお世話になるだろう。廊下も人1人がやっと通れるくらいの狭さ。格安たる所以だろう。


 自分の部屋へと向かうと、他の部屋から出て来た人にぶつかってしまう。

「おっとと、すいません、大丈夫ですか?」

「いえ、こちらこそすまない、不注意であった」

 黒いポニーテールに、褐色な肌。目はキリッとし、気品がある。その女性はぺこりと頭を下げ、その場を去っていく。腰には剣を携えている。


あの人も冒険者?っていうよりは騎士みたいな人だ。ま、こんな格安宿に泊まってるんだから、何か事情があるんだろう。


 さっき出てきた女性の部屋から、一つ隣の鍵を開け、今後のことを思い馳せながら、眠りについた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る