第八話 寝具たちの能力を使うようです
俺が唯一お世話になった不動産屋であり、ここらじゃ有名なおじさんである。
なぜ有名か、金にがめつすぎるからである。
「やぁおじさん、久しぶり!」
「あぁ? あーお前か」
「お前かとは失礼だなぁ、こんなに美少女を連れてきたのに」
「俺が興味があるのは金持った人間だけだ」
矢作ジュウヤ、見た目は百六十センチほどの背丈に少し大柄な体系、そして酒を今まで大量に飲んできたであろうビール腹に無精髭が目立つオールバックのおじさん、今年で五十八らしい。
そしてこの飲んだくれ爺のもう一つの顔がある。
「この不動産兼金貸し屋の俺になんか用か?」
そう、不動産屋兼悪徳の金貸し屋でもある。
普段は絶対に利用しないし、とんでもない暴利に金を貸してもらおうという人はほとんどいないのだ
が、今回ばかりバイトだけではどうにもならないのでこの悪徳金貸しに頼らざるをえなかった、だが……ただ金を貸してもらうために来たわけではない。
俺はこそっとおじさんに聞こえないようにつぶやく。
「今回の目標……金をむしり取る」
「ど、どうやってですか?」
ダンゴさんがコソコソ俺に話しかけてくる。
「ああ、弱みを握るんだ」
「そんなことできるんですか?」
「まかせとけ」
俺は再び酒が入って完全に出来上がったおじさんに話しかけ会話を続ける。
「おじさん、何か隠していることない?」
「俺か? あるわけねえだろ」
「本当に? 例えば犯罪とか」
「犯罪はギリギリ避けてる、問題ない」
「暴利金貸しが何言ってんだ」
「別に金貸し屋ってわけじゃねぇ、個人的にお貸ししているだけだ」
「そう……じゃあ浮気とかは?」
「してねぇ、俺は妻一筋だからな」
「へー、じゃあ奥さんの名前は?」
「あ? ヒトエだ、なんでお前にこんなこと教えなきゃいけないんだよ」
普通に聞いていたら弱みをつかもうとするなんて無理だろう、だか今回、最強の武器がある。
「なんだお前ら! 冷やかしなら帰ってくれ」
「どうだマクラ、なんかわかったか?」
俺はマクラにコソコソ話しかけおじさんに聞こえないように話しかける。
「浮気の話題が出た時にメグミって名前が出てきたけど」
「ふーん」
俺はおじさんに再び顔を向け浮気に関して再び聞くことにした。
「おじさーん、メグミさんって誰?」
「なっ、それをどこで」
「浮気相手だよねぇ、これが奥さんに知れたらどうなるか」
「っちょっと待ってくれ、話をしよう」
「話より……口止め料じゃない?」
「……いくらだ」
「百万!」
「……!?わ、わかった、だがこれっきりだぞ」
「了解」
こんな簡単に人からお金を取れるこの能力、使いようによっては億万長者になれるかもしれないが俺にはもうできないような気がした、このままこれ以上続けたら俺が俺でないような気がしたし、罪悪感でつぶれそうだった。
「父さんはこんなこと簡単にできるんだろうなぁ」
俺はおじさんの不動産屋を出た後、俺の心を察してくれたのか雨が降ってきた。
「自分から言ってなんだけど、こんな方法で手に入れた金ってうれしくないもんだよな」
「やっちゃったもんは仕方ないよー」
「終わってしまったことを後悔しても仕方がない、次に生かすしかないの」
マクラとフオリはどんよりしている俺を励ますかのように語りかける。
「珍しいな、俺を励ましてくれるなんて」
「なーに言っとる、みんなはお前の寝具じゃ、みんな大好きじゃ」
「お、おう」
俺は照れながらフオリを少し見つめると目があった。
まさかこんな照れるとは思ってなかったのでフオリも一緒に照れだす。
「さ、さあ明日はバイトの面接じゃ!」
「よし、絶対に合格するぞ!」
僕のアパートの美少女な寝具たちっ 空真 冬人 @Fuyuhito777
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