第六話 闇鍋パーティをするようです。

 闇鍋とは


 みんなが自分にはわからない意味不明で突飛な食材を持ち寄り、暗い中調理して食べる鍋のこと。


 だが今回持ってきているのはコウシロウなのでゲームマスターになりコウシロウはみんながゲテモノを食べてる中安全場所にいることができる。 



「まぁ実際コウシロウはずいぶん有利になるわけだが」


「大丈夫、俺も参加するぜ」


「でもあんたは入ってる具わかってるんでしょ?」


 闇鍋の説明を聞いて東条も反論する。


「そこはなあなあでお願いします」


「リスクがでかすぎないか?」


「問題ない」


 俺と東条の反論も軽くスルーされ、寝具達も巻き込んだ地獄の闇鍋戦争が幕を開けようとしていた。


「ちなみにあたりの高級和牛を当てた人は一万円プレゼント!」


「よろしい、ならば闇鍋だ」


 どっかで聞いたセリフを言いながら汚い金が絡んだ闇鍋戦争の火蓋が切られた。


「じゃあまず一つ目だ、言っておくけど俺も何を入れているかわからないぜ」


 そういいながらコウシロウは全く見えない闇の中ビニール袋から何かを取り出す。


「じゃあこれだ」


 何かはわからない物体を鍋の中に投入する。


「なんだこれ……」


「入れている俺も全然わかんない」


 数秒煮た後コウシロウが俺に食えよと示唆してくる。


「じゃあ食うぞ」


 箸で謎の物体をつかんだ瞬間食べ物とは思えないような硬さの物体をつかんだ。


 その謎の物体を口に運んだ瞬間金属のような噛みごたえと中から出てくる謎の液体。


「どびやあああああああああ」


 俺はまずさに耐えかね、口から吐き出した。


「なんだこれ本当に! 食べ物かこれ?」


 俺はそそくさと電気をつけ鍋に入ってたものを確認する。


「なんだこれ」


「あ、それ瞬間接着剤」


「ふざけんなよお前!」


俺は立ち上がり地団駄を踏みながらコウシロウに向かって怒りをぶつける。


「まぁまぁ」


 コウシロウは殴りたくなるような笑顔で俺にしゃべりかける。


「まさかお前他にも食べ物以外のものが……」


「いやね、最初は食べ物だけにしようと思ったんだけどね」


「あぁ、それで終わりにしとけば……」


「普通に買い物した後、雑貨とかちゃんと分けようと思ったんだけど忘れちゃった」


 てへぺろといいながら舌をだす。


「私が殺す」


 今度は東条がぶち切れだしコウシロウを殴ろうとする。


 正直俺の腹も煮えくり返っていたがこのままでは本当に殺されそうなので東条を止める。


「今から分ければいいから! それでいいだろ! なっ! コウシロウ」


「そ、そ、そうだな仕方ない仕方ない」


「まぁ、ならいいけど」


 そういい東条は怒りを収め座った。



「第二回せーん!」


 反省した態度から一変、コウシロウはまた調子を戻しはじめ闇鍋を続けようとしていた。


「次はーマクラちゃんだ!」


「わーい! 何が出るかなー」

 暗い中かすかに見えるコウシロウの鼻を伸ばした顔が少し不安だったが、様子を見ることにした。


 コウシロウはビニールから何かを取り出し鍋に入れる。


 ポチョンと言う音を立ててぐつぐつ煮られる何かが溶ける音を出しながら早く食べてといわんばかりの湯気を出す。


「そろそろいいんじゃないかなー熱いから気を付けてね」


「うん!」


 元気な返事をし、マクラは鍋からスプーンで取り出しパクッと一口で食べる。


「ふぁああ……熱い! なにこれぇ」


 俺は慌てて再び電気を点ける。


「またお前変なの入れただろ!」


 そういいながら俺はマクラの方向を見ると口から白い何かネバネバトロトロしたようなものが口から垂れていた。


「いや、お前マジか! それダメな奴だから! 法律とかそっち系の!」


 俺が叫んでいる正面、ジト目になっている東条はケータイを取り出し通報をしようとしていた。

「あーこれは警察系だわ……」


「いや、まて!それ俺も一緒に捕まるかもしれないからやめて!」


 今現在三人の身元不明の美少女をかくまっていることが警察に知れたら、コウシロウは逮捕されるとして俺までお縄につくことになる。


 それだけは絶対に阻止しなければいけない。


「てかこれなにー!ツクモお兄ちゃん!」


 口から出したネバネバトロトロしたようなものを見ながらマクラは聞く。


「えーっとこれはだなー……その」


「なあ、ツクモ……何か勘違いしてないか?」


「え? 勘違い?」


「これ、ただの茹ですぎて溶けた餅だぞ」


「も……ち?」


「ああ、煎餅が好きなマクラちゃんなら喜ぶかと思って買っておいたんだ、まさか二人とも何か別のと……」


「あー! わかった! 私が悪かったからそれ以上はやめてー!」


 東条は顔を真っ赤にし耳を塞ぎながら倒れこむ。


「第三回戦……やるよな?」


「はい、やりましょうか」


 俺は従わざるを得なかった。



「第三回戦はー! 東条!」


「ついに私の出番が来たようね……」


「残ってる物は四つ!高級和牛にゲテモノ三つだ!」


「それ、牛肉以外は全部はずれってことよね」


「それじゃあ張り切っていきましょう」


 コウシロウは再び電気を暗くし、ガサゴソとビニール袋から何かを取り出して鍋に入れる。


「あ、あれ? なんで」


「どうしたんだコウシロウ」


「いや、何でもない」


 コウシロウの様子が何かおかしかったので聞いてみたがはっきりしない。


 何かが起こったのだろうか。


「じゃあ……入れるぞ」


「ええ、どんとこいよ!」


 何かを入れた後に十分に火を通しその何かを東条は口に入れる。


「な、何だった?」


 俺は不安になりながら東条に聞くが、返ってきた答えは意外なものだった。


「うん! おいしい!」


「え?」


「これ!正解じゃない!?」


 俺は慌てて電気をつけて鍋の方を見る。


 あれは紛れもなく牛肉。


「おお! コウシロウのことだから最後まで牛肉を選ばないと思ってたけど、ちゃんとしてたんだな」


「これで一万円は私のものよ!」


 東条はニシシと少し悪い笑顔をしてたが戦いに勝ったのだ、問題はあるまい。


 だけど問題があるのはコウシロウの方、さっきから様子がおかしい。


「おかしい……」


「なにがよ」


「袋を見たら、これしかなかったんだ」


「はぁ……」


 俺と東条は困惑しながらお互い目を合わせる。


「あのー……」


 そんなことをしてると横から申し訳なさそうにダンゴさんがしゃべりかけてくる。


「どうしたの、ダンゴさん」


「実は……残りの食材を隠したのは私なんです……」


 そういうとダンゴさんはスカートの中からコウシロウがいれようとしてたであろう食材をテーブルに置いた。


 いや、正確には食材ではないのだが。


「ダ、ダンゴさん!どこからそんなもの!」


 東条は顔を赤くしダンゴさんに言う。


「昆虫用ゼリーにタバスコに……ケシゴム、なんて奴だ」


 本当にはずれしかない中身に俺達は呆れるしかなかった。


「じゃあ、和牛が当たったことだし、残りは全部コウシロウが食べるのよね?」


「え?」


「当り前じゃない、一番有利な役が負けたんだから」


 東条のその言葉と同時に全員がコウシロウを拘束する。


「え、ちょま」


 そんな言葉も虚しく三つの物を口に入れられたのは数秒後のことだった。


「ぎゃあああああああああああああ」

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