第五話 僕たちはスーパーで親友に遭遇したようです。

「こうして、東条は俺のアパートを借りて住むことになったんだ」


「へぇ、そんなことが……」


 俺はダンゴさんに話し終えるとスーパーについた。


 普段コンビニに行くくせに普通のスーパーは行かず激安スーパーに行くので、謎の基準で普通のスーパーはお高いイメージになっていた。


「コンビニの方が普通に高いのにな、なぜかスーパって入りずらいんだよね」


「コンビニと言う場所にもいつか行ってみたいのう」


 フオリは先頭に立ってスーパーの自動ドアの前に行く


 ウィーン


「おお! 見てみろツクモ! ドアが勝手に開いたぞ!」


 フオリは興奮気味に言いながらツクモのいる方向を向く。


「まぁ、自動ドアだからな」


「お前は全然珍しくもないだろうがわしは初めての体験じゃぞ」


「そういえば全然知識ないよな」


「まぁ、お前が家でやってたことは昔から見ているからわかるんじゃがそれ以外は全然しらん」


「うわー! すごいね! お菓子もいっぱいあるかなぁ」


 マクラはお菓子を探し出し、走り出した。


「おーい、あんまり走るなよー」


 そんな言葉はお構いなしにマクラはお菓子を求め走り続ける。


「痛てっ!」


 ドンッと言う音を立てマクラは思いっきり人に当たり、男の人だったので反発して飛ばされ尻もちをついた。


「おお、大丈夫か嬢ちゃん」


 ぶつかってしまった男性は怒るかと思いきやぶつかってきたマクラを心配そうに手を差し伸べた。


「すいません、大丈夫ですか?」


 俺は謝罪をするためにその男性の元に駆け寄った。


「ああ、ハイ大丈夫ですよ……って、え?」


 男性が驚いた顔でこちらを見てくる、よく見るとよく知った顔が目の前にあった。


「おーツクモ! お前も買い物か」


「よう、コウシロウ」


 良く知った顔、親友の名倉幸四郎である。


「こんなところでどうしたんだ? 珍しく普通のスーパーいるけど」


「おう、こいつらのために高い飯を食わせてやろうとな」


 そう俺が言うとコウシロウは目を輝かせて俺に聞いてきた。


「この三人の美少女たちはいったい?」


「ああ、俺の家に枕とか布団とかが押入れにあっただろ?」


「ああ、あったなボロイやつ」


「それだ」


「は?」


「いやだから、その寝具達に魂が宿ったらしい」


 俺がそう言った瞬間コウシロウは瞳に涙を浮かべ憐みの目をこちらに向けながら俺の肩にそっと手を置いた。


「ごめんなぁ、ツクモ……お前が悩んでるって気づいてやれなくて……こんなにわけのわからない事言いはじめるまで放置してしまった俺にも原因があるから、一緒に病院行こうか」


「いや! 何言ってんだよ急に」


「ああ……言葉すらお前に届かなくなってしまったか」


「なんか勘違いしてないか? コウシロウ」


「勘違い?」


「いや、逆に考えろよ……俺がこんな美女三人連れて来られると思うか?」


「確かに……あの冴えないツクモが美女三人なんて不可能に近いな」


「そうなんだよ! そしたらこの子たちが寝具だって納得してくれるよね!」


「確かに」


 コウシロウはまずマクラを見る。


「ニカッ!」


 マクラの得意技、歪みのない笑顔。


 その笑顔を見たものを魅了してしまうほどかわいい物である。


「かぁわいいなぁ」


 コウシロウはデレデレになるが、直ぐに冷静さを取り戻し一番のお姉さんダンゴさんを見る。


「本当に君たちは寝具なの……か?」


「はい、今直ぐに理解してほしいとは言いませんが……今ツクモさんが言っていたことは事実です」


「ああ、マジか……」


 混乱している様子で頭を抱えていたが一瞬にして元気になり俺の方を向いた。


「わかった! 事実なら仕方ない! うらやましいぜツクモ!」


「やっぱりお前はわかってるな! さすが親友! 美少女三人と生活、最高だぜ」


「男はやはりわからんの」


 男二人が盛り上がってる中フオリがつぶやいた。


「変なところで意気投合しますからね~」


 ダンゴさんも同調し笑いながら言う。


「じゃあ、そろそろ飯を選ぼうか、俺も買い物の途中だし」


 下に置いてあった買い物かごをコウシロウは持ちレジへ向かおうとする。


「コウシロウ! 今からみんなでパーティーするんだけど、お前も来るよな」


「え? いいのか?」


「ああ、東条も来るぜ」


「おう! 行かしてもらうぜ、じゃあ俺も買い物手伝うよ」


「ありがたい、じゃあ何を作るか決めなきゃな」


「お兄ちゃん料理できるの?」


 マクラは若干不安に感じながら聞いてくる。


「こんなのでも料理は得意なんだぜ、特に節約料理」


「まぁ、今は節約料理は考える必要はないけどな」


「今日は一万円を東条に貰ったから贅沢できる」


「俺も協力するぜ」


 そういいながらコウシロウは財布から一万円を取り出しマクラに渡した。


「わーい! お金だぁ、お菓子いっぱい買えるね!」


「いいのか? コウシロウ」


「俺も参加させてもらうからな、それくらい出させてくれよな」


「ありがてぇ」


「まぁ、マクラちゃんやみんなへのおこずかいだと思ってくれればいいよ」


「じゃあみんな! コウシロウに感謝して好きなもの買ってこい!」


 その言葉を聞くと三人はニカーッと笑顔になり各々が好きなものを探しにいった。


「やった! お菓子いっぱい買うぞー!」


「わしは味噌と塩、そして飯じゃ!」


「おいしいお団子があるといいんだけど」


 三人がいろいろスーパーを冒険しにいき俺とコウシロウが二人になるとコソコソ話かけてきた。


「おい、ダンゴさんだっけ?やばくね?」


「ああ、エロいな」


「しかもお団子が好きなんだってよ、その胸にある二つのお団子を俺は食べたいっちゅーの」


「そのネタはもう最初にやったぞ」


「え?」


「しかもマクラの前でそれ想像しただけで心読んでくるから最新の注意をするように」


「マジか! かわいい女子高生もいるし最高すぎだろ」


「いいだろ、お前も物を大切にすればこうなるかもな」


「今度お前の家行っていいか?」


「俺達に飯おごってくれたらいいよ」


「おごるおごる! さすが心の友」


 そんなこと言いあいながら俺は卵のコーナーへ行く。


「特売じゃない卵なんて久しぶりだなぁ」


「なんか悲しくなってくるな」


「お前も貧乏新人会社員だろうが」


 コウシロウは俺と違って真面目なので普通に大学を卒業している。


「公務員って収入安定してるんだぜ」


「うらやましいねぇ」


「アパート持ってるお前の方がうらやましいわ」


「そうかぁ?」


 そういい俺はいつもより高めな卵をかごに入れる。


「ツクモ、何作るんだ?」


「ああ、最初は焼肉って考えたんだけどやっぱりこれかなって」


 俺は卵の他に横にあった豆腐も持つ。


「スキヤキだよ」


「うん! それがいい!」


 俺は一通りの食材を買った後、お菓子コーナーに行った。


「なんか買うのか?」


「ああ、東条にマショマロ買って来いって頼まれたからな」


「あいつマショマロなんて好きなのか」


「その代わり一万くれたからな、安い買い物さ」


 そしてマショマロを買った後横を見るとマクラがいた


「おうマクラ、何か見つかったか?」


「うん! ツクモお兄ちゃん! これ」


 そういいながらマクラが渡してきたものは高級煎餅だった


「お前煎餅好きなのか」


「お兄ちゃんの部屋にあったのがおいしかったから高いの持ってきたー」


「お前、値段とかわかるんだ」


「わかんなかったからダンゴお姉ちゃんに選んでもらったんだ」


 一緒に行動していたであろうダンゴさんが後から来る、その手にはおはぎを持っていた。


「お団子も良かったんですけど、おはぎもおいしそうで……」


 頬を染めながら恥ずかしそうに言う。


「わしも選んだぞ」


 いつの間にいたフオリが気づかない間に五キロの高めのお米を置いていた買い物かごに入れられていた。


「煎餅とおはぎと米か……おばあちゃんかよってくらい渋いな」


「スキヤキのお前も変わんないだろ」


「あっ」


 俺も人のこと言えないかもな。


 そのあと高級お肉を選びに行った。



「スキヤキにお米に煎餅におはぎねぇ……」


 俺達は買い物をした後そそくさと帰ってきた。


 テーブルにはぐつぐつと煮たったスキヤキを前に東条は渋すぎる俺達の好みに呆れている。


「それで、なんであんたもいるの」


 本当はいないはずだったが俺が招待したコウシロウが若干申し訳なさそうにしながら答える。


「いやー邪魔して悪かったね、せっかくツクモと……」


 バキッと音を立て東条の蹴りがコウシロウの肩を直撃する。


「それ以上しゃべると次は顔面行くから」


 にこっとかわいい笑顔をするが謎の黒いオーラを放つ東条に俺達全員は恐怖した。


「ニコッじゃねーよ! 怖すぎるわ!」


 肩にダメージを負ったコウシロウが少しばかりの抵抗を見せる。


「アァ?」


「すいませんでした」


 瞬殺である。



「ぷはー! うまかったのー」


 フオリはお腹をさすりながら満足そうな顔をしている。


「うーん! 食後の煎餅もさいこー」


 マクラはスキヤキより煎餅を食べているときの方が幸せそうだ。


「ダンゴさんが買ったおはぎうまいな」


「ありがとうございます! おいしいですね」


「ちょーっと、コウシロウ! もっと味わいなさいよー」


 コウシロウとダンゴ、そして東条も仲がよさそうにしゃべりこんでいる。


「ふー、平和だなぁ」


 俺はあったかく渋いお茶をお萩のおともにしながらすする。


「その平和ももう終わりだ」


 コウシロウはぼそりと暗いオーラを出しながら言う。


 その後立ち上がり電気を暗くしコウシロウが買ったビニール袋を取り出した。


「いったい何をする気なんだ……」


 俺は恐る恐る暗くなった部屋、そしてみんなが不安になりながら俺を見ている状況で聞く。


「それはあああああ、闇鍋だああああ」


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