第四話 僕は女子高生との出会いを語るようです。

 神崎ツクモ二十歳、季節は冬……まだアパート管理したてで住民も親友一人しかいない状況に若干焦りを感じつつ、外を散歩していた時の話だ。


「ふいー寒いなぁ」


 俺は冬で寒いためずっと家に厚着をして布団をかぶりこもっていたので気分転換と軽い買い物をしにコンビニついでの散歩をしている途中、ある建物の前で生気が抜けた、今にも泣きそうな顔で佇んでいる少女に目が言った。


 その建物は有名な漫画雑誌の編集部だった。


 よく見るとその少女右手に大きめの封筒を持っていた。


 そんな様子を観察しているとうろうろしだし、小さな石の階段でずっこけてしまい、封筒の中に入っていた紙をばらまいてしまった。


 俺は急いでその少女の元に駆け寄り一緒に紙を拾う、紙を見てみると絵が描いてあった。


「すいません」


 封筒から紙を落とした金髪のツインテールの少女が俺に謝ってきた、制服姿ではあるがまだあどけなさが残り見た感じ中学生か高校生といった感じだった。


「全然大丈夫、困った時はお互い様だろ?」


 俺はそういい絵が描いてある紙に目を向けた。


「漫画書いてるの?」


 目の前に漫画があるので当然のことだったが拾ってる途中の世間話程度で話した。


「はい! 漫画が大好きで書いてみたんですけど……才能ないかもです」


 少し泣きそうになりながら少女は一緒に漫画が書かれた紙を拾う、編集部によっぽど酷評されたんだろう。


 俺は少し焦りながら拾った漫画をページ整理をするふりをして少し読んでみた。


「これ……面白いよ」


 数ページしか読んでないからまだ確定はできないがはっきり言って俺好みの内容だった。


「これ、全部読ましてよ!」


 俺はいつの間にかその名前も知らぬ金髪少女に頼み込んでいた。


 普通だったら事案物だろう。


「え? 読んでくれるんですか?」


もしかしたらキモがられて逃げられることも予想していたので意外な反応だった。


「もちろん! 俺、漫画好きだから楽しみだなぁ」


「じゃあ、ここで読むのもなんだしどこか行きましょうか」


「そうだなぁ、じゃあ俺の家来る?」


「え?」


ミスった……特に下心があって言ったわけではなかったがこれでは未成年を家に連れ込む奴だ。


「まぁ、家が近いなら構いませんよー」


 流石未成年、大人の怖さをわかってないようだ、いつか騙されそうで怖いなぁ。


「じゃあ行くか! すぐそこにあるからね」


「はい!」


 その少女は目一杯の笑顔で答えた。



「ここが、家ですか……」


 少女は自分が思った以上に貧相なアパートを見て軽くどんよりしていた。


「まぁ貧乏アパートだけどいい所だから!」


「そ、そうですか……」


 俺は階段を上る時にあることを思い出した。


「そういえば君の名前はなんていうんだい?」


「私は東条彩夏です」


「そうか東条さん、俺は神崎九十九、よろしく!」


 家のドアを開ける。幸い部屋は散らかってはいなく、誰に見せても恥ずかしくないレベルだった。


「そこら辺に座っててーお茶出すから」


「ありがとうございます」


 そういいながらテーブルの前の座布団に漫画を出し、自分で確認しだした。


 俺はお茶と軽いお菓子……といってもコンビニに結局行かなかったので煎餅くらいしかないのだが、なんせ若い少女が煎餅を食べるとは思わないので、あまり多く入れずに三枚ほどいれて出した。


「あ、ありがとうございます……あとこれ」


 東条は漫画を俺に渡してきた。


「あ、サンキュー」


 俺は読んでる途中少し東条の方向を見る。


 普通に煎餅食べるんかい。


「面白かったよ」


 数分後俺は読み終わった漫画をトントンと揃え東条に渡した。


「そうでしょうか?」


「うん、特にこことかよかったね…………」


 俺は一通り感想を言い終えた後お茶を一口読んだ。


「ありがとうございました! 家に帰って今言ってたところを修正してみたいと思います!」


「うん! がんばってな」


 若干東条と会えなくなることに悲しみを感じながら成功してほしいと願い見送る。


「また来てもいいですか?」


 マジ?


「あ、ああ! 東条さんが良ければ」


「じゃあまた、お邪魔しますね」


 早く漫画を修正したかったのか急ぎ足で帰って行った。


「いつ来ることやら」



 次の週末

「そういえばお仕事は何してるんですか?」



東条はまた来ていた。


「ああ、ここのマンションの管理をしてるんだ」


「へぇ、そうなんですか! すごいです!」


「マジで!」


 とまぁこんな感じで漫画を見るだけではなくこうやって世間話するだけの日もしばしばある。


 そして東条はその後も週末になると昼頃から夕方までツクモの家でごろごろしたり話したり漫画をツクモに見せたりするようになった。


「ツクモー、今日はこんな作品を考えてみたわ!」


 数か月後、このころにもなるとお互いため口で話せるくらい仲良くはなった。


「おーそうか」


 俺は毎週家に遊びに来てくれることはすごくうれしいのだが少し疑問に思ったので聞いてみる。


「そういえば、なんで毎週俺の家に来るんだ?」


 最初は漫画を見てもらうというのが目的で来ることが目的だったが最近は見ないことも多い。


「そ、それは……あれよ! この家が快適だなぁって思ってね」


「おお! やっぱり! 東条はアパート見る目あるね!」


「そうそう! だから来てるの!」


「まぁ、でも住人ほとんどいないおかげで収入が全然ないからね……そろそろ終わりかも」


「え? それじゃあもうツクモと会えないの?」


 驚きを隠せないまま声を大きくして聞いてきた。


「まあ、そうなるかな」


「そんな! ツクモと会えなくなるのは嫌……じゃなくてこんなにいいアパートがなくなるのは嫌!」


 そういいながら思い切り立ち上がる。


 すると何かいい案が思い浮かんだかのような反応をし、自信満々に俺に言った。


「そうだ! 私がこのアパートに住めばいいのよ!」


「へ?」


「ここからなら編集部が近いから行くのが楽になるし、アパートもなくならない、一石二鳥ね!」


「……」



 マジ?



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