第三話 僕の人生目標が決まったようです。
「んで、どう説明してくれるのかしら?」
東条は俺と寝具達三人を正座で座らせて聞いてくる。
「いや、俺の布団ととかに魂が宿って……ゴニョゴニョ」
「ハァ? 何言ってるのアンタ」
若干キレ気味になりながら部屋の畳を金髪のツインテールを揺らしながら叩く。
「本当です! 私は布団に九十九神として憑依しているんです」
ダンゴさんの普通なら全く理解できない言いようだがダンゴさんの真剣な言い方に東条はたじろぐ。
「まぁ……そこまで言うなら……認めざるを得ないといいますか……」
「あ! あと、この服東条さんのでしたよね……今脱ぎますから」
そういいダンゴさんは服を脱ぎだした。
当然下着は着てないので裸状態になりかけた。
「ブハッ」
俺は女性に裸に対する体制が全くなかったので鼻血が吹き出る。
「ちょ、大丈夫ですよ! 服がないなら仕方ないです、服代は後でツクモに請求しますから」
「何当然のように俺に服代請求してんの!」
出てきた鼻血を拭きながら当然のように服代を請求する東条に文句を言う。
「当り前じゃない! 高いんだから」
「確かに……仕方ないか」
「冗談よ、貸してあげるわよ」
「なんだ、ツンデレだなあ」
「ぶっ飛ばすわよ、ツクモ」
こんなやり取りをしていると寝具達さんにんは真顔で見てくる。
「な、なんだ三人とも黙りこくって」
「いやー二人を見ていると夫婦に見えてな」
フオリは相変わらずの真顔で言う。
「違うわっ!」
俺と東条が同時に言い、息ぴったりじゃなとフオリに言われるまでそう時間はいらなかった。
そしてその日は解散するということで、三人分の服と下着は俺の資金的な余裕ができるまで貸してもらうということで手を打った。
「その代わり、私のマンガの題材になりなさい」
「漫画……じゃと?」
フオリは漫画をよく知らないようで説明しろという顔で俺の方を向いた。
「ああ漫画っていうのはそこでマクラが読んでいる本で……あれ?」
マクラがいるであろう方向を向くとすでにマクラはいなく東条の前まで走っていた。
「本当に! マクラ漫画に出られるの? やったぁ!」
「え、ええ! でられるわ! どうみんな」
「まあ、服を貸してくれているわけだしそれぐらいなぁ」
「あぁツクモは関係ないから」
「俺だけっ!」
そう俺が言うと東条は席を立ち自分の部屋に戻ろうとした。
「じゃあ、後で服持ってくるから」
「もう帰るのか? 夏休みなんだし暇だろ」
「あんたみたいにゴロゴロしてるわけじゃないの、宿題に漫画……いろいろよ」
今現在夏、時間は午後四時。
学生は夏休みに入っている時期、夏休みの宿題や部活、社会人はそんなの関係なく仕事。
ツクモは家でゴロゴロしているので、他人の用事を全く把握できないのだ。
「ああ、そうなのか……何か困ったことがあれば何でも言ってくれよな」
「困るのはあんたでしょ、三人も住んでるのにお金とかどうすんのよ」
確かに今一番大きな課題である資金難、それをどうするかが一番困ったことであった。
「確かに、東条どうすれば良い? って帰ったんかい!」
「ええ、東条さんなら先ほど帰りましたよー良い方でしたね」
ダンゴさんが笑顔になりながら手を合わせ喜んでいる。
「とはいえ三人分の食費やその他もろもろ……いったいどうすればいいんだ」
俺は頭を抱え地に付す。
「単純な話じゃ、住民を増やせばいいじゃろ」
「確かに……」
単純明快な答えだったが、これ以上生活を良くしようと考えたこともなかったツクモはそれですら考え着くことができなくなっていた。
「そうだよ! 住民を増やして家賃収入を増やして三人分を稼げばいいじゃないか!」
「いいですね! 私たちも手伝いさせていただきます!」
「わしもじゃ」
「ツクモお兄ちゃんのためにマクラ頑張るよ!」
三人は笑顔になり、今まで欲が一切なく目標もなかった俺が何かを成し遂げようとしたことで気分も大きくなった。
「それでいつかマンションをいい感じに建てることができれば、父さんの試練もクリアできるしお前達もいいところに住めるじゃないか!」
一人興奮気味にテンションが上がりながら言ってみるが、マンションを建てるといった瞬間に三人の笑顔が少し曇った。
「どうした、なんかあるのか?」
俺は気になって聞いたが曇った笑顔が消えずダンゴさんは答えた。
「いえいえ、なんでもないですよ! さあ頑張っていきましょう!」
「ああ、そう思うと気が抜けてトイレ行きたくなってきたわ!ちょいと行ってくる」
そういい俺がトイレに行くとフオリはマクラに向かって小さな声でしゃべりかける。
「言わなくていいのか、ダンゴよ」
ダンゴさんは笑顔を崩し、少し哀愁の漂った顔になり言った。
「まだいいんです、もし知ったらツクモさん……せっかくやる気になったのにやめちゃうかもしれませんし」
「……それもそうじゃな」
寝具達がなぜ美少女になってツクモの前に現れたのか……それはまだ少し先の話。
そして俺がトイレから帰るとまず思ったことを聞くことにした。
「どうやってアパート住民増やすの?」
「ま、まさかそれも知らずにアパート管理なんてやっとるのか?」
フオリは震えながら、信じられないという顔で俺に聞いてきた。
「まぁ、本当は大学とかで資格とか取ろうと思ったんだけどめんどくさくてさ」
「お兄ちゃん本当詰めが甘いよねー」
マクラもにやけながらゲス顔で言ってくる、かわいい顔して本当性格悪い。
「まぁ、基本的には業者に任せるのですが……あまりにもお金がないので自分で頑張るしかないですよね」
ダンゴさんもハァ……とため息をつき、いきなり詰まったかと言う雰囲気を出してきた。
「じゃあ、頑張ろうぜ! 明日住民になってくれる人を探そう!」
俺は無駄に元気にしゃべると三人も希望を持ったようで、やる気もでてくる。
「そうですね! 頑張ることから始めなければいけませんね!」
「うむ、お前らしいの」
「マクラも頑張るよー」
「じゃあもう夜になるし、景気づけにちょっと豪華な夜ご飯にするか!」
「やったあ!」
食べるのが好きであろうマクラは無邪気に喜びながら言った。
やっぱり子供は素直が一番だなぁ。
「お前ら! 服の準備しろー、俺は東条から服を借りてくる」
俺はアパートのドアを開け外に出ると、ちょうど服を持ってきた東条と鉢合わせた。
「おお、ちょうどよかった! 今から出かけるから服を貸してくれ!」
「どこに行くの?」
「今日はパーティーのための夜飯買うんだ」
「ふーん、私もじゃあ参加するからよろしく」
「了解……って、え?」
「悪い?」
「いや悪くはないけど……マニーがね? ないんですよね」
「夜ご飯代くらい出してあげるわよ、その代わり私の分のお使いも行ってもらうわよ」
「マジで! サンキュー!」
俺は感激で東条の腕を握った。
その後東条の持ってた服が落ち、東条の顔が真っ赤になった。
「ちょ、ちょ……手、てぇ握ってるからぁ」
「ああ、すまん」
「いきなり何すんの! 洗濯物落ちちゃったじゃない」
「ほんと、すんません」
そのあと照れてる東条かわいいと言おうとしたが、ぶっ飛ばされるので辞めておいた。
着替えを一通り済ませ行く準備を完了させた。
とはいえ東条の着替えであることには変わりがないのでみんなぶかぶかだったりピッチピッチだったりする。
「よし、じゃあ準備できたかー」
「はい! 人生初お買い物……楽しみです!」
俺は東条に貰った一万円をダンゴさんに任せると言ったきり買い物に対するテンションがとんでもなく上がっていた。
「ねぇねぇお兄ちゃん! 今から行くところにお菓子はあるのー?」
マクラが若干心配そうに聞いてくるが心配ない。
「あるぜー、じゃあ行くか! スーパに」
俺がいつも言っている行きつけのスーパー……その名も超激安スーパー。
に行こうと思ってたが東条に指定された普通のスーパーに行くことになった。
「そういえば、ツクモさんを含めて三人いるといいましたがどうやって東条さんなどはここに住んでいるんでしょうか?」
ダンゴさんがスーパーへ歩いていく途中に軽い興味で聞いてきた。
「ああ、それはだな……まず最初の住人、俺の親友……名倉幸四郎なんだがこいつは単純に通ってる大学から近いから俺のアパートに住んでやるよって感じで住んでるだけなんだが、東条は少し特殊でな」
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