第七話 希望の小隊

張り詰めた重い空気の中ここにいる人たちの視線が俺達に集中する。

 一時期は動揺していた議会のメンバー達も今では冷静になり、なぜ俺が魔界軍を倒す希望になるのかを冷静に聞いてくる。



「こいつが人類のきぼうねぇ」



 赤い髪の無精ひげの男、領土管理長のシリアル・レクトが俺のことをまじまじと見てくる。



「百聞は一見に如かずだ、まずはこれを見てくれ」



 そうチェスターが言うとルークは脇に差していた二本の剣のうち細い方の剣を抜きテーブルに置く。



「さぁ、佐原レイ……例のやつを」



 ドスのきいた低い声でチェスターは俺に言う。



「はい……」



 全員が俺に集中している中俺は心臓をバクバクさせながら剣に触る、もし能力が発動しなかったらどうしようという思いと、こんなに俺に目が集中することなんて今までの人生において一度もなかったので、自分の中での緊張は最高点に達していた。



 俺が剣を触る、すると瞬く間に剣が全体的に赤みを帯びはじめ、その後すぐに灰になる。



「おお……」



 議会のメンバーが再びざわざわし始める、予想外なことが起き、動揺しているのだろう。


「このように、この少年は触ったものを全て灰に変える能力を持っています」



「ほう、確かにこれなら魔族に対して先手で必殺の一撃を与えられるということか」



 戦士兵団長のザールは納得したように頷く。


「そういうことだ、どうだ勇者選定長ロメウゴット」



「悪い能力ではないがこれが魔界軍殲滅に役に立つとは限らんな、せいぜい師団長ってところか」



「まぁ待て、この能力ただ物質を破壊するだけではない……この能力は魔法や能力にも効く」



「な……! どんなに強力な魔法もこいつが触れば無に帰すことができるのか」



「ああ、だからこいつには魔界へ続くゲートを破壊してもらう……それがこいつは人類の希望になるという理由だ」



「それは素晴らしいな、だがそれが本当の話だったらの話だが」



「この私の話が信用できないか」



「全く信用してないわけではないのだぞ、だからこの二人を連れてこの地に言われる魔王軍残党を殲滅してほしい」


 そう勇者選定長が言うと後ろに立っていた二人の姉妹であろう白くきれいな髪の美少女が上品にお辞儀する、片方の姉らしき人はすらりとした体系に長くとてもきれいな髪に冷徹な釣り目をし、コートをきて脇に細く長い剣を差している。



 もう一人は姉に比べて一回り小さく比較的短めの白くきれいになびく髪、そしてウルウルと守りたくなってくるような瞳をしている。



 その姿は冷徹な父であろう、勇者選定長のロメウゴット・アグランデや姉とは比べ者にならないほどか弱い目をしている、さらにその妹らしき少女は剣を差しておらずその代わりにローブと杖を持っていた。


「我がアグランテ家の勇者たちである私の娘を魔界軍残党の討伐についていかせる、さあ自己紹介を」



「氷の勇者、ロザリア・アグランテです」



 そう淡々と自己紹介をすると直ぐ無言に戻る。ツンツンしてるなぁ。



「私は……リナっていいます!よろしくお願いします」



 妹であろう小さい方の白髪の美女は顔を真っ赤にしながら一生懸命大きな声で自己紹介する。



「すまんな、妹のリナは少し人見知りなんだ」



 ロザリアがとっさに妹のフォローに入る、見た目よりも優しい人なのか?



「話を戻すが、魔王軍残党のアジトは特定できているのか?」



 チェスターがロメウゴットに問いかけると、こごとばかりに切り替えしてくる。



「それも含めての討伐だろう?」



「仕方がない、その挑戦受けてたとう」


 勝手に俺の意見を聞かず話が進んでいるが、話によるとそこにいるロザリアとリナを連れて、この地……マグルスにいるであろう魔王軍残党を殲滅させればいいということだ。



「私の部下も三人連れて行ってもいいか?」



 戦士兵団長のザールが赤薔薇戦士団の戦士という戦力を追加するということはそいつに偵察させて戦況を聞くつもりだろう。


 逆を取ればそこで俺が活躍すればそれも総帥に報告がいく、そこを注意すれば俺が勇者になる肯定はになってくれるかもしれない。



「かまわん、いいな佐原レイ」



「はい、大丈夫です……ってことは俺とルーク、そしてロザリアさんとリナちゃん、それに戦士3人の7人で行くってことですね」



「そういうことだ、お前達は今すぐにでも行ける準備をしておけ」



「了解」


「では、お前たちを希望の小隊の名で、残党討伐を命じる」


「はい!」



 俺達はまず外に待機している戦士三人に事情を説明し、さっそく3時間後に出発することになった。


 まずはアジト探しからだ。



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