第五話 勇者の選定
「俺が勇者に?」
「そうだ」
「そ、その前にだ……この世界にも知らないことはたくさんある! それを教えてくれないとなんとも言えないよ」
食事の席を立ちながら急にこの世界だとか、わけのわからないことを言いだしだ俺を多分レイチェルやルークはおかしな奴が来たなと思ったであろう、だがこの世界で最も重要なもの、それは情報……これを集めて行かないことには何も始まらない。
「ああ……そうだなちゃんとした自己紹介をしてなかったな、、俺はルーク・アウストリア、アウストリア家次期当主だ、勇者の称号は取得済、歳は二十一だ」
ルークが自己紹介を終えるとレイチェルが立ち自己紹介を始める。
「アウストリア家長女、レイチェル・アウストレア、年齢は十七歳ですわ、残念ながら私は勇者の称号は持ってないんです」
レイチェルも自己紹介を終えた後、この世界の情報をいろいろ聞いた。
議会 正式名称 王下選定議会
千五百年前勇者と共に魔王を封印した七人の勇者の仲間たちの末裔の家の当主だけが参加できる議会。
七人の議員はそれぞれ役職を持っており、アウストリア家は防衛長の役職に就いている。
役職一覧
議長
防衛長
勇者選定長
戦士兵団長(総帥)
魔法士団長(大賢者)
領土管理長
資金管理長
勇者
現代の勇者は称号扱いされており、この称号を獲得すると魔王討伐への戦争へ参加する代わりに莫大な資金と様々な特権が与えられる。
獲得資格は議会の一族である、もしくは議会の推薦を得たのち、議員の過半数の賛成を得た者のみとなっている。
戦士、魔法士
この国、レアミオス連合国の中で勇者の資格を獲得できない者が入る軍隊。
全部で第七師団あり、その中で七人の師団長がいる。
一師団 一万人
その中でも兵団が二つあり全部で十四師団、約十四万人の兵が所属している。
戦士は主に剣を使った戦闘スタイル、魔法士は魔法を使ったスタイルの人間が所属する。
赤薔薇戦士団 七人の師団長とトップとして議会の一人、総帥で構成。
白薔薇魔法士団 七人の師団長とトップとして議会の一人、大賢者で構成。
魔法
魔力を込めて発動する効果のある物。
魔導
魔力を込めて動く機械
主に日用品、この世界では電気の代わりになる物。
魔導での兵器実用化はまだできていない。
「これくらいでいいか?」
俺の質問を一つ一つ丁寧に返してくれたルークは若干疲れているようだ、レイチェルに至っては寝てしまっている。
「勇者になるには議会の承認が必要ってことだな」
「その点は問題ない」
ルークはいつの間に食べたのか一切残っていないご飯の皿を後にし、レイチェルに毛布を掛け別の部屋に移動しようと言う。
「ついて来い、お前を勇者にする算段を立てる」
「まだ勇者になるとは言ってないんだけどなぁ」
心の中ではそういっているものの、手っ取り早く魔王軍のゲートをつぶすにはそれが一番近い事は分かっていた、ついでに様々な特権や金が手にはいるのはおいしい。
そんなことを思いながらルークについて行く、屋敷の中の一番奥の割にはあまり大きくない比較的質素な部屋に着く、質素とはいえ豪華な屋敷の中ではという意味で豪華なことには変わりない。
部屋なのにも関わらず、部屋の前に一人の使用人が門番代わりに待機し、ルークの目くばせと共に使用人はドアを開ける。
部屋のドアを開けると中には机がありその前には客と話す専用といってもいいくらい、綺麗にされている一人掛け用のソファーが六つある。
机の椅子に座っている一人の中年の男性、ルークとは違う、経験が語るかのような威圧感を放つ雰囲気の男性が俺をにらみつけてきた。
「お父様、客人を連れてきました」
「話は聞いているよ、君が佐原レイくんだね」
静かに、そしてドスが効いた低い声をした白髪のオールバックの男性がルークに言う。
「はい、今回お父様に頼みたいことがありまして、この男を勇者にと」
「ほう……」
俺は緊張しながらアウストリア家当主であるオールバックの男性に自己紹介する。
「どうも、佐原レイです……」
「アウストリア家当主、防衛長のチェスター・アウストレアだ」
自己紹介が終わった途端、そんなことはどうでもいいといわんばかりの切り替えをし、ルークを睨み付ける。
「このような少年を勇者に? あまり強そうにも見えないが」
ルークはフッと笑って、問いに答える。
「彼は強いですよ、なんせ魔王軍壊滅の鍵を握る男ですから」
「何? 説明しろルーク」
「あまり公にはできませんが、彼の能力は破壊、何もかもを破壊するのです」
「それで……ゲートを壊すと」
チェスターは考え込み、頭の中で考えを整理する、この感じはルークと似てて流石親子だなと思った。
「で、あればアウストリア家も他の議会の奴らより有利になるかもしれん」
「ええ、なので勇者選定長に話を聞いてもらえればなと」
聞いたがよくわからなかった単語があったので俺も質問してみる。
「ルーク、勇者選定長って?」
「議会のメンバーの役職の一つだ、その名の通り勇者を決める際にまず勇者選定長に見定めてもらうんだ」
「だがその能力は隠すのが絶対条件、ばれてないだろうな?」
チェスターが俺に威圧を込めたどす黒い雰囲気を放ちながら聞いてくる。
その答えに応じたのは俺ではなくルークだった。
「ええ、彼はまだばれてませ……」
「あの」
ルークがしゃべっている途中で俺が話を途切れさせて話を進める。
「実は、魔王軍残党に見せてから逃がしちゃいまして……」
チェスターとルークの心から驚いている顔、歳が全然違うのにもかかわらず、親子なだけあってか同じようなリアクションをする。
「え……?」
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