第四話 光断つ

ルークもこれは避けきれないと踏んだのか、ルークは少し驚く。


「俺も熱くなっちまったとはいえ、本気で殺りに行ったぞ……これも避けるか」


「妹助けた恩人殺そうとするなんて、仇で返すもいいところですよ」


 と啖呵切ったはいいものの、初めて本格的に頬に傷を負った、だが痛みですら思ったほど感じない。

 確かに痛みがある、だが痛くて泣きわめくほどではないってこともわかった。


「そりゃすまねぇな!」


 一切申し訳なさそうな素ぶりは見せず再び剣に魔力を込める。


「普段の決闘じゃ使わなねえんだが、俺も全力でいくぜ」


「まず普段から決闘申し込んでるってのが驚きですよ、何人殺したんです?」


「普段は木刀使ってるに……決まってるだろ!!」


 そう勢いよく言うと再び光の輪が俺とルークの周りに現れる。

 毎回この光の輪が出現するが、これは何だ?

 疑問には思っていたがそれどころではなかったのでスルーしていたが、もしこの輪を消したらどうなるんだ……この破壊の能力は物質だけではなく、能力も消せると言っていたはず、ならこの能力を打ち消すのも一つの手かもしれない。


 まず俺はルークが魔力をためて俺に攻撃を加えようとしている瞬間数メートル離れている光の輪に走り出す。


「おいおい逃がさねーよ」


 高速とも呼べる速さで俺に追いつく。


「こっちだってただではやられねぇよ!」


 スライディングをする形で光の輪に向かって滑り込む、するとまた俺の上を剣が通過する。


「間に合え!」


 俺は体制を変えて光の輪を触る、その瞬間光の輪は赤くなり灰と化した。

 その瞬間ルークの速さは人間を超えた速さではなく、普通の人間の速さに戻る。


「チッ」


 これがこのルークの速さの種はこれにあったのだ。


「ルークさん、あんたの能力はこの輪の中でのスピードの高速化ですよね」


 するとルークは高々と笑いながら剣を納める。


「ハッハッハ! やるなぁ……だが少し違うな、正確にはこの光の中に入った対象の時間を遅くする能力だ」


「あんたが早いわけではなく、俺が遅くなっていたってこでとですか」


「ああ、正確にはそういうことだ」


 そう俺が言うとルークが俺に近づき肩に手を置く。


「俺の負けだ、レイ」


 そうルークが敗北宣言をするとアウストリア邸にいた戦士達がルークの後ろに付く、一人は俺に矢を放った男、もう一人は剣を差した女だった。

 戦士の装備は比較的動きやすい鉄の装備だ、だが女性の戦士は長いスカートを穿き戦士なのに優雅なたたずまいをしている。


「俺に勝った奴は俺にとって最も信頼できる仲間だ、改めてよろしくレイ」


 改めて握手をしようと手を差し伸べるルークに俺は握手を返しながら


「俺を殺そうとしたのによくいいますよ」


「すまんな、だがこれで俺とお前は対等だ、そんな硬い言葉をつかわんでもいい」


 ルークはアウストレア邸に向かって行くと俺について来いという仕草をする、その合図を見た戦士の二人はルークの後ろに付く

 その三人の後ろに俺とレイチェルが付く形になった。


「ついて来い、飯をごちそうしてやる」


 ルークの命令で俺はアウストリア邸で世話になることになった。

 中に入るとそれは豪華な装飾が施されていた、もちろん外観も豪華ではあったがそれを超えた高級品であろうライトや絵画が目に入った。

 当然絵画はどんなに有名であろうと俺は人生で見たことない作品ばかりであった。


「お前はまずケガの手当てをしてもらえ」


 屋敷の中に入るとき無数の人間がいたがその中の一人のローブを着た女の人にこちらですと案内される。

 ローブを着た女の人についていくとベットと椅子のある部屋に連れて行かれた。


「けがを見せてください」


 ローブの女の人に自分がケガした場所……とはいえ頬だけだったので見せるも何もないのだが、少しだけ頬を女の人に近づける。


「 祝福ゼーゲン」


 何かの呪文を唱えると、水色のオーラが女の人の手のひらに現れ俺の頬に手を置く。

 数秒後手を放すとケガは消滅に近いレベルで治っていた。


「すごい……」


 俺が驚いていると、一言ありがとうございます、とだけ言い部屋を去る。

 それと入れ替わるようにメイドが来て俺にタオルを渡す。


「お風呂の用意ができております、お入りください」


 そう指示され俺はタオルを持って案内された場所へ行く、そこにあったのは自分の家にあった風呂とは比べ物にならないほど大きな風呂であった。


「ライオンからお湯が出る風呂なんて始めてみたぜ」


 俺は風呂を二十分ほど楽しんだ後、服を着替えるために更衣室に行く、するとメイドが二人待機していた。


「お洋服の新調させていただきますので、採寸させていただきますがよろしいでしょうか?」


「あ、え? あ……はい」


 目の前にいい匂いをしたメイドのお姉さんが体に触れてくる、緊張したがなんとか乗り切った

 新しい服ができるまでこれを着てください。

 そういわれるとバスローブのようなものを渡される。


「ああ、どうも」


 素早く着替えて更衣室の外に出ていたメイドに案内されるがままについていくと、たくさんの食事が並んだ大きいテーブルに、正面にルーク、横にレイチェルが座っている。



「おーレイ、やっと来たか! 座れ座れ」


 ルークにそう言われ俺は席に座とルークやレイチェルはいただきますといい食事を始める。


「レイ、お前には聞きたいことがたくさんある、お前はどこから来た」


 俺は一口肉を頬張ると、こっちの世界で何も食べてなかったのか一層おいしく感じた。


「詳しくは言えんが、遠い場所とだけ」


「そうか、じゃあなんで妹を助けてくれたんだ?」


「まぁ、金がなかったってのもあるけどもう一つ、明確な目的がある」


 そう言うとルークは食べるのをやめる。


「なんだ、それは」


「俺の目的は、魔王軍の出所を消すことだ」


 ルークとレイチェルは驚いたように俺を見つめてくる、そして沈黙


「な、なんだよ」


「魔王軍のゲートを壊すってことか?」


「ああ、俺の能力があればそのゲートも消せる」


「……」


 また静寂が流れる、ルークはいったん考える素振りをし、すべてが繋がったと言う顔になり俺に期待の目を向ける。


「確かに……それなら、もしかしたら可能かもしれない」


 その言葉を聞いたとたん俺の目に再び火が付く、俺の目的に一歩近づく達成感に、今頃ではあるが、これが素晴らしいものだと気づいた。


「この感覚、もう少し前になれたらな」


 俺が独り言を言うとルークが不思議そうな顔をする。


「なんでもない、話を続けてくれ」


「ああ、レイ……だったらお前も勇者になれ」


「……」




「マジですか……」


 

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