第一話 破壊者の威力

 自分が起きていることに気づき暗闇の中、目を開けてみる。


「う……まぶし……」


 暗闇からの光で目が慣れるまでに時間がかかる。


「ここが異世界ってやつかぁ」


 あたりを見回すと中世ヨーロッパ、お決まりの舞台といったら良いだろうか、そんな中、現代の洋服でボーっと立っている俺を町行く人々は不審者を見るような目で見てくる。


 場所は町、とはいえ比較的にぎわってはいない、何か不穏な雰囲気を漂わせている感じがする。


 自分と同じ黒髪の人間はほとんどおらず、緑や青など奇妙な髪形の人がたくさんおり、ローブや騎士の格好をしていたり、歴史の教科書で見たかのような昔の洋風の服装の人もいた。


 人の量もすごく多いというわけもなく、商店街ではあったが盛り上がっている様子もない。


「ん……なんだあれ」


 あまり多くない商店街の中にひときわ人が集まっている場所があった。


「魔導製品店?」


 そう看板に書かれている店の外の展示している何かに群がっている人々、破壊の能力が発動しないように手袋をつけ人々の群れをかいくぐる。

 その終着点に行くと人々の目はある一点に集中していた。


「テレビ?」


 そこにあるもの、テレビにしか見えない存在、そこにはニュースのような物が映っていてテロップには――議会の娘、誘拐!――と書かれていた。


「おいおい、大変なことになったぞ」


 とおじさんや若者、奥さんなどが言う。


「なぁおっさん、これは何だ?」


 俺はテレビのようなものをさしながら横にいたおじさんに不穏な空気をぶっ壊すように聞く。


「ああ……これは映像転送装置といってな、魔力で動く機械じゃ」


 なぜか見ず知らずのよくわからない男に心よく教えてくれるか不思議で仕方なかったが、よく観察するとこの店の店長だったようだ。


「はいはい! これを家で見たいなら買った買った!」


 決して安い買い物ではないらしく、店長がそういうとぞろぞろと人が散っていった。

 ニュースをよく見ると、議会と呼ばれるメンバーの娘が魔王軍の残党に誘拐されたというものだった。


「よくわからんが、それを助ければお礼をたんまり貰えるわけだ」


 当分の目標が決まり、まずは議会の娘を助け、報酬をいただくことにした。

 この状況を見るに、悪魔対人間は圧倒的に人間が不利な状況となっているのも一目瞭然であった。


「なぁ、店長……議会の娘ってそんなに重要人物なのか?」


 客が全くいなくなり、テレビっぽい機械……映像転送装置を拭いている店長に聞いてみる。


「なんじゃお前、なんもしらんのかのぉ……まぁ服装からして異国の奴ってのは分かるけどの」


 年のせいか腰が曲がり身長もあまり高くない白髪のおじいさんがそう言う。


「議会ってのはな、千五百年前に魔王が攻めてきての、その時に魔王を倒した勇者の仲間たちの祖先で構成された七人のメンバーじゃ」


 店長は快く自慢げに語り始める。


「その議会のうちの一人、魔王軍侵略から防衛する最前線のここ、【マグルス】に住む防衛長のアウストリア家の娘さんじゃ……そんな娘が魔王軍の残党に誘拐されたとあっちゃ一大事ってことじゃよ」


「防衛長……議会のメンバーはそれぞれ役職があるってことね」


「まぁ、あんたには関係ない話じゃ……ここは魔王軍から防衛するギリギリのライン……命が惜しけりゃさっさと故郷に帰ることだ」


「言うねぇ店長、せっかくだし俺の能力とやらを試してみるか」


 俺は黒い革製の手袋を一つ外し何かいらないものを貸してくれと手でジャンクがある場所を手で指し店長に取らせる。


「これでええのか?」


 店長は不審になりながら俺に目を向ける。

 俺はそんなことはお構いなしに手袋をしている手でジャンクをとり手袋をしてない手の平に落とす。


「見ててくれよ、店長」


 とはいえ、俺も能力を使ったことないからな……もし発動しなかったら恥かくぞ……

 ジャンクが手のひらについた瞬間、ジャンクは鉄を熱したときのように赤くなり灰となった。


「こりゃたまげたのぉ……」


 これが俺の能力……万物を灰に変える力か……


「確かに……これなら魔王軍……悪魔にも対抗できるかもしれん」


 俺は店長に言われてか少し調子に乗り始める。


「悪魔軍の全滅も余裕かもな……!」


 すると店長も興奮した様子で俺にしゃべりかけて来る。


「ここの近くに近所の者しか知らん魔王軍の残党のアジトがある、そこにならいる可能性があるぞい」


「この場所…【マグルス】の侵略に失敗してちりじりになった魔王軍の悪魔がいるってことか」


「ああ、まぁ少し厄介ではあるがお前のその不思議な能力なら余裕じゃろう」


「なんでそれを議会のメンバーに知らせないんだ?」


 アジトを知らせれば悪魔の残党も簡単に破壊できるのになぁ


「アジトの周りには国の戦士たちがおる、そこ見てみぃ」


 店長が指をさした方向を見るとやる気のなさそうに歩いている鉄の装備をし、剣を横に差した兵士がいた。


「本部の戦士たちはやる気があるみたいじゃが、こういう支部の戦士はやる気のないばかりか、魔王軍と通じてる物もおる」


「言っても何もしないばかりか、チクられて復讐されるってことか」


 これは国の体制も変えていく必要があるかもな。

 国が連携を取れてないばかりか、スパイなんていたら情報が筒抜けだ。


「議会に言うにしてもわしらみたいなもんは、直接話すこともできん」


「まぁ大丈夫だ、俺が何とかしてやるよ」


「とはいってものぉ、変な能力があるとはいえ、悪魔に対抗するなら魔力が……あ!」


 店長がそういうと何かを思い出したかのように手をポンッとし、店の中へ入って行った。


「ちょっと店長!」


 俺が店長を呼ぶと店長は腕を振るしぐさをし俺にも入ってくるように指示する。


「わしが少し面白い魔導具を持っててな、お前にもやってもらおうと思っての」


 そう言うと店の中から腕を二つ入れるかのような灰色の鉄でできたかのような機械(液晶付き)をネジや設計図で散らかっているテーブルに置いた。


「これに手を入れてみぃ」


「なんだ……これ」


 見るからに怪しい機械、腕なんて入れたらそのまま取られてしまうんじゃないかと思うほどに。


「お前これも知らんのか、これは魔導具といってな……魔力で動く機会のことじゃ」


「魔力で動く機会は魔導と呼ぶのか」


「お前なんも知らんのぉ、仕方がない……わしが一から説明しちゃる」


 店長に魔法の何たるかを聞いたところ、魔法にも様々な種類があるようだ


「いいか、まず魔法はわかるな」


「まぁ、魔力を使って放つ技みたいな感じだろ」


「そうじゃ、魔力はどんな人間にも備わっている力のことじゃ」


「じゃあ魔導は?」


「魔導とは魔力で動く機械のことじゃ、魔法を使って悪魔から身を守るのが魔法使いや魔法士と呼ぶなら、機械を使って身を守るのは魔導使いということじゃな」


 俺がいた世界とは少し違いはあるが誤差程度だな、ここら辺は徐々に覚えていくとして、この魔導具を試してみるか。


「んで、この機械は何なんだ」


「これは魔力を測る機械じゃ、ここに腕を入れると流れている魔力からその人間の魔力を推測できる」


「いわば魔力測定器か」


「まぁ百聞は一見に如かず、やってみるのが一番じゃの」


 そのことわざ、この世界にもあるのか……

 俺は二つの腕を入れる場所に手袋をしてるのをしっかり確認したうえで入れる。


「ソクテイシテイマス」


「少し時間がかかる、待ってろ」


「ちなみにどんな結果がいいんだ?」


「最低がF、そっからE、Dと来て最高がAからS、SS、SSSの順番になっとる」


「へぇじゃあSSS目指して……」


「バカたれ、かつて戦いで名を馳せた議会のメンバーの若いころでさえAからSと言ったところじゃ、お前に不思議な能力があると言えどせいぜいD、よくてCじゃろ」


 若干失礼なことを言われたとはいえそれがここの世界の常識、測定が完了したようなので落ち着いて画面を見る。


「ソクテイカノウ、ケッカヲヒョウジシマス」


 二人はゴクリと生唾を飲み結果を待つ。


「アナタノマリョクハ【Z】デス」


「【Z】ってなんだ……」


 説明に聞かされてない結果、普通に考えてFが最低だと考えるとZはFよりさらに下という結果となる。


「なんじゃと……クラス【Z】?」

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