勇者の妹が魔王である事を僕だけが知っている

笹師匠

プロローグ

僕はモント・カルダータと言います。

歳は10と6つ、地元の村では一応成人扱いで、ならわしにより旅に出る事になりました。

旅の途中、僕は凄い強者と会う事が出来ました。国王が直々に魔王討伐を依頼し、世界を背負って立つ存在である勇者です。

その勇者の中でも抜きん出て強い勇者である大剣使いのコーリィ・アンダーハイズと、その妹の僧侶であるナツの二人と、僕は共に旅をする事が決まり、家族どころか村中に祝福され、僕は村の中では英雄扱いされ……。


「起きて下さいモントさん。時間ですよ」


僕はナツに淡い恋をしてしまったのです。

彼女も僕を悪く思ってはいないのか、好意的に接してくれていました。だから僕は、彼女に余計にぞっこんだったのです。

だが彼女は勇者の妹。ましてや世界でも指折りの強者です。勿論もちろん、妹さんを僕に下さい、だなどと言えるはずもなく、モヤモヤとしたまま旅は続いていきます。


ところがそんなある日、ナツの方からお誘いがありました。

彼女の言うことには、『夜明け前なら兄が寝ているし怪しまれないですから、起きられるならお話しでもしましょう?』との事でした。

眠いだなんだと言えるはずもなく、無理矢理に起きては、僕は彼女と明星の下で語り合いました。

ですが、僕はその中でふと、ある事に気付いてしまったのです。

ナツは語り合う時に紅茶を淹れてくれるのですが、その彼女の淹れるお茶を飲んで少しすると、堪えようもない睡魔が僕を夢の世界へいざなうのです。

ですから僕は思い切って彼女に、お茶に茶葉以外の物を何か入れているのか、と問いました。

彼女はしばらく宙を眺め、『睡眠薬を、少々入れていました』と切り出します。

何故かと詰問すると、彼女は言いました。


「貴方の血を、寝ている間に頂いていました。嫌であったなら申し訳ありません。ですけれど私は、その血が無ければ死んでしまうんですよ?

何せ私____魔族、ですもの」

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勇者の妹が魔王である事を僕だけが知っている 笹師匠 @snkudn

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