6ー2 ところによりボールが降るでしょう?
放課後、神崎さんは珍しく起きていた
蓮「行ける?」
俺「もちろん!」
俺たちは体育館へ移動する
俺「珍しいね」
蓮「何が?」
俺「いつもなら後30分は寝てるでしょ?」
蓮「今回はそんな気分だっただけ」
俺「そっか」
そして体育館に到着して、小窓から中の様子を伺う
やはり誰もいない
ボールも転がってない
ほんとに七不思議ならいないのが正解なんだけど……
ほんとに誰かのいたずらとかじゃないのかな?
俺「やっぱり誰もいないね」
蓮「このままここで待つよ」
俺「了解」
中の様子をじっと観察する
やや薄暗い体育館は静まり返ったまま変化はない
クンクン……なんか良い匂いがするな……なんの匂いだ?
匂いの元が気になり顔を動かすと、すぐ隣に発生源がいた!
神崎さんの顔が俺の顔のすぐ横あった!?!?
匂いは神崎さんの髪から香るものだった!
蓮「なに?」
あまりの近さと香りに脳みそがフリーズして返事ができない
蓮「中、見てないと」
俺「あ、ああ」
何を言われたのかわからない、でもこのまま顔を見つめてたらおかしくなりそうだった
だから視線を体育館の中に戻す
神崎さんは俺の変な様子には興味がないのか、体育館の中を凝視している
しばらくそのまま体育館の中を無言で観察していた
しかし、一向にボールは出てこない
俺「ふぅ……」
蓮「少し休憩しましょうか」
俺「賛成〜、あ〜喉乾いたなぁ」
蓮「私紅茶が飲みたい、買ってきて?」
俺「え?」
蓮「だって、どっちかはここで見張ってないと」
俺「そっか、わかった。紅茶は普通の?」
蓮「そう、ストレートがいい」
俺「了解!じゃ、ちょっと行ってくる」
俺は早歩き程度の速度で自販機まで行く
えーっと?ストレートの紅茶は……あれ?ここには無いな……
よし、別の場所の自販機行ってみるか
そこから歩くこと5分、別の自販機まで来たが……ここにも無い!
神崎さんが待ってるってのに……!
よし、後は……学食にある自販機だな
食堂に向かう途中、岡崎先生とすれ違ったが特に何も言われなかった
よし、俺の問題児って印象はだいぶ薄まったみたいだな
学食に到着し、自販機を確認する
紅茶、紅茶紅茶
俺「あ、あったぁ!よし!コレ買って早く戻ろう」
小銭入れ出してっと……
あ、金が……紅茶一本分しか無い……!?
俺「どうしよう……」
A「神崎さんの紅茶だけ買ってすぐ戻る」
B「自分の分を買って一度戻って、神崎さんからお金を貰ってまた買いにくる」
C「財布を忘れた事にして何も買わずに戻る」
う〜ん……今すっごく喉乾いてるんだよなぁ……
でも、それは神崎さんだって同じだよな
BとCは神崎さんを更に待たせる事になるよな……
そんな事、俺にはできない!!
ここはAだな
俺は水道水でも飲んで戻ろう
自販機で紅茶を一本買って神崎さんの待つ体育館に戻る
俺「お待たせ、はい紅茶」
蓮「ありがと」
キャップを開けてゴクゴクと飲む
やっぱりかなり喉乾いてたんだな、脱水症状になってなくて良かった
蓮「自分の分はどうしたの?」
俺「ああ、水道水飲んできたから大丈夫!」
蓮「水道水?なんでまた……もしかしてお金なかったの?」
俺「あ〜、いや!水道水飲みたい気分だったんだ!」
蓮「ふーん……はい、コレ」
神崎さんはポケットから百円玉を俺に渡す
実際は130円だから30円足んないんだけど、まぁ細かいことは気にしない
俺「ああ、確かに」
小銭入れに百円玉をしまう
蓮「それと、はい」
神崎さんが飲みかけの紅茶を俺に差し出す
俺「え?」
蓮「一口、あげる」
俺「えっと……いいの?」
蓮「一口だけ、だからね」
うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
こ、こここここここここコレは!!
間・接・キ・ス!?
俺「あ、ああああ、ありがたく頂戴します!!」
ペットボトルの口を自分の口に近づける
あと、1センチ……
ダーーンダーンダーンダンダンダン
ん!?今の音は!
俺「神崎さん!今の音!」
蓮「うん」
二人で中を覗く
そこには転がるバスケットボールだけがあった
蓮「手分けして中に入れる場所探すよ」
俺「あ、まだ飲んでな」
蓮「そんなの後で!」
神崎さんにペットボトルを取り上げられた
いや、元々神崎さんのモノなんだけどさ
蓮「私はこっちから回るから」
俺「わかった、俺は反対から」
背を向けあって体育館の周囲を捜索する
丁度さっき居た位置から真反対の場所で神崎さんと合流する
蓮「どっか入れそうな場所あった?」
俺「いや、ないな。完全に締め切られてた」
蓮「そう……やっぱりこれは七不思議ってことね」
俺「そうだな、中には誰もいない。にも関わらずボールだけ現れた」
蓮「体育館の怪音……明日からもっと本格的に調査しましょ」
俺「ああ、ってことは今日はもう解散?」
蓮「そうね、同じ日に二度は起きないでしょうから」
俺「それもそうだな」
蓮「それじゃ、また明日」
俺「ああ、また明日」
神崎さんと別れてから気がついた
あ!間接キス!!
orz
明日、一口くれない……よなぁ……
〜翌日〜
教室に着くと
蓮「ちょっと、来て」
俺「え?ええ?なに?」
神崎さんがいきなり俺を教室から連れ出した
そのまま歩いて廊下の端まで行く
蓮「ここでいいかな」
俺「えっと?何?」
もしかして告白?
え?昨日から神崎さんどうしちゃったの?
なんの脈絡もなくデレるとか、ありえないでしょ?
蓮「この七不思議が解決できたら、調査は終わりにしましょ」
俺「え、でも、七不思議はまだ後1つあるよ」
蓮「そう、でもそれを調べるのは止めましょう」
俺「何で?」
蓮「七不思議は全てを知ると」
俺「不幸が訪れる?」
蓮「そう」
俺「はぁ、わかったよ」
蓮「よかっ」
俺「なんて言うとでも思ってる?」
蓮「た……」
俺「神崎さんがどうしてそんなに7つ目を危惧しているのか分からないな」
蓮「……イヤな予感がするの」
俺「イヤな予感、ね。でも俺なら大丈夫だよ!何があっても神崎さんを守ってみせるから」
蓮「私の方が強いよ?」
俺「そうだね。俺は神崎さんには勝てない、だって神崎さんのこと好きだからね」
蓮「またそんな事言って」
俺「本気だよ。だから七不思議を全部解き明かしたら俺と付き合ってほしい」
少しの沈黙の後
蓮「なんで私なの?私の何を知ってるって言うの」
俺「それは全部終わってから、話すよ。絶対に」
神崎さんの目を真っ直ぐ見る
見つめ合う二人
蓮「怪我するかも」
俺「いつか治るよ」
蓮「死ぬかもしれない」
俺「簡単には死なないよ」
蓮「後悔するよ」
俺「神崎さんを諦めたらもっと後悔する」
蓮「なんで!」
俺「もしかして昨日から態度が変わったのは、手を引かせるために?」
蓮「……少し優しくすれば云うこと聞くと思ったのに」
俺「残念だよ。俺の事好きになってくれたわけじゃないんだね」
蓮「……そうね」
そっか
でも、俺のこと気遣ってくれるなんてな
少しは好感度上がってきたのかな?
よーし!今日もしっかり調査するぞ!!
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