5ー3 踊り場の合わせ鏡 オフの日に

オタクの日曜日の朝は割と忙しい

戦う女の子のアニメに戦隊モノ、変身ヒーローの特撮と見るものが沢山あるのだ!

いやぁ、最近の子供向け番組は中々に考えさせられるものが多いよな


さて、とりあえずゲーム機の電源入れてっと

何からやろうかな……

大体は学園モノだしな

ヒロインで選ぶか、パッケージで選ぶか

うーむ……キャラから選ぶか

えーっと、こっちは……メインヒロインがツンデレか

こっちは先輩か、こっちは双子か……

流石に寝てばっかのヒロインは無いな

よし、一っ通りメインヒロインのルート攻略していくか


カチ……カチ……カチカチ……カチ……

ひたすらシナリオを読み、選択肢を選ぶ

そしてまたシナリオを読む、選択肢を選ぶ

時々選択肢の所でセーブしてっと


よし、ルート入ったな。後はシナリオを読むだけかな

うん、なかなか良い展開だな

ヒロインとの仲が進展するたびにトラブルが発生して、それをヒロインと一緒に乗り越える

よし、後は告白シーンと後日談だな

さて、どんな感動的なシーンになるのかな


りりりりりりり♪とスマホの着信音がする

俺「うわっ!?で、電話!?誰!?知らない番号!?」

少しほっておくと切れた

俺「ふー……ったく誰だよ……宅配業者か?最近何か買ったかな……?」

りりりりりりり♪

俺「またかっ!よし、とりあえず出てみるか。で詐欺とかだったらソッコーで切る!」

俺「はい、もしもし」

??「あ、繋がった!山本くん?私!私!」

俺「私私詐欺?」

語呂悪っ!

??「違うよー!サギじゃなくて加藤だよ!」

俺「ん?加藤、さん?」

加藤「そう!」

俺「えっと……軽音部の?」

加藤「そうだよー」

俺「なんで俺の番号を?」

加藤「ああ、うん。田所くんから聞いた」

仁ーーー!?なんで勝手に俺の番号教えてんの!?

加藤「ね、今日って暇?」

俺「いや、忙しい」

加藤「え?そうなの?田所くんは暇してるって言ってたから……ごめん」

俺「なんだ、なんか用か?」

加藤「えっと、うーん……まぁ、ね」

俺「用があるなら聞くぞ、電話じゃダメなのか?」

加藤「えっと、できれば○✕駅前に来てほしいんだけど」

俺「○✕駅か……わかった。何時に行けばいい?」

加藤「え?忙しいって」

俺「今暇になった」

加藤「えぇー?ま、来てくれるならいっか。じゃあ1時間後で!」

俺「おう、わかった」


加藤さんが呼び出してくるって事は、何か七不思議の手がかりを手に入れたって事だろう

ならば行かねばならぬ!

神崎さんを攻略するために!!

手早く着替えて居間で飯を軽く食う

○✕駅までここからなら自転車で30分くらいだし、さっきのルートを終わらせてから行くか

部屋に戻ろうとした時背後から声を掛けられた

妹「兄さん、どっか行くんですか?」

俺「ああ、ちょっと野暮用でな。○✕駅の方まで」

妹「ふーん、野暮用ってなんですか?兄さん自分の用事がなきゃ滅多に出かけないのに……」

俺「ああ、学校のやつから話を聞きに行くんだ」

妹「明日じゃなくて、今日ですか?」

俺「お、おう。そういえば……なんで加藤さんはわざわざ今日に?」

妹「兄さん、加藤さんって誰ですか!?まさかお友達!?」

俺「妹よ、兄にだって友達くらいいるぞ。まぁ加藤さんが友達かどうかは分からないが」

妹「友達じゃないのに……出かける?まさかっ、兄さんイジメられてるんですか!?」

俺「なんでそうなる!」

妹「だって、友達じゃないって事はカツアゲとかパシリとか……それ以外に兄さんってなんか役に立つんですか?」

俺「妹よ、いい加減にしなさい。それ以上兄をイジメるな……」

妹「そんな、イジメるだなんて……私は兄さんが心配で!」

俺「今回の事は一切心配いらないから!だからもうそれ以上言うな、な?」

妹「兄さんがそういうんでしたら……でも何かあれば言ってくださいね?そいつの事呪殺しますから!」

俺「あ、ああ。なにかあれば相談するから、だから軽々しく呪殺とか言わない」

妹「はい。わかりました」

俺「あー、もう時間ないな。それじゃ行ってくるから」

妹「はい。いってらっしゃい」


あいつ、呪殺とか言っていたがほんとにヤらないだろうな……

代々ウチは悪霊や悪魔なんかを祓う、祓い屋なんだが……最近はめっきり被害が減って今じゃそっちの依頼は年数回しかない

なので両親は普通に会社勤めだ

妹は小さい頃から退魔や呪術の本を絵本代わりにしてたせいであんな感じに育ってしまった……

全くもって残念だ……見た目は身内贔屓で見て可愛い方って所なんだがな

中身があれじゃ浮いた話なんてあるはずもない……可哀想に……


自転車を漕ぐこと30分駅前に到着した

有料駐輪場に自転車を駐めてっと

さて、時間は……約束の5分前か

加藤「あ、山本くーん!こっちこっち!」

俺「おう、待たせたな」

加藤さんの所に行くとそこには、美久ちゃんと蒼子ちゃん、翠ちゃんまでいた

俺「おっと、皆さんお揃いで」

加藤「とりあえず、お腹空いたからファミレスでいい?」

俺「いいぞ」

加藤「それじゃ、行こー」

加藤さんに先導され俺たちは近くのファミレスに入店した

昼をやや過ぎたくらいの時間だからまだ店内は混雑していた

待つこと15分、やっと席に案内された

そこで各自料理を頼む

俺「それで?何か分かったのか?」

加藤「ここじゃ騒がしいからご飯食べた後カラオケ行こ、そこで話すよ」

俺「お、おう。わかった」

まぁ、話が聞けるならどこでもいいか


料理が運ばれてきて各自マイペースに食事を摂る


全員が食べ終わってから個別に会計を済ませ、カラオケに移動する


加藤さんたちが受付で時間とかを決めていく

加藤「人数は5人で、フリータイム……」

一人じゃなかなか来ないからな……カラオケって新鮮だ

一歩引いて四人の女子を眺める

仲が良いんだなぁ……

加藤「1ドリンクオーダーとドリンクバーどっちがいい?」

俺「任せる」

加藤「じゃ、ドリンクバーで。はい、じゃそれで、はい」

加藤「山本くーん、行くよー」

俺「あ、ああ」

蒼子ちゃんがマイクの入ったカゴを持っていた

俺「蒼子ちゃん、それ持つよ」

蒼子「え、大丈夫ですよ?」

俺「全部決めてもらったからね。俺カラオケとか全然来ないから助かったよ」

蒼子ちゃんからカゴを受けとる

確かに大して重くもないな

翠「え?来ないんですか?」

美久「意外です」

俺「そうか?普通一人で来るものなのか……」

蒼子「え……?」

俺「ん?カラオケ一緒に行くようなやつ居ないから、一人で来るしかないんだよ、俺」

蒼子「えっと……そうですね、ヒトカラっていうのもありますし!」

翠「なら、今度蒼ちゃんと来ればいいんですよ。よく行ってますし」

蒼子「姉さん!?」

美久「あ、それいいかもです」

俺「え?蒼子ちゃんってよく来るの?」

蒼子「その、歌の練習で……」

俺「練習か、じゃあ邪魔になるし俺は」

蒼子「その、今度……誘ってもいい、ですか?」

俺「え、でも」

悪いよなぁ、邪魔しちゃ

蒼子「その、歌の感想……聞かせてください……」

俺「俺、音楽の方はからっきしだぞ?」

蒼子「その、えっと……」

美久「蒼っちはウチのグループのヴォーカルなんですよ!人前で歌う練習にもなりますし!先輩さえ良ければ!」

俺「んー……ほんとに邪魔じゃないか?」

蒼子「邪魔じゃない、です」

俺「それじゃ、今度誘ってくれるかな?」

蒼子「はい!」


蒼子ちゃん、随分と大人しくなったなぁ

始めて会った時は気の強そうな感じがしたのに……俺に大して気を張ってたのかな……

ドアを壊した不良生徒だもんな、緊張もするよな

てことは、今は割と素の状態なのかな……?

なんか翠ちゃんと双子の姉妹なんだなぁって感じがする


加藤「楽しそうに何話してるの?」

俺「ああ、今度蒼子ちゃんがカラオケに誘ってくれるって言ってくれてさ」

加藤「ふーん、そっか。まぁ、それよりあの突き当りの部屋みたいだよ」

俺「やっと着いたか」

加藤「随分遠い部屋だったね」

俺「ああ」


中に入るって照明を点ける

加藤「何歌おっかなぁ」

俺「え?調査結果は?」

加藤「ちゃんと後で話すよ、それより来たからには歌わなくちゃ!」

えーーーー!歌うのか!?

……どうしよう、一般的な歌なんて大して知らないぞ

しかしここでガッツリアニソンとか歌ったら……空気が死ぬ

美久「先輩、次入れてください」

俺「えっと、俺は……」

蒼子「歌、嫌いなんですか?」

俺「いや、そんな事はないぞ。でも何を歌えばいいのか……」

蒼子「好きな歌歌えばいいんですよ。別にコレを歌わなきゃいけないって決まってるわけじゃないですし」

俺「そうは言ってもなぁ」

美久「先輩、早く入れないと順番来ちゃいますよー」

俺「お、おう」

えーっと……あ!有名なアニソン入れれば何とかならないか?

よし、オタクじゃなくても知ってる超メジャーな歌

残酷な〜を選んで送信っと

美久「あ、それ知ってます!蒼っちも知ってるよね?」

蒼子「うん」

ほっ

良かったぁ……これで何とか空気が死なずに済む

その後何とか歌いきって早く話しを聞かないと……

美久「次先輩の番ですよー」

俺「またぁ!?」

加藤「山本くんがオタクなのは皆知ってるから好きな曲入れて平気だよ?」

俺「え?そうなの?好きな曲入れていいの?」

全員が頷く

俺「そっか、なら自重は止めて……あの曲入れるかな」

とりあえず曲があるか確認してっと……あ、あった

ここ凄いな、ギャルゲソングもしっかり入ってる……

よし、送信っと

蒼子「それ、なんのアニメですか?」

俺「えーっと、コレは……」

言えない……アニメじゃなくてギャルゲの曲だなんて……

蒼子「?」

俺「まあ、そのなんと言うか……少し古いやつだから」

う、嘘は言ってない!

蒼子「そうですか」

よし、詳しく突っ込んではこないな

そして俺の歌う番になる

軽快でアップテンポの明るい曲、少女ヒロインの恋する気持ちを歌った歌詞

それを熱唱した

うん、反省はしているが後悔はしていない!

美久「先輩って恋愛系の歌好きなんですか!?」

俺「いや、なんというか」

翠「歌詞すっごく可愛かったですね」

蒼子「私今の歌好き、かも」

加藤「それじゃ、次はあんな感じの曲作ろっか」

美久「いいですね、それ!」

加藤「山本くん、さっきみたいな曲ってもっと知ってる?」

俺「あと何曲かなら」

加藤「入れて!そして歌って!」

俺「あ、ああ。わかった」

何故か女子4人にギャルゲソングを歌って聞かせる事になった

これなんて罰ゲームですか!?



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