4-4 放送室の怪談 ~解~

前日クズ先輩の原稿を手伝って時間がなくなってしまい、旧放送室の調査が出来なかった

そして、今日こそ謎の校内放送(ノイズ)の正体を確かめるため放課後に旧放送室に向かう


蓮「体調は?」

俺「神崎さんが俺の心配を……ううぅ……」

嬉しくて泣けてくる!!

蓮「はぁ……問題なさそうね」

俺「もちろん!」

蓮「それじゃ、行くわよ」

俺「お供します!!」


俺と神崎さんは旧校舎にある旧放送室に向かう

俺「鍵は?」

蓮「昨日先輩から貸してもらったから」

ポケットから鍵を取り出し解錠する


開けた途端室内のホコリが舞う

使われなくなってかなりの時が経ったようだ


ハンカチを口元に当て中に入る

電気のスイッチを押すが蛍光灯が切れてるのか点かなかった

神崎さんは持っていた手提げから懐中電灯を取り出し中に入った

俺もその後に続いて入室する


蓮「これ……」

神崎さんが一つの機材を懐中電灯で照らす

そこには古い機材が一つだけあった

誰かが拭いたみたいに……いや誰かが拭いたんだろう

その機材だけホコリが薄くしか積もってなかったのだ

俺「誰か、俺たちの前にここに入ったヤツがいる?」

蓮「多分その人があの放送の犯人」

俺「でも、鍵かかってたぞ?」

蓮「あの程度、鍵が無くても開けるのは簡単」

俺「ピッキング?」

神崎さんは頷いた

蓮「誰がやったか分からないけど、この機械を止められばあのノイズは止まるはず」

俺「どうする?コードでも引き抜くか?」

蓮「それだと繋がれたら同じ」

俺「それじゃあ」

蓮「中のカセットを取り出して処分する」

俺「そっか、えっと……どれが取り出すボタンだ?ボタンありすぎてわかんねぇぞ」

蓮「適当に押して壊したら、また停学になるかもね」

俺「え゛、どーしよ……」

蓮「とりあえず出ましょ……」

俺「そうだな」

ホコリに耐えかねて旧放送室から脱出する


蓮「詳しそうな人に聞いてみるしかない」

俺「詳しそうな人……司書のおじさん?」

蓮「多分協力してくれない」

俺「それじゃ、誰が……?」

蓮「探すしかない。友達とか……いないわね、ごめんなさい」

俺「友達いるよ!?」

蓮「え?現実リアルに?」

俺「いるよ!クラスメイトの田所仁とか!」

蓮「他には?」

俺「え、他……?」

蓮「そう、田所くんだけなのね。彼誰とでも話すから実質0人よね」

俺「いや、えっと……」

蓮「もういいの。酷なこと聞いて悪かった、謝るわ。ごめんなさい」

俺「そんな謝罪は欲しくなかったよ!そんな悪いと思ってるなら、俺と付き合ってよ!」

蓮「うん、それ無理」

!?!?

あ、アサクラさん!?

俺「またフラれた!」

蓮「むしろ今の流れでよく告白できたよね」

俺「告白はノリと勢いと根性とタイミングのどれかがあればできる!」

蓮「で、成功率は?」

俺「ゲームなら100%!」

蓮「……キモいわー」

俺「俺の事好きにならない?」

蓮「なれる要素が皆無なんだけど」

俺「そっかー、それじゃまたの機会にする」

蓮「正気?」

俺「好きなことに正直に!!それこそオタクの真髄だからね!」

蓮「そう……」

俺「惚れた?」

蓮「そんなわけないでしょ、呆れてたの」

俺「それで、実際問題誰か詳しそうな人居ないかな?」

蓮「知らないわね、面倒だから探しといて」

俺「え、一緒に探さない?」

蓮「いつもそうでしょ」

俺「そりゃ、まぁ、今までは」

蓮「なら今後もずっと変わらないわ」

俺「変わらないものなんて無い!」

蓮「……それじゃ、詳しい人見つけたら声かけていいから。バイバイ」

俺「あ……」

帰っちゃったよ……

仕方ない、一人で探すか


校内に残ってる人で古い放送機材に詳しそうな人、か

生徒には、いないだろうなぁ……

となると、先生か

知ってる先生に聞いてみるかな


まずはウチの担任か生徒指導の岡崎先生だな

そうと決まれば職員室へGO!


俺は一人職員室に入る

俺「失礼しまーす」

岡崎「おう、山本じゃないか。職員室に何の用だ?」

俺「あ、岡崎先生。ちょうど良かった!聞きたいことがあるんです!」

岡崎「なんだ、歴史の事か?」

俺「いえ、まったく……何で歴史なんですか?」

岡崎「あのなぁ、俺は社会科の教師だぞ?専門は日本史だ。覚えておけ」

俺「知りませんでした!体育教師かと思ってました」

岡崎「なんでだよ……」

だってゲームや漫画、アニメで生徒指導の先生って体育教師率高いじゃん?

俺「なんとなく、です。そうじゃなくて、先生って古い機械とか詳しくないかなって」

岡崎「古い機械?機械系はあんまり得意じゃないな」

ッチ、ハズレか

俺「そうですか……詳しそうな先生っていませんかね?」

岡崎「ん~そうだな……機械に詳しいっていうと、古典の福部先生、化学の志熊先生……後は守衛の本多さんなんかが詳しそうだな。ま、知ってる保障は無いがな」

俺「福部先生、志熊先生、守衛の本多さん?ですね」

岡崎「本多さんは生徒と滅多に合わないから知らないだろうな」

俺「……ありがとうございます。とりあえず聞いてみます」

岡崎「もう、問題起こすなよ」

俺「大丈夫ですって!」

一度失った信用はなかなか回復しないな……


よし、気を取り直して誰からあたろうか


A「福部先生」

B「志熊先生」

C「本多さん」


う~ん……

それぞれの先生の居場所ってどこだろう?

職員室にはいないって事は分かってる、だって居たら岡崎先生が呼んでくれるだろうし

という事は……もう帰ったか、どこかの部活の顧問をしてて部室にいるかの二択だ

この学校に文芸部なんてあっただろうか……聞いた事ないな

古典の先生が担当しそうな部活って後なんだろう……

今まで部活に全く興味がなかったから何部が何処にあるの皆目見当もつかない

となると、福部先生は後回しだ


次の候補は化学の志熊先生だ

化学の先生は理科室でコーヒーとか飲んでそう!

うん、コレは理科室に行ってみるのも有りだな!

丁度喉乾いてきたしな


そういえば理科室って人体模型置いてあるのかな?


サクッと移動して理科室の前までやってきた


コンコン

俺「失礼しまーす」

?「なんだい?君は?」

俺「人を探してまして」

?「人探し?ここには私と彼しかいないよ」

そう言った人物は白衣を着ていて親指で人体模型を指した

俺「そう、ですか……」

ハズレだったか……一応志熊先生について聞いてみるか

俺「あのー、化学の志熊先生ってどこにいるか知りませんか?」

?「志熊先生に何か用?」

俺「あ、はい。ちょっと古い機械に詳しい人を探してて」

?「そうかい、それでその古い機械ってのはどんな物なんだ?」

この人グイグイ来るなぁ……志熊先生の居場所だけ聞きたかったんだけど

俺「古い放送機材なんですよ。部室棟の旧放送にある」

?「あぁ~、アレか」

俺「え!?知ってるんですか!?」

?「もちろん、知っているとも」

俺「なら、一緒に来てもらえませんか?」

?「いいよ、その前に自己紹介しておこう」

俺「あ、すいません。俺二年A組」

?「山本大地くんだね」

俺「は、はい」

あ~、この人にも噂が回ってきてるのか

?「君は有名だからね。職員会議でも話題になったよ」

……職 員 会 議?

?「不思議そうな顔をしてるね。何を隠そう、私が化学の志熊先生その人なんだよ」

俺「ファッ!?」

志熊「ふふふ。君中々ノリが良いね。気に入った」

俺「えっと、ありがとうございます」

志熊「今度は旧放送室で何をするつもりなんだい?」

俺「学校の怪談、七不思議の解明です!最近放課後に校内放送でノイズが聞こえるんですよ。その原因は恐らく旧放送室にあるんです」

志熊「へぇ、それでか」

俺「はい。力を貸してください!」

志熊「いいよー」


俺と志熊先生は旧校舎にある旧放送室に向かう




俺「ここです」

志熊「ふむ、随分古そうだね。ま、入ってみようか」

そう言って志熊先生は躊躇いもなく埃まみれの部屋に入っていく

志熊「ふむふむ、なるほど……古いと言ってもそこまで難解な物はないね」

俺「あの、それで……」

志熊「大丈夫、任せなさい。ここを押して、こっちを押せば」

カシャっと四角い何かが機械から吐き出された

志熊「これでいいかな?」

志熊先生が四角い何かを俺に手渡す

俺「ありがとうございます。あの、これって?」

志熊「そうか、知らないのかぁ……これはMDと言って音楽とかを入れておける記録媒体だよ」

俺「これに、音楽を……?」

志熊「これがジェネレーションギャップってものか……」

俺「これが無ければこの機械から音が鳴ることはないんですよね?」

志熊「そう、そのはずだよ」

俺「ありがとうございます」

志熊「いや、大したことはしてないよ。それじゃ、私は自分の巣に帰るよ」

俺「あ、はいっ!……巣?」

それだけ言うと志熊先生は理科室に帰って行った


そしてその日以降あのノイズが聞こえることはなくなった

因みにMDとやらは神崎さんに渡してある

神崎さんが自分で処分すると言ってきたからだ

なんでそんな事を言ったのか分からないが、聞いても答えて貰えないだろう事は分かる

だから、何も聞かずに預けることにした


これにて校内放送の七不思議は解決!!!

めでたしめでたし!!

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