3ー3 人体模型vs俺 種目:廊下ダッシュ

翌日

俺が教室に入ると

机の上に花が供えてあった……

いや、まぁ花瓶は元々このクラスにあるモノだし

生けてある花も菊とかじゃなくて普通の花だから、ただ普段の場所から俺の机に移動されただけなんだけど……

誰がこんな事してんだ?

やっぱり、あの手紙の犯人か?

面倒くさいなぁ

俺は花瓶を定位置に戻す


椅子に画鋲とか貼ってないよな……?

大丈夫そうだな、机の中も何もされてないな

俺「ふぅー……」

なんか、警戒してないといけないって疲れるなぁ


俺「なぁ仁」

仁「あの花瓶の事なら知らないよ?」

俺「そっか、ならいいや」

仁「わるいね」


仁も知らないか……ほんと誰だよ、迷惑だなぁ


そんな事考えてる間に担任が来て朝のSHRショートホームルームが始まった


あ、神崎さんと情報共有しようと思ってたのに……ま、いっか昼休みにしよう

眠り姫の方を見ると

神崎さんと目が合った……あれ?今日は起きてたの?


それから午前の授業が始まり


終わった!


さて、昼休みだ!

神崎さんは机に突っ伏してる……話しかけて大丈夫かな……なんか目が合った時機嫌悪そうだったんだよなぁ

俺「神崎さん」

蓮「なに?」

突っ伏したまま返事が帰ってきた

俺「昨日、聞いた情報を共有しようと思って」

蓮「そう」

俺「えっと、七不思議の内容は動く人体模型だって」

蓮「知ってる」

俺「演劇部の人から聞いたの?」

もぞもぞと動いて否定する

俺「じゃあ他の」

蓮「見たの」

俺「え?」

蓮「私も見たの、人体模型」

俺「えっ!?」

ムクリと顔を上げる神崎さん

蓮「それで?」

俺「あ、ああ。うん。目撃はそれなりにされてるみたいなんだ、でも見たのは一年生ばかりなんだってさ。目撃時間も曜日も規則性はなさそうって事と、共通して目撃したのは部活の時だって言ってたよ」

蓮「そう……」

俺「それで?神崎さんが見たのは人体模型で間違いないの?」

蓮「そう」

俺「てことは昨日聞いた話しは嘘や偽情報じゃないって事か……後はどうやって正体を暴くか、だな」

蓮「なら、待てばいい」

俺「出てくるのを?」

蓮「そう」

俺「わかった!じゃあ放課後一緒に」

蓮「私は眠いからパス」

俺「えぇー、また俺一人……」

蓮「じゃ、おやすみ……」

神崎さんはまた眠ってしまった



しょーがない、放課後一人で張り込みするか

目撃情報的には演劇部の近くが一番確率高いだろうな






〜放課後〜

現在俺は演劇部の練習場近くの廊下で張り込み中である


しかし、来ないなぁ…人体模型


俺「ふわぁーー」

眠いな……

壁に寄りかかって目を瞑る

今日は来ないのかなぁ……


……ん?なんか人の気配が……

目を開けると……




目の前に人体模型の顔があった

俺「ひぃっーーーーー!!」

捕まえる事すら忘れて咄嗟に後ずさろうとするも後ろは壁である

寄りかかってたから当然だ!

足が滑って尻もちを付く

すると人体模型は綺麗なフォームで廊下をダッシュで駆けて行った


…………あっ!追わないと!!

幸い腰が抜けたわけじゃなかったから直ぐに立ち上がれた


よし、歯を食いしばって!

加速装置、オン!

って別に速く走れるわけではないけどね

俺「命を燃やせーーーー!!」

廊下を全力ダッシュで走り人体模型を追いかける


俺の叫び声に驚いて振り向いた人体模型は追われてると知ると更に加速した

速い!なんて速さだ!

しかし、オタクだからって舐めてもらっては困るな!

持久力は無くとも瞬間的な加速なら負けんさ!

これで追いついて……

なにぃ!?まだ速くなる、だと!?

クソッ……これ以上はっ……

残存エネルギー急激に減少、脚部に高負荷…臨界点まで十秒……

もう持たない……

俺「ぜぇぜぇぜぇ……」

クソッ、中二病ブーストでも追いつけないか……

説明しよう!

中二病ブーストとは、自身の内に眠る中二病を呼び覚まし本来以上の能力を発揮するものだ!

副作用として後で思い出して恥ずかしさに悶絶する諸刃の剣なのだ!!


俺の限界を遥かに超えた性能……あれが本当に人体模型のスペックか!?

絶対アスリートかなんかだろ……普段から筋トレとかマラソンとかやってるんじゃないかってレベルだろ、アレ……


しかし、ほんとにいたな……人体模型


疲れたし、今日の所は帰るか……









あぁぁぁぁあぁぁあぁーーーーーーーーー恥ずかしーーーーーーーー!!!


忘れろ!忘れるんだ!!でなければ死んでしまう!










翌日

昨日人体模型と追いかけっこして負けたと神崎さんに報告した

蓮「そう、まぁ当たり前ね」

俺「え?」

蓮「だって私も追いつけなかったもの、君が追いつけるわけないじゃない?私よりスペック低いんだから」

俺「そんな……神崎さんも追いつけないほど速いのか……」

蓮「そうよ」

なら俺が追いつけないのも納得……ってなるかーーーい!!

俺「神崎さんって走れるの!?」

蓮「失礼ね…私足速いよ。普段は疲れるから極力走らないようにしてるけど」

俺「知らなかったよ」

蓮「良かったね、私の事が知れて」

俺「え、ああ、うん。」

蓮「それで、あの人体模型だけど」

俺「ああ、完全に偽物だな。よく出来てはいたけど、あんな綺麗なフォーム

で走る人体模型が居てたまるか」

蓮「そう、ね」

俺「どうする?コレは人為的に作られた怪談だから」

蓮「止めないよ、犯人をとっ捕まえるまでは」

俺「今度は二人で協力して捕まえよう」

蓮「そうね、挟み撃ちにすれば捕まえやすいかもしれないし」

俺「よし、そうと決まったら今日の放課後に」

蓮「いいえ、今日は出ないから明日」

俺「出ない?なんで?」

蓮「今日は演劇部休みなの」

俺「人体模型はやっぱり演劇部に関係してるのか」

蓮「うん。だから、明日の放課後」

俺「捕獲作戦決行だな」

蓮「そういうわけだから、私は寝るから……おやすみ」

パタンと机に突っ伏してそのまま寝てしまった


よし、明日こそ!人体模型を捕まえて正体を暴いてやる!!






放課後、今日は何もすることが無いからそのまま帰ろうと支度する

そんな俺の元にお客が来た

加藤「やっほ、山本くん」

俺「あ、加藤さん。どうしたの?」

加藤「それがね……ちょっとここじゃ話しづらいから部室来てもらっていい?」

俺「ん?ああ、わかった」

なんだろう?教室じゃ話せない内容?


加藤さんに付いて行き、軽音楽部の部室に行く


蒼子「先輩いらっしゃい!」

美久「あ、山本先輩」

俺「お邪魔するよ」

加藤「こっちきて、ここ座って」

言われるがままに席に着く

机が4つくっつけてあり俺が座ったのは右奥で隣は蒼子ちゃん、正面は加藤さんでその隣に美久ちゃんが座る

えっと?凄い場違いな感じがするんだけど、なんで俺招かれたんだ?

加藤「今日、来てもらったのは他でもない」

俺「人体模型の件だな」

加藤「違う違う!」

俺「違う?じゃあ何で?」

加藤「それは、眠り姫との関係についてだよ」

俺「神崎さんとの関係?」

加藤「そう、誰とも会話しようとしなかった彼女とどうやって仲良くなったのか、それと今の関係性について聞きたくてね」

俺「ふむ……仲良くなったのかは分からないけど、話すきっかけは七不思議だな」

加藤「七不思議?それで会話できる様になったの?」

俺「そうだな。教室で話しかけないでって言われたけど、七不思議に関してならちゃんと会話してくれるし」

加藤「ふーん……そうなんだ」

俺「それで、俺と神崎さんの関係だが」

加藤「……」

蒼子「……」

美久「……」

俺「特になんでもない、な」

加藤さんがずっこけた

加藤さんてノリがいいんだな

加藤「えっと、特になんでもない人と七不思議に付いて調べてるの?」

俺「……まぁ、そうだな」

加藤「他になんかあんでしょ?大丈夫誰にも言わないから!」

俺「何度その言葉で煮え湯を飲まされたことか……」

加藤「いや、本当に言わないって!」

美久「大丈夫です!信じてください!」

蒼子「そうです!ただ知りたいだけなんです!」

俺「うーーーーん……本当に誰にも言わない?」

三人揃って首を縦に振る

俺「そうか、じゃあ信じて言うけど……一度告って即フラレた」

加藤「………………なんか、ごめん」

蒼子「………………ごめんなさい」

美久「………………」

俺「でも、俺はまだ諦めてないから!!大丈夫!攻略してみせるさ!」

加藤「攻略?」

俺「あ、いや、恋に落としてみせる!」

加藤「そんなにしてまで付き合いたいの?あの子と」

俺「んーー…わからん!だが、俺は恋をした、でもフラれた、しかしまだ諦めてない、なら試合は終わってない!」

そう!諦めたらそこで試合終了なのだから!

加藤「もしフラれ続けたらどうするの?」

俺「縁起でもない事いうなよ……」

加藤「でも、今の所脈無しでしょ?」

俺「うぐっ、確かにそうだが……」

加藤「もし山本くんに恋した女子がいたらどうするの?それでもあの眠り姫に拘るの?」

俺「ふっ、そんな事はありえない!何故なら俺に告白する女子は十中八九罰ゲームだからDA!」

加藤「どっからそんな悲しい自信が出てくるのよ……」

俺「俺の人生経験から、だな……」

加藤「そう……」

俺「そんな俺には三次元女子と仲良くするなんて思考はなかった……しかし、あの日俺は恋をした。自分でも信じられないけどな」

加藤「そう、わかったわ。話しは以上よ、人体模型の方しっかりね」

俺「おう!今日こそとっ捕まえてやるさ!」


俺は女子と別れ一人で帰路についた

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