2ー4 音楽室のピアノには自動演奏機能は付いてません

翌日、俺は神崎さんに相談することにした

俺「おはよう神崎さん、良い朝だね」

蓮「……はぁ」

俺「どうしたの?何か嫌なことでもあった?」

蓮「今キモい奴に声かけられてる……」

俺かぁーーー!!

俺「えっと、ごめん」

蓮「なんか用あるんでしょ?」

俺「用がなきゃ声かけちゃいけないの?」

蓮「当たり前でしょ」

そこは、そんな事ないよっていう所でしょ!?

何でマジでイヤそうなの!?俺なんか嫌われるような事した!?

俺「ゴホン……実は音楽室のピアノの件で」

蓮「何か分かったの?」

俺「ああ、まず音楽室の窓の近くに完全な死角になる場所があるんだ」

蓮「……死角」

俺「昨日そこで見張ろうとしたら吹奏楽部の部長に邪魔されちゃってさ」

蓮「そう、それで?」

俺「そこにはタバコの吸い殻が落ちててさ」

蓮「ふーん」

俺「その事から推理すると!吹奏楽部の中でタバコを吸っている人がいて、それを隠すために吹奏楽部全員でもみ消しにかかってる!と俺は考えた」

蓮「……推理?それが?」

俺「お、おう」

蓮「くだらない……」

寝ずに考えたのに!?

蓮「そんな推理とも呼べないようなものを聞かせるために私を起こしたの?」

俺「違う、のか?」

蓮「全然違う」

俺「じゃ、じゃあ!真相は!?神崎さんだってホントは分かってないんじゃないの?」

蓮「はぁ…なら今夜確認する」

俺「今夜って、昨日の今日で?」

蓮「そう」

それだけ言って神崎さんはまた眠ってしまった


……え?あれ?神崎さんから誘ってくれたよ!?

いやっほーーー!!




放課後、俺と神崎さんは部室棟に来ていた……そう漫研の部室である


クズ「いきなりお仕掛けてきて説明もなしに居座るとは……恐れ入った!」

俺「俺だって来たくはなかったです」

蓮「じゃあ帰る?」

俺「……いえ、残ります」

蓮「そう」

クズ「だからさ、なんでここに居座ってるの?こっちも締め切り前で忙しいんだけど?」

蓮「お構いなく」

俺「居るぐらい別にいいじゃないですか」

クズ「せめて説明はして!」

俺「説明しよう!我々は時間を潰すためにここにいるのだ!」

クズ「だから何のために時間潰すのさ?それを聞いてるんだけど!」

俺「それを説明する言葉を俺は持たない」

クズ「何なの?バカなの?」

俺「死なねぇよ?」

クズ「ほんと帰ってくんないかな」

俺「断る!」

クズ「はぁ……もういいよ」

俺「よし、勝った」

それから下校時間までただただ時間を潰す

勿論神崎さんは寝ていた

俺は部室に置いてある漫画を適当に呼んで時間を過ごした



全校生徒が下校するギリギリまで部室に居座ることに成功した我々は、活動を開始する


蓮「……う、んーーー」

俺「おはよ、神崎さん」

蓮「そろそろ行く」

俺「了解」

俺と神崎さんが部室を出るとクズ先輩も後を付いてきた

俺「何で付いてくるんですか?」

クズ「こうなったら最後まで見届ける、じゃないと納得いかない」

俺「えーーーー」

蓮「じゃ、行きましょ」

神崎さんと二人っきりじゃないのかよ……空気読めよ!


俺たちは音楽室の方へ向かう

しかし、死角となる場所ではなかった

そこは古い物置の陰で、顔を出すと死角だと思っていた所と音楽室の窓がよく見えた

俺「え?ここからならよく見えんじゃん!部長の奴嘘教えやがったな……」

蓮「違う、彼らにとってあの位置は完全に死角だった」

俺「ん?どういう事?」

クズ「彼らが部活中に使用してる何処の教室からも見えないから、とか?」

蓮「…正解」

俺「ぐぬぬ……」

クズ先輩のクセに!


蓮「……しっ!誰か来た」

俺とクズ先輩は静かに覗き込む、とそこには一人の男子生徒が歩いていた

俺「キョロキョロして怪しいな」

クズ「普段の山本みたい」

俺「流石にあそこまで怪しい動きはしてないぞ」

蓮「……え?」

酷いっ!純粋に疑問を抱いた「え?」だった!

蓮「あ、入った」

俺「え!?音楽室に?」

蓮「近づく」

神崎さんは静かに素早く音楽室から見えない位置に移動する

慌てて俺とクズ先輩も付いて行く


音楽室に近づくと中からピアノの音が聞こえてきた

俺「音楽室のピアノはあいつが弾いてたのか」

蓮「そう」

俺「どうする?乗り込むのか?」

蓮「……その必要はない」

俺「……?必要がない?」

蓮「もうすぐ……」

すると中から慌てた声がした

??「くそっ、見回りの時間変わったのか!?」

ん?なんか最近聞いた声だな……

蓮「窓、押さえて」

俺「閉じ込めるのか、了解!」

開かないように全力を込める

音楽室に侵入していた人物が窓まで来て開けようとするが俺が押さえていて開かない

??「なんで開かないんだ!……ん?あ!?お前!」

窓越しにくぐもった声の人物が俺を見つける

これだけ近ければ聞き間違えることは少ない

そう、声の主は吹奏楽部の部長その人だ

俺「どうも!部長さん!」

部長「クソッ!手ぇ離せよ!!」

俺「やなこった!」

そうこうしている内に見回りの先生が音楽室に入ってきた

先生「ん?そこに誰かいるのか?」

懐中電灯で照らされて部長の顔は先生に見られる

蓮「もういい、逃げるよ」

俺「おう!」

クズ「ちょ、待ってよー」

サッと窓から手を離し撤退する


窓から飛び出そうとした部長は残念ながらギリギリの所で捕まり中に引きずり込まれた



これで、夜に鳴る音楽室のピアノの怪談は解決だな!


と思ったんだけどな……

翌日、俺はまた呼び出しを食らったのだった


岡崎「お前、昨日の夜学校にいたか?」

俺「いえ、帰ってゲームしてました」

岡崎「そうか、やっぱり見間違いか」

俺「なんの話しです?」

岡崎「いや、昨日学校に届け出を出さないで残っていた生徒がお前もいたって言っていてな」

俺「迷惑な話しだ」

岡崎「そうだよな」

俺「もういいですか?授業の準備しないといけないので」

岡崎「いいぞ、ゲームばっかしてないで勉強もするんだぞ」

俺「はーい、善処しまーす」


ふぅーーーーー

危なかったぁーーーー!!

バレてないよな?よし!

コレにて一件落着っと!!

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