2ー1 夜の音楽室から響くピアノ

開かずの教室を開けてから早くも一ヶ月ほどが経とうとしている


今日も神崎蓮は教室で寝ている

それはもうガッツリと熟睡している


俺はというとクラス内でキモい奴から危ない奴にクラスチェンジしていた

まぁ、なんだ……当たり前だよな

使われてないとはいえ学校内のモノを破壊、停学処分を受けたのだ

俺だって普段地味な奴がいきなり器物破損で停学くらったら

アイツヤベーなって思う

それでも仁だけは俺と変わらずに接してくれている

マジでいいやつだよ、お前は……


元々クラス内で会話してくれる奴なんて仁くらいしかいないから……ぶっちゃけ何も変わってないようなものだ


そんな代わり映えの無い学校生活を送っていた俺だが、一つだけ変わった事がある

それは神崎さんと会話するチャンスを虎視眈々と狙っているのだ


開かずの教室を開けた時の事すら、まともに会話できていないのだ

なんで興味無いなんて態度をとったのか、にも関わらずあの時手伝ってくれたのか……学校の七不思議以前に神崎蓮の七不思議を解決したい、今日この頃


俺「はぁ……」


チラっと神崎さんを盗み見ると……奇跡が起きた!!

な、なな、なんと!!目が合ったのだ!!!

うぇっ!?なんで!?何が起きた!?

まさか……神崎さんも俺の事を……?


しかし、瞬きした時には既に机に突っ伏して寝ている神崎さん

デスヨネー

わかってました!わかってましたとも!

はいっ、見間違いですっ、お疲れ様でしたー


俺「はぁ……」


そんな感じで何にも代わり映えのない毎日を過ごす俺の元に

アイツがやってきた……


そうクズ先輩アイツが……!!


クズ「チワー!山本くーんいるー?」

俺「……」

クズ先輩の登場で一瞬にしてクラス内が静かになる


クズ「いるなら返事してー!」


この場合の選択肢は……


A無視する

Bこっそりと教室を抜け出す

C狸寝入りでやり過ごす


Aは……リスクが高いな

Bは……もう手遅れか

ならばっ!


俺「Zzz……」

机に突っ伏して狸寝入り作戦だ!


クズ「いないのーー?」

よし、これでなんとかやり過ごせそうだな

ていうか、他所のクラスの出入り口であんな大声出して恥ずかしさとかないのかよ……?


がたんっ

……誰かが立ち上がった?

まさかっ、俺を起こすつもりか!?

だがそうはいかん!そう簡単に負けてたまるもんか!


蓮「山本くん、起きて」

ゆさゆさ

俺「ん?ああ、おはよ……神崎さん!」

ニッと態とらしく笑顔を向ける

蓮「……」

ジト目も可愛いな!

俺「な、何かな?」

蓮「もしかして、起きてた?」

俺「いや……寝てた、よ?」

蓮「…………そう」

俺「そ、それで?神崎さんから声かけてくれるなんて」

蓮「私もできれば声なんてかけたくなかった」

さいですかー

神崎さんがドアに指差す

正確にはドアの所で佇むクズ先輩のことを、だが

蓮「呼んでる」

俺「そっか、ありがと」

仕方ない!そう!仕方なかったんだ!

だってクラス内で俺から話しかけるの禁止なんだぜ?

だから、話しかけてくれるのずっと待ってたんだ!

これがクズ先輩以外の理由だったら……なんて贅沢だよな


俺「で?なんのようすか?」

クズ「ずいぶんな対応だね」

俺「これが平常運転です」

クズ「さっきはあんな良い笑顔で蓮チャンと話してたのに?」

なんで神崎さんの事下の名前で呼んでるんだ!?ざっけんなよ!クズのくせにっ!

俺「ははは、見間違いです」

蓮「先輩……何か新しい情報が入ったんですか?」

なんで!?なんで神崎さんが俺の背後に!?

クズ「入ったよー、飛び切りのやつが」

蓮「聞かせてください」

ナチュラルに会話してるーーーー!?


クズ「ここじゃなんだから、放課後部室に来て」

蓮「わかりました」

クズ「じゃ、また後でねー」


クズ先輩は何事もなかったように帰っていった


俺「なぁ、クズ先輩と」

蓮「話しかけないで」

神崎さんはそう言って自分の席に着き睡眠の態勢に入る


え?なんで?俺がいない間に……いったい何が?




モヤモヤしたまま放課後が訪れた

神崎さんは直ぐに立ち上がりスタスタと教室を出ていく

と思ったら一度止まってこっちを見る

え?ん?はい?

時間経過と共に俺を見る目が冷たくなっていってるような気がする……

ゾクゾクするなぁ……新しい扉開いちゃいそうだ

しかし見つめ合っても何も解決しない

俺「えっと……神崎さん?」

蓮「はやく」

俺「なにを?」

蓮「部室」

あ!ああ!放課後部室に来いってクズ先輩が言ってたやつか!

俺「あ!今行く!すぐ行く!」

しかし、伝わったと分かると俺を待つ事無く神崎さんは歩き出していた

お、置いてかれる!?

急いで筆記用具とかノートをカバンに突っ込み後を追いかける


しかし、意外にも神崎さんは足が速く既に見える所にはいなかった……

俺は廊下を駆け抜ける!そう風のように!


先生「コラァァ!廊下を走るなぁぁ!!」

ひえぇぇぇ!!生徒指導の岡崎先生だ!逃げないと!捕まったら説教が長い!!


なんとか旧校舎の1階までの間に逃げきった

俺「ぜぇぜぇ……」

駄目だ……少し休まないと……足が動かない……


5分ほど休憩して、なんとか動けるようになるまで回復した

俺「よしっ」

階段を上がり2階の漫研部室へ行く


そこで待ち受けていたのは……

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