違和感

村へ帰ると桃太郎は盛大に迎えられた。村人は喜び、歓喜し、子供たちははしゃぎ回りペタペタと桃太郎をさわっていく。荷台にはたくさんの宝を抱え、村をゆっくり歩きながらジジ、ババのいる家へ帰って行った。


「おおーーー!桃太郎っ!よくぞ無事に帰ってきたな!ほら、ばあさんがおいしいオニギリを作っていたぞ、お腹が空いたろう?食べなさい、食べなさい。」

ジジはしわくちゃの顔をさらにしわくちゃにしながら喜んでいた。


「桃太郎や、よく帰ってきてくれたね、ババはうれしいよ。ぎびだんごは足りたかい?おいしかったかい?」

ババは鬼退治よりきびだんごのことが気になるみたいだ。


「ところで桃太郎や、その大きなワラをかぶった人は誰だい?」

ジジが見上げるようにボクを覗いていた。


「ああ、彼は人間じゃないよ、きびだんごをあげたら仲間になって、一緒に鬼を退治してくれたクマさ」


(クマ、、バケモノの次はクマか、まぁ、鬼よりはマシか、、、)


そう桃太郎が言うと、ジジはまた顔をしわくちゃにしながら「ありがとう、ありがとう」と何度もつぶやいていた。ボクはジジ、ババの顔が見れて嬉しかった。ボクが桃太郎だったときに育ててくれたジジとババだ。呼び方も同じ、しわくちゃに笑う顔も同じ、おいしいきびだんごをいつも作ってくれる料理も同じだった。


ただ、同じなのはこれだけだった。


村の人も、まわりの人も、子供たちもみんな知らない顔だった、建物だった。ジジ、ババだけがまったく同じ、それ以外はまったく違う。そしてボクは『鬼』このアンバランスすぎる状況にボクは吐き気がして、そのまま倒れるように寝てしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る