突然の来訪者
現実は飲み込めないが、ボクの身体的状況はわかった。まずはこの宴の勢いに流されながら現状を整理しよう。
まずは記憶
ボクはババに川で拾われた。そして桃から生まれたから桃太郎と名付けられた。そのあと村で育ち、鬼たちが村の宝を奪っていると聞いた。体も大きくなり力もついたので、宝を奪い返すために鬼退治に行こうと決めた。道中いぬ、さる、キジに出会い、ババに作ってもらったきびだんごをあげたら鬼退治についてきてくれた。
そこでみんなで鬼を倒して、宝を返してもらい村に戻った。そして平和が訪れボクは村の人たちと楽しく暮らしていた。
やっぱり間違っていない。ボクは鬼ヶ島に行き鬼を倒して宝を持ち帰った。鬼ヶ島にはもう鬼がいないはずだ。
ただ、一つだけ気になることは、ここがボクの記憶の中にある鬼ヶ島ではないということだ。記憶をたどると鬼たちはこんなに天井が低く、狭い洞窟の中にいたのではなく、もっと広場のように吹き抜けた空間だった。
また、倒したはずであろう鬼たちの数が違う
ボクたちが倒した鬼はせいぜい10匹くらいだった。ここには30匹くらいウジャウジャいる。
状況がわからない、、、
ドカンッ!!
突然、宴の楽しそうな雰囲気を一瞬で覚ますような鈍く、大きな破裂音が響いた。
その瞬間、洞窟の奥から鬼たちの叫び声が聞こえる。
「グェ、誰だお前はっ!」
「ギャッ!」
「グゥゥゥゥ、、」
鈍い鬼たちの断末魔が洞窟内に響き渡る。遠くから犬、サル、、、、あとは鳥だろうか?動物たちのどう猛な鳴き声が聞こえる。
混乱した鬼たちは狭い洞窟内を動き回り、大きな体を揺り動かしながらドスン、ドスンと洞窟の外へ走っていく。
だが、狭い洞窟の中では大きな体は弱点となり、あっという間に出口がつまり鈍い断末魔だけが聞こえてきた。しばらく鬼の怒号と獣の威嚇が響きわたり、やがて静かになった。
ボクはこの先を知っている。
ボクはこれから歩いてくる彼が誰だか知っている。
鬼の体だが、心は冷静で、洞窟の奥からゆっくり歩いてくる人間を目にした。
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