第52話 惡啞(アクア)
「幸か不幸か、ARKは『ユニット』とデカンの素体を入手したわけよね」
ビクニは地下の保管室で回収された『
『
「ですが…腐敗というか、まぁ損傷が激しく、大したデータは取れないかと思います」
「仕方ないわ、『ユニット』は?」
「もともと使い捨ての兵器ですから、こちらも…」
「そう…まぁ、こんなもの使い道はないけどね」
「それでもNOAの技術レベルを推測するに足る素材ですよ」
「あぁ、それだけど…こんな廃棄物より、いい状態で手に入るかもしれないわよ」
「どういうことですか?」
「フフフ、楽しみにしていなさい、あなた達、研究者に退屈はさせないわ」
保管室を出て、ユキの部屋へ向かうビクニ
(問題はコッチ側よね…)
IDカードでユキの部屋へ入る。
ベッドではユキが点滴をされ、眠っている。
「薬が効いているようね」
ユキの手首を持ち上げてプラプラと軽く振ってみる。
自然に眠っているわけではない、薬で強制的に意識を閉ざされているのだ。
「夜叉丸、ご主人様が心配?」
ベッドの脇でビクニを
もちろん返事など期待してない。
「心配よね、あなたの息子ですものね、安心してね、大事に育てるわ、そういう約束ですものね、私が約束をあまり破ったことはないでしょ」
内線で医療班に繋ぎ、ユキを目覚めさせるように指示して、部屋を出る。
「そろそろ時間ね…お客様の相手をしなくちゃ」
ロビーへ降りると、すでに来客は到着していた。
武装された兵士が6名、来客を拘束している。
「ごめんなさいね、なんせね…わかるでしょ、一応、警戒しているのよ」
「理解はしています、本来、頼める立場じゃないことも…」
「悪気はないのよ、大事に扱うつもりよ…私はね…フフフ」
ビクニが薄く笑う。
(扱う…か…モノ扱い、いやモルモットか…)
「彼の世話も頼めるわよね」
そこには車いすに座らされた両足のない
「あらあら、足が無いから斜めにしていると、車いすだと落ちちゃいそうね」
ビクニが無言で首を横にクイッと逸らした。
「彼は、ウチの医療班に預けるわ…化学班も同行させるから、死ぬことはないわ…」
「安心してね…とでも言いたげね」
「フフフ…死ぬことはね…ないわよ、絶対に」
クスッと笑ってビクニは言葉を続けた。
「アナタ達の姿を見れば、まぁ大体、何があったかは想像できるわ飼い主に噛みついて縄を千切って逃げてきたってとこかしら?」
「反論はしないわ、別に保護を求めているわけでもない」
「へぇー、何しに来たの? 危険を冒してまでARKの庭へ転がり込むなんて、ちょっと理解できないわ」
「モルモットになる気はない、ユキという少年に会わせてほしい」
「ユキに?」
「
「何のために?」
「さぁ? そこまでは…」
「呆れたわね、なんだか解らないけどココに来たの? 『
「確かにね…でも
「頼れ…ねぇ」
(
「いいわ…少し考えさせて頂戴、どのみち、『
「そう…
「えぇ…死んだわ…迷惑よね、他人の庭に入り込んで、暴れて死ぬなんて」
(ホント、『
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