第26話 絵奏楽(エゾラ)

「しかし…リボルバーってのは…」

 キリコが不満そうに口を開く

「その威力を最大限に発揮させるためにはリボルバーが最適だと判断したの、もちろんアナタの腕なら外さないという前提があるけど」

「まぁ…外しはしないけどさ」

 キリコは満更でもないような笑みを浮かべた。

「数撃ちゃ当たるなんて思うなよ、貴重なんだ弾もな」

「あっ? テメェの玉を撃ち抜いてやろうか」

 ケンが下腹部を押さえる。

「そんなくだらないモノを撃たないで頂戴…頼むから」

 キリコが呆れたような口調でキリコをなだめる。

「くだらないって…」

 ケンが下を向く

「くだらないモノだってよ、アハハハ」

 カイトが先ほどの仕返しとばかりに大袈裟に笑う。


「話を戻すわよ、2人共…預ける武器は伝説の神具と何ら遜色のないオーバーテクノロジーよ…扱いには気を付けて頂戴」

 キリコが真面目な顔で2人に言い聞かせる。

「私も、オリハルコン製の小太刀を二振り預かったわ、そしてユキ…あなたには」

「僕には?」

「コレを…」

 ビクニが足元に置いてあった銀色のスーツケースを僕に差し出した。

「開けてごらんなさい」

 ユキがパチンとロックを外すと、白い和服がたたまれていた。

「コレは?」

「着物、袴、水干すいかん…すべてオリハルコンで織られているわ、そして太刀を一振り、これは…私達も禁忌として封印してあった太刀…材質は不明、錆びず欠けず、ただ鞘から抜く際に所有者の親指を傷つけるように仕掛けが施してある」

「……いらないよ」

「いい、この太刀は所有者の血を吸うことで霊力を帯びる、妖刀を超えた魔神器とも呼べる太刀、霊力を帯びた刀身は稲妻を呼び岩をも絶つとも言われているの」

「胡散臭い話しだね…」

「ユキ、抜いてみろよ」

 カイトが興味ありそうにそそのかす。

「嫌だよ…怪我するんだよ」

「致命傷ってことは無いでしょ、抜きなさいよ」

 キリコも煽ってくる。

「嫌だ…」

「そうね、軽々しく抜かないことね、怪我はともかく…所有者は皆、長生きはしてないわ」

 カイトもキリコも嘘だろ?といった顔でビクニを見ている。

「そんなモノを僕に?」

「そうよ、霊力の低い者には抜けずに血を吸われるだけだから…アナタが適任なの」

「そうさ、その太刀のデータを収集するにはキミが一番の被験体さ」

 ケンが明るく言う。

「大事にはされてないんだな…」

 カイトが同情するかのような視線でユキに言葉をかける。

「なに言ってるの、大事な封魔師なのよ、大事だからこそオリハルコンの式装束をこしらえたのよ」

 ビクニが語気を荒げる。

「ユキ、アンタ、早いトコ封魔できないと給料から引かれ出すわよ…絶対に」

 キリコが心配そうにユキに視線を向ける。


「まぁ、装備も一新されたし、今後はデカンに遭遇しても善戦なんて必要はないわ、全力で仕留めにいきなさい」

 ビクニが机を両手バンッと叩きながら鼓舞する。

(仕留めに…殺せということか…)

 ユキは少し、ビクニという女が…それ以上に、このARKという組織におそれを感じていた。


 なんのために、こんなゲーム紛いの武具を所持しているのか?


「さぁ、本題に戻すわよ…デカン、ピスケス魚座・メスキータの遺体から得られた現段階の情報を話すわ」

「まず、覚えておきなさい、彼らは妖魔遺伝子を接着剤のように使い、地球上の生物の遺伝子を合成された人工の妖魔、どんな生物とも交配し遺伝子を摂り込む性質を乱暴ともいえる方法で機能させている、その反動も大きいでしょうね」


 ビクニの話では、きっとデカンとして歩き出すまでには何百人もの犠牲があったはず、驚くべきは…

「メスキータの身体は機能してない…けれど一部の細胞は未だに活動を停止していない」

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