第20話 傲性(ゴウセイ)
NOAロス本社ビル、会議室を出たヴァリニャーノ
(人形遊びか…)
自分もその人形の1体だと言い聞かせただけ。
本社ビルの地下にある『宝瓶宮』と書かれた部屋。
自分が産まれた部屋。
子宮とも呼べる場所に足は向いていた。
扉の前に立ち、右手を認識する機械の中に入れる、血液を採取されDNA認識で承認されると扉が開く。
網膜、指紋、そしてDNAの3つが認証されないと扉は開かない。
「久しぶりだねロメンソメシア」
『
巨大な水槽に浮かぶ意思を持たない女性、それがロメンソメシアだ。
意思も意識もない。
彼女の役割は、妖魔と人間の遺伝子合成の繋ぎをおこなうこと、素材を砕き混ぜ合わせる。
通称『ミキサー』と呼ばれている。
自らの遺伝子と妖魔化した人間の遺伝子を繋ぎ合わせて、デカンを産み出した母体とも言える存在。
幼体を宿さないが、妖魔に近しい存在、人口妖魔、それがデカンだ。
そんな技術を可能にしているのが『フロフキ』と呼ばれる日本に存在する不老不死の秘薬として徐福が用いた植物。
フロフキは大変希少で人口での栽培ができないとされている。
仮説ではあるが、フロフキは遥か昔、ダレカが持ち込んだ異界の植物とも言われている。
徐福はフロフキを用いて不老不死の秘薬を作ったと言われているが、いまだNOAはその秘薬の精製に成功していない。
妖魔遺伝子を持つ妖魔、あるいは妖戒とフロフキが不老不死の精製に大きく関わるとNOAは考えている。
その副産物がデカンである。
特殊能力を用いて妖魔、あるいは現存しているのであれば妖戒を捕獲すること、それがデカンの役割でもある。
そのうちの1体が、事も在ろうに同じようにフロフキを研究し、妖魔を狩るARKに渡ってしまった。
事は大きい問題なのだ。
その手引きをしたのが、ヴァリニャーノ…同じデカンだとしたら、それはデカン達すべての存在意義を覆すような裏切りなのだ。
生かされている異形の生体兵器『デカン』
それはNOAの技術の結晶でもある。
ARKがオカルトを科学に利用するのだとしたらNOAは科学にオカルトを混ぜているのだ。
似て非なる存在。
NOA目的は『選民による統制された世界』である。
不死なる選民が、必要な数を統治し人口を抑制し環境的にも地球を維持し続けることが人類、そして地球の救済だと考えている。
その頂点が『
「増えすぎ…環境を汚染するだけの無秩序な世界に完全なる統治を」
その考えに賛同、あるいは自らの不老不死を求めて資金の援助は絶えない。
個人から国家レベルに及ぶスポンサーに支えられた多国籍企業NOA
スポンサーへ、その恩恵は計り知れない。
失われた四肢を与え、難病を治療する。
現代の医学ではおよそ到達し得ないレベルの治療を受けられるのだ。
紛争に置いては、私設の傭兵を送り込み、戦況を一変させることもある。
用いる兵器だけでも常識知らずだが…その兵士はデカンにより得られたデータから遺伝子レベルで強化された兵士達、身体の一部を機械化された『マシンナーズ』と呼ばれたサイボーグ、遺伝子操作により特殊能力を与えられた『デザイナーズ』を中心に専門の訓練を受けた兵士で構成された私兵。
独善的な思想に基づく『拙く幼い善意』から始まった巨大組織、それが『NOA』である。
知的好奇心の赴くままに倫理の壁を崩壊し、与えられる資金、資材を湯水のように使う。
それは人が人に行う行為とは思えない狂気の世界。
失敗してもいい。
何人犠牲にしても問題はない。
戦場には捨てられる命が無数にあり、飢餓に喘ぐ国には命がチョコレートより安く買えるのだから…
自分もその狂気から産まれた独りだと、ココに来ると思いだす。
「行くか…」
ヴァリニャーノは、『宝瓶宮』を出てメキシコへ向かった。
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