第19話 龍神池(リュウジンイケ)
「この世界には、異界の住人が残した遺跡、異物が数多く存在する」
ビクニがケンに指示してモニターに映したもの
「妖戒が最初に現れたのは、この京都…この場所だった」
モニターにはARK本社ビル…ユキが寝泊まりしている宿舎が映し出されている。
「どういうことです」
ユキがビクニに聞いた。
「この場所には、彼らが残した遺跡が残っていた」
「遺跡…」
「私達は『ミラー』と呼んでいるわ」
「ミラー…鏡ですか?」
「そう…反射率99.999999999…%ほぼ100%、人間には造りだせない技術で造られた鏡、魔鏡ね」
「魔鏡…」
「彼らはこのミラーを起動源として次元を超えてきた来訪者なのよ」
次元の隙間からヌッと現れるわけではない。
憶測混じりではあるがミラーに反射して映る世界は、ある条件下において質量を持った状態でコピーされ、ミラーを出入り口としてコピー世界へ移動できる。
これは並行世界と呼ばれている別世界。
並行世界は同時に同じ時間軸に無数に枝分かれし独自の歴史を形成し始める。
時に消滅し、時に合併され、それはシャボンの泡のように大小様々な世界が重なり合って現れては膨らみ、弾け、一つになりながら歪な宇宙を造り続けていく。
「この世界もそのひとつなのさ」
ケンが2個めのカップ蕎麦を開封しながらユキに話しかける。
「妖戒は、そこを自由に行き来できる?」
「自由にというのは間違いね、ある条件下において繋がることを知っているだけ」
妖戒は、ミラーを通じて異世界を渡りながら個体進化を繰り返す生物。
「で…メス型とは?」
妖戒の99.9%は雄型である。
0.1%の確率で進化した突然変異種『
雄型の幼体を宿しながら、男性として産まれた妖魔遺伝子ホルダー。
肉体の変化を促し覚醒するのが
「あなたの家系は、代々
「僕の家系…」
「そう、
寄生された胎児は性別に関係なく、強い霊力を持っている。
『朝倉』の家は、その初代が陰陽師として朝廷に仕え、守護霊獣『白虎』を与えられた。
「それが…夜叉丸…」
「そういうことね」
「妖魔を見ると、妙に心が高揚しない?ユキ」
「高揚というか…妙に落ち着かない気分になります」
好戦的になるというほうがいいのだろう。
「どういうことです? 僕は妖魔を…人を食うということですか?」
「そうなる
「僕が…人を食う…」
霊獣が妖魔を見ると暴れるのは捕食したい宿主の衝動、本能の現れだ。
霊獣は宿主の衝動にダイレクトに反応する。
逆に言えば、宿主が衝動な行動を抑えることができれば霊獣は制御できる。
ゆえに幼体(コア)を抜き取ることが可能になる。
宿主の中で覚醒した幼体は身体中を這いずり、自らのシナプスを張り巡らせていく
と同時に身体の変異を促していく。
その速度は脅威的で、とても外科手術などでは間に合わない。
変異箇所を切断しても、コアを抜き取らない限り、妖魔化は止まらない。
妖魔化し変異した個所は戻せない。
仮に抜き取っても殺傷処分しなければならない場合も少なくない。
「もうひとつだけ…」
ユキが下を向いたままビクニに尋ねた。
「デカン…僕はアイツ達を前にすると…」
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