第17話 目死(モクシ)

「あれ? 逆さまか…」

 相良が何枚かの写真を眺めている。

「暗すぎてさ…何がなんだか解んないよ、コレじゃさ」

 花田に写真をポイッと投げ返す。

「相良さん…もうちょっと真面目に仕事してもらえませんか?」

「あのね…いつから俺は、こんな怪奇事件担当になったんだ?」

「警視庁に特殊捜査班でもできれば納得しますか?」

「特殊捜査班はあるだろう…俺は、そんな辞令は請けた覚えはない」

「あるんですか?特殊捜査班」

「知らんのかい…ただオカルトは警視庁では扱わんぞ」

「まぁいいじゃないですか、相良さん特別捜査官じゃないですか」

「閑職へ左遷って言うんだよ…ソレをさ一般企業だとね」

「考えようですよ、お給料は変わらず自由に生きていけるんですよ羨ましい」

「羨ましい? キミも同じ立場と思うんだけどね」

「そうなんですか?」

「幸せだな…キミみたいな性格だとさ」

「私もね、あっバカにされてるんだなって時は解るんですよ」

「あ~そうかい…で…コレをどうしろっての?」

「いや、コレがですね、なんか村で確認された怪物だそうなんです」

「怪物? 腐らない死体と関係が?」

「あるかもしれませんよ…なにせ怪物ですから」

「こんなさ~フラッシュもたかないで撮影した動画の切り抜き渡されてもさ、何も解らないよ」

「ココが…目じゃないですか?」

 花田が写真を指さす。

「それが目だとしても…だから何なんだよ、大体、この映像の出元は何処なんだよ?」

「病院です。地方の総合病院、ソコの監視カメラの映像です」

「病院? 防犯カメラがこんなに画質悪いの? メーカー責任なんじゃないの?」

「コレ…相当早かったらしいんですよ」

「早い?」

「はい、こうシュッと横切ったらしいんですよ」

「走ってたの?」

「いえ…走るとかの速度じゃないんですよ、動物でいうとチーターより早いらしいんです」

「はぁ? そもそもなんで病院なんだい?」

「それが、入院患者が行方不明なんだそうで…何らかの事情を知っているものとして…」

「知ってるも何も…その人なんじゃないの?」

「その人なんですよ」

「違った方が何でってなるような話だよね」

「いやぁ…まぁそんなわけで事情聴取に向かえとのお達しがきたんですよ」

「だからさぁ…俺が、いつ怪奇事案担当になったんだよ」

「アレですよ、例の腐らない遺体の件からですよ」

「運の尽きってヤツかな~」

「聞きたいんですけど…変わった死体と変わった生き物…どっちがいいですか?」

「どっちもゴメンだよ」

 言いつつも、資料に目を通す相良。

「低体温で来院、そのまま入院からの…2日後行方不明…身体に発疹無数にあり、感染を警戒して集中治療室へ、皮膚が壊死している箇所があり…体温34.8度? 死んでたんじゃないの?」

「意識は、あったそうです」

「はぁ~腐らない死体だけで頭痛いのに…腐った怪物を追うことになるとはね…皮肉なもんだねどうも…」

「明日、新幹線で移動しますよ、相良さん」

「なんでキミはノリノリなんだい?」

「怪物とか怪獣とか好きなんです」

「警視庁にXFileは無いと思うんだがな~」

「創りましょう」

「キミは頑張ってFBIにでも志願してみたらどうだい?」

「いやぁ~英語がちょっと…TOEIC、430点だったんですよ…」

「そりゃ難儀な結果だね」

「マクドナルドが聞き取れなかったときマジか? って思いましたよ」

「あれだけCMで聞いてるのにな」

「そうなんですよ、アタシ昨日も食べたんですよグラコロ」

「グラタンコロッケ…バーガーか、素材は全部小麦粉だよな」

「そう考えると…料理って偉大な文化ですよね」

「そうだな…人間の知恵ってヤツだな」

「感謝しなきゃですね、素材のまま食べるなんて動物じゃないですか」

(その知恵が人間を幸せにしてるのかね~本当に…俺、疑問だな…そのあたり)

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