決着!

 何もない、真っ暗な空間に人影が二つある。


 一人はカミュなのは分かる。


 もう一人は、リキだ。リ・ッキはリキになっていた。



 ならば、オレも?

 オレは、自分の顔や身体に触れてみた。

 やはりだ。

 樺島かばしま 尊毘とうたすの身体になっている。

 魂だけの存在になったからだろうか。


 リキとカミュが手四つの状態に。


 しかし、カミュの方が力負けしてしまう。


 リキはカミュの背後に回り、腕でカミュの首を締め上げる。


「キミは、トウタス?」


「ああ、そうだ」

 カミュの問いかけを肯定し、リキの方を向く。


「リキ、親分に近づくんじゃねえ!」

 奇しくも、転生前の状態が再現された。


「あの時も、こんな感じやったのう、トウタスよ」

「リキ、てめえ!」


 気が抜けない。

 少しでも気を抜くと、オレまで虚無に吸い込まれてしまいそうになる。


 しかも、リキにカミュを人質に取られ、身動きが取れない。


「ボクの父を殺したのは、さっきの」


「せや。ワシは相手の魂を抜き取れるんや。相手の強さなんぞ関係ない。そうやって自分のパワーにできるんや。生きてるヤツ相手に使うには、膨大な力を使う。いわば最後の手段や。警戒されたら対策されてまうしな」


 あのとき、カミュは完全に油断していた。

 そこを突かれたのだろう。


「ごめん、トウタス。ここはいい。逃げるんだ。ボクは生きていったって、どうせ処刑されてしまうんだ。リ・ッキを倒してしまえれば、ボクはいつ死んだって」


「バカ野郎! 一生ついて行くって、さっき約束しただろうが! オレは、死ぬときだって前のめりだぜ!」


 鼻で笑い、リキが話の腰を折る。

「感動的なセリフやのう。全身が痒くなってきたで」


「テメエは黙ってろ!」


「威勢はええけど、どうする気や? 組長の時みたいにはいかへんで。この身体に戻っても、まだ身体から痛みが取れへん! この辛さを、カーミラにも共有したる!」


 リキが、空いている方の腕を上げた。

 カミュの胸に、手刀を突き刺そうとする。


「この空間内で死んでまえ。カーミラ・カルンスタイン!」

 リキが、腕を振り下ろす。


 だが、カミュの胸に刺さることはなかった。


 リキの腕は、カミュの胸板を貫くどころか、逆にへし折れてしまったのである。


「いったああああああ!」

 リキが、カミュを手放した。


 そのスキにカミュが逃げ出す。オレの元へ飛んだ。


「こっちだ、カミュ!」

 オレは素早く、カミュを抱き留める。


「なんでや! なんでやあああ!」


「ジンギ 剛鬼ビシャモン、フルパワーッ!」

 オレはありったけの魂を燃やし、リキを殴り飛ばした。


 ビシャモン天の加護を受けたフックを食らい、リキのアゴが砕ける。


 同時に、シールドを球の形状に展開した。そこへリキを閉じ込める。


 ラストにフタをして、ジ・エンドだ。


「カミュ、とどめだ」

「うん」

 カミュは、リキを閉じ込めた亀甲羅のボールにケンカキックを浴びせた。


「そんなくらいで! はあ!?」


 いずこから現れた謎の人影が、リキの背後に回る。影はリキを羽交い締めに。

 


「くそがああああ!」

 人影と共に、リキの身体が空間に飲まれていく。

 空間の圧力に潰され、リキの周辺を覆っていたバリアが破れた。

 リキの身体を巻き込んで。


 闇に落ちていくリ・ッキを確認し、空間に背を向ける。


「キャンデロロ男爵が、最期に手伝ってくれた」

「ああ、そうだな」

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