バ美肉異世界転生ゾンビ夜叉おじさん

「ザコは任せろ、トウタス。キミはリ・ッキを!」

「タマミちゃんは、私たちが守ります!」

 カミュとセェレが、モンスターの群れを引き受けてくれた。


「頼んだぜ二人とも」

 行く手を阻むモンスターを切り捨て、リ・ッキと対峙する。

「一騎打ちと行こうぜ。リキ。勝った方が、どちらも手に入れる!」


「ええやろう!」

 ふてくされていたリ・ッキが、息を吹き返す。

 覆っていた瘴気が膨れあがり、リ・ッキの体内に吸収された。

 あのときと、キャンデロロと最初に対決した時と同じように。


「勝てると思ってんのとちゃうか?」

 中国拳法のような構えを、リ・ッキが取る。


「だったら、どうだってんだ?」

 対して、オレは空手の型を構えた。


「身の程知らずってヤツじゃ!」

 体格差は数倍。組み付かれたら逃げられるだろうか。


 足払いが飛んできた。デカい図体でよくやる。


 跳躍したところに、フックを合わせられた。

 無理な体勢ながら、大砲のような拳を放ってくる。

 

 剛鬼ビシャモンを展開し、リーチを伸ばす。

 リ・ッキの顔面にキックを入れた。後ろへと蹴り飛ばし、フックから逃れる。


 大丈夫、この間の時のようにガス欠はしていない。まだやれる。


 リ・ッキと手四つになった。力比べなら負けないと踏んだのだろう。

 だが、オレは力負けしない。


「この間とは段違いや。なんやこいつの力は?」

「これがビシャモン天の真の力だ」

「ビシャモン天の、力やと? そうか。マジモンの夜叉ヤクシャになったんか」


「ヤクシャじゃねえ。オレは、夜叉ヤクザだ!」


 リ・ッキを蹴り飛ばす。


 後ろにあった財宝の山に、リ・ッキの身体が突っ込んだ。


「バ美肉異世界転生ゾンビヤクシャおじさんを、なめんなよ!」

 亡霊銀のドスを抜く。英雄たちの雄叫びが鬼火を作り出す。


「ぬううん!」

 狙うは、リ・ッキの首だ。


 財宝の中から、リ・ッキが腕を勢いよく突き出す。

 オレの放った横一文字は、強烈な衝撃によって弾かれた。


「なんだ、ミ・スリラーを弾くなんて」

 だが、あんな武装をされては、防がれるのもうなずける。


 リ・ッキの太い手には、赤黒い魔剣が握られていた。キャンデロロ男爵の背丈ほど長く、刀身の幅も広い。柄には血管の様な機関があり、脈打っている。まるで武器が呼吸しているかのよう。リ・ッキの瘴気を吸って、より凶悪さを増しているらしい。


 また、メシュラで襲ってきた魔剣の類いか?


「これは三〇〇〇年前に滅びた地下帝国に眠っとった魔剣や。王さんの棺と一緒に納められとったんをワシが掘り起こしたんじゃ」


 そうか、リ・ッキは、珍品コレクターだった。

 強力な武具を集めていても、不思議ではない。


「剣だけやないで。ここにある装備や貴重品類は、相当な魔力や瘴気を溜め込んどる。これだけの魔力があれば、邪神様も満足しはるやろう! 邪神の復活も間近や!」


 背後にある献上品の由来を、リ・ッキが自慢げに語る。

 全ては、邪神を復活させる触媒として集められた品物らしい。


「そんなことの為に。人を大勢殺したのか!」

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