トウタス、死す?

 三角錐の顔が、横に割れた。

 その姿は、まるで猛獣である。牙のようなモノが生えていた。

 シールドの先端には、爪のような武器が生えている。


「暴走!」


 聖女セェレが、モーニングスターで応戦するが、相手の攻撃を防ぐだけで精一杯だ。


 ジャガンナートの鎧を一部、モーニングスターが削る。


 そこで、オレたちは信じられないモノを見た。


 何もないはずの鎧から、血が噴き出しているのだ。


「出血した?」


「そうか、あの鎧は生きていたんだ。亡霊の部分は宝玉の部分だけ。まさか鎧自体が、一つの生命体だったとはね」


 アンデッドじゃないから、セェレの攻撃も効かなかったのか。


「あいつは、宝玉を守る役目を担っていたんだろう。宝玉が何を意味するのかは、分からないけれど。役割を終えて、好き勝手に暴れている」


「もう喋るな。傷は浅いぜ。じっとしてろ」


「そうはいかない。セェレを助けなきゃ。タマミちゃんも」


「大丈夫だ。オレに任せろ」

 カミュを寝かせ、オレは戦場へ突撃した。 剛毅ビシャモンを発動し、セェレを庇う。


「すまんセェレ、カミュを頼む!」

「はい!」

 返事を返し、セェレはモーニングスターを回転させる。完全に防御体勢になり、カミュの前に立つ。


「お待たせしたな。覚悟しな!」


 ジャガンナートの爪を、ビシャモンのシールドで防いだ。


 が、敵の爪は、オレの防御を簡単に切り裂いた。


 続いて、反対側の拳が、オレの顔面をとらえる。


 あまりの出来事に、ガードが間に合わず、オレはパンチに対応できなかった。地面に倒れ込む。


 馬乗りになって、ジャガンナートはオレに何度も拳を浴びせてきた。


「トウタス!」

 悲鳴にも似たカミュの叫びが、聞こえる。


 だが、オレは反応することもできなかった。


 ジャガンナートはセェレから鉄球を浴びせられても、攻撃を止めない。


 ここまで、なのか? オレは。タマミを助けられず。


『ダメージが許容量をオーバー。剛毅ビシャモンのレベルが、アップグレードされました』


 また、あの声だ。ゲーム音声ってヤツか?


『これにより、一定時間、契約した神の声を聞くことができます』


 なんだと?


 気がつけば、オレは何もない空間で寝転んでいた。


 ジャガンナートの姿も消えている。


 身体を起こそうとした。


 しかし、どこも動かせない。

 

 ダメージが蓄積しているようだ。


『正式に契約せよ、樺島かばしま 尊毘とうたすよ』


 寝転んでいるオレを、誰かが覗き込んでいる。

 ぼんやりとした陽炎のように揺らめき、原型は分からない。

 ただ、凄まじい魔力の持ち主なのは感じた。

 彼を見ているだけで活力が湧いてくる。


「だれだ、あんたは?」


『ヒトは我をこう呼ぶ。ビシャモン天と』


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