世界一カッコいいガイコツ

 異教の神々が舞い降りてきて、グールの排除に取りかかっていた。

 さすがに顕現するには力が足りないのか、現れるのはほんの一瞬である。

 とはいえ、神たちが齎す奇跡の効果は絶大だった。


 六本の腕を持つ巨大な神が、グールを右の鼻の穴で吸い込んでいく。

 穢れが浄化されたのか、左の穴から清々しい顔の人々が出てきた。ゆっくりと地面に降り立つ。


 他の神々も、壊れた家々を直し、瀕死の人間を癒やす。

 元通りとはいかなくても、八割方は修復を終える。


 一団を先導しているのは、なんとサティである。

 どこへ行ったのかと思えば。


「サティ、何があったの?」

 不思議そうな顔で、カミュがサティに問いかけた。


「知り合いの神共を、片っ端から呼び出しました。絶大な魔力を消耗しましたが、今が使い時である、と思いまして。神の指令とあらばと、信者たちも来た、というだけのこと」


「どうして、神様に知り合いがいるの?」


「はあ。あのですねぇ、我が主」

 更なるカミュの質問に、サティは呆れたようにため息をつく。

 上司を上司と思わぬ態度だ。サティらしいが。


「皆さんは、ひとつ忘れてはいませんか?」

 サティは、人さし指を一つ立てる。



「私はこれでも、神なんですよ」



 なにこのカッコいいガイコツ。


 コイツがカミュに敬意を払わない理由は、自分の方が偉いからか。

 神と言っても「死神」だが。

 とはいえ、神様ならば、神様の知り合いがいても不思議ではない。


「でも、王都と対立している神までが、集まってきているね」

「それだけ、キャンデロロ、つまりリ・ッキに不信感を抱くモノが多かったわけです」


 リ・ッキが仕切っている悪党共を、オレが根こそぎ始末したことで、キャンデロロの組織が弱体化したのが原因だそうである。


「ノーライフキングは、敵を作りすぎました。彼はもはや、誰からも支持されていません。孤立した怨敵を今こそ始末しようではありませんか!」

 腕を高々と上げて、サティが一団を鼓舞した。


 地震のような歓声が沸き立つ。


「しかして、ヘルヴァ王女よ。退屈しのぎはお済みですかな」


 全身を潰され、地べたに這いつくばっているヘルヴァを、頭上から見下ろす。

 これ以上ない屈辱だ。


「王女、滅した国の姫の霊ともあろうお方が、こんな茶番にお付き合いなさるとは」


「邪神のせいよ! 全部邪神が仕組んだこと! ワタクシの復活も、無理矢理ですもの!」

 サティを見上げながら、ヘルヴァが吐き捨てる。


「リ・ッキのせいで、我々ライニンガーがどんな目に遭ったか分かって!?」

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