命あるもの、亡きもの
「ちょっと待てよ! なんでカミュが犯罪者にならなきゃいけねえんだ!」
「彼が、魔王カルンスタインの一粒種であると、容疑が掛かっているからだ。不本意ながら」
苦々しい顔で、カルンスタイン騎士長は話す。
「我々だって、見ず知らずの人間に容疑なんぞかけたくないさ。しかし、王国の中枢はうるさくてな。不安要素は排除したいんだという」
この期に及んで、保身かよ。
「貴君らの不満は分かる! しかし、隣国はカーミラの存在を認めているわけではないのだ。いつか、自分たちを脅かすのではないかと」
なるほど、隣国の顔色を伺って、オレらを人身御供にしようと。
「テメエら、ふっざけんな」
カミュを庇うように、オレは前に立った。
後ろからカミュがオレをどかそうとする。
だが、オレは下がらない。
「オレら命亡き者が、命賭けてんだ! 命ある者を守るためにだ! なのに、命ある者どもはそれを無視して、オレらを排除するのかよ! よってたかって邪魔者扱いしやがって!」
「トウタス、やめろ! ボクが出頭すればいいだけのことだ」
観念したかのように、カミュが後ろからしがみつく。
「離せよカミュ! 親分ったってなぁ、つけなくていいケジメだってあるんだ! こいつらの言い分なんざ無視しちまえ!」
オレたちが言い争いをしていると、
ソフィーが、転がるように屋敷から出てきた。
「大変よ! 街じゅうに火が!」
山の下にある王都が、火災に見舞われている。
考える余裕すら、与えてくれないのかよ。
騎士の一人が報告に来る。王都に大量のグールが現れたらしい。なんと、隣国も同様に、グールの襲撃を受けているらしい。
「見ろよ。これが奴らの、リ・ッキのやり方だ。混乱に乗じて火を放つ。隣国はオレらに因縁をつけてくるだろうぜ!」
オレはカミュの手首を引く。
「話は後だ。今は、街を救うのが先決だろ!」
騎士たちに向けて、オレは言い放った。
「逃がさんぞ。囲め!」
騎士団長の号令がかかり、兵隊がオレたちの行く手を阻んだ。
どうする、強行突撃するか? そうなれば、確実に王家と対立してしまう。
「どいてくれ、決着は街をなんとかしてから」
懸命に説得するも、騎士たちは引き下がらない。お役所仕事が!
爆音が轟き、一台のバイクがオレの前に降り立つ。
「載れい、二人とも!」
馬の嘶きを真似るように、ウィリーした。
「我こそはハイモ・ヘルツォーゲンベルク! 古き友の遺した城を悪鬼の群れから奪還すべく、助太刀致す!」
勢いに負け、兵隊が鉄壁の隊列を崩す。
「参ろうか! ワシも彼の地を踏むのは久しぶりぞ!」
風を切るように、バイクが疾走した。
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