リキとの再会!

 鬼・オーガ族は、人間の一〇倍の怪力を誇る。鋼の肉体は、金属製の武器すら通さない。


 さっきとは打って変わって、桜花団の方が劣勢になる。


「まずい、加勢しよう!」

「待ってました! お前に合わせる!」


 天井から、オレは山伏へ急降下した。

 カミュと息を合わせ、鬼山伏に前蹴りを喰らわせる。


 蹴りをノドや頬に浴びて、鬼山伏が海へ転落した。


「久しぶりだな、リキ。少し太ったんじゃねえのか?」 


 始めは眉を寄せていたキャンデロロが、目を見開く。

 オレの正体に気づいたらしい。

「ワレ、樺島かばしまか?」


「よく覚えてるじゃねえか! そうさ、オレは樺島かばしま 尊毘とうたすだよ!」

 いきなり全力を叩き込む。


「ジンギ 剛毅ビシャモン!」

 防護フィールを纏った拳を、男爵に叩き込む。


「ぬうん!」

 だが、男爵のパワーに跳ね返された。


「なんだと!?」


「ビシャモン天のパワーか。厄介や。せやけど、こっちかて対策は取ってるんや!」

 男爵の周りを、紫色の煙が覆っている。


「なんだ、あいつの気迫?」

「瘴気の塊だ。ジンギと同等の力が備わっているぞ」


 こころなしか、男爵の身体が三割増しで膨れあがっているような。


「これが邪神の力や! お前らの力なんて、邪神の前では無力なんじゃ!」


「その力を手に入れるために、何人犠牲にしてきた!」


「いちいち砂粒数えるヤツなんぞおらんのじゃ!」


 このヤロウ、人を砂粒呼ばわりするか。


「邪神の前では、いかなる存在もゴミのようなもんや! 圧倒的な力に吸収され、やがて一つになるんや。それ以上の恩恵がどこにある?」


「宇宙と一体化する、というのか?」


「アホか。宇宙どころやない。邪神は宇宙すら取り込んでしまうんや!」

 月明かりを指さし、男爵は不気味な笑みを浮かべる。


 どれだけ図々しいんだ?

 こいつのいい言い分は、ただ虎の威を借る狐だろ。

 何も共感できない。


「お前らにはワシの崇高な野望が分からんのじゃ!」

「分かってたまるか!」 


「あとは頼んだで」

 乗船したキャンデロロは、船を動かし、道具ごと海へと消えていった。


「待てリキ、テメエ!」

 追いかけようとしたオレの足首を、青い手が掴んだ。

 そのまま、オレは船着き場の壁に叩き付けられる。

「まだ生きてやがったのか!」

「あの程度で死は迎えられぬ! もっと震えるような、たぎるような死を!」


 坊さんのくせに、死に魅了されてやがるのか。


「す、助太刀、いたす」

 ケガをおして、桜花団が立ち上がろうとする。

「あんたらは休んでろ。カミュ、あの人たちを頼む!」


 カミュが、桜花団に治癒魔法を施す。


 回復なら杯を使う方が早い。

 だが、しくじると彼女たちをアンデッドにしてしまう。

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