ヤクザと異国のサムライ

 取引の日を迎える。


 オレたちは、港に近い倉庫の天井に張り付いて、取引の様子を伺っていた。

 今日は満月だ。できるだけ光を避けるように、注意を払う。 


 港に現れたのは、商人だ。男爵と接触するため、泳がせておいたのである。


 背の高いひげ面の男が、船に近づく。髪型はオールバックで、胸板が厚い。

 あれが。キャンデロロ男爵か。

 似ている、リキに。リキを筋肉質にした感じだ。


 キャンデロロは、取り巻きを男女二名連れていた。

 男の方は青鬼の山伏である。

 女の方は、服が透けていた。とはいえ、身体部分から向こうの景色が見通せる。全身が結晶でできているらしい。夜なのに日傘を指している。


「あの女は、スケルトンだね。筋肉の方が透明なんだ。でも、どこかで見たような」

 顎に手を当てて、カミュは考え込む。


 まあいい。当面の目的はリ・ッキだ。

 キャンデロロがリ・ッキかどうか。 


「タマミ、何か分かるか?」


 ブンブンと、タマミは首を振った。

「分かんない。でも、二つの魂が同居しているのは確かだよ」


 そうか、こいつはリキの顔を知らない。

 ヤツの写真も一緒に転生できればよかったのだが。

 それでも、この世界にも写真の技術はなさそうだし。


「間違いねえ。あいつはリキだ」

 手のクセで分かった。

 リキは、何か企んでいるとき、葉巻を浪人回しするんだ。


「船の積み荷が、魔法の道具だろうね」


 呪いのアイテムを集めてるって、ソフィーも言っていたな。


 積み荷を確認すると、キャンデロロは満足そうな顔を浮かべた。

 次の瞬間、どこからともなく現れたグール共に、商人は食われてしまう。


「ひでえ」

 オレは顔をしかめる。


「よし、タマミはソフィーと一緒に帰ってろ」

 ソフィーにタマミを預けた。


「ツッコむぞ、カミュ」

「待って!」

 カミュがオレの肩を掴む。


 下を見ると、刀を構えた数名の集団が、取引現場を囲んだ。全員が、ピンク色の羽織と紺の袴で統一している。この間街で見かけた、サムライ集団だ。


「我々は、カジイドラ国のサムライ衆、桜花団! 奪われた魔法道具、奪還に参った!」


 桜花団に、グールが向かっていく。


 屍鬼などものともせず、桜花団は切って捨てた。


「キャンデロロ、おとなしく魔法道具を返せ! 返せばここは見逃す!」


「さよか。ほな」

 キャンデロロが、山伏に指示を送る。


 金剛杖を振り回しながら、山伏は桜花団へ突撃した。


 桜花団の刀で応戦する。

 しかし、グールを両断する自慢の武器さえ、あっさりと折れてしまった。


「無茶だ、人間がオーガ族を相手にするなんて」

 戦況を見ながら、カミュがわずかに身を起こす。助けに行く気だ。

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