カチコミ、ゴーストタウン

 メシュラは、カルンスタインからさして遠くない位置にあった。


 といっても、ハイモ卿のバイクがなければ、馬車で数日、という計算だが。


 ハイモ卿のバイクに馬車を繋げて、一昼夜で走り抜けた。

 おかげで脳内がグチャグチャだが。

 ゾンビでなければ、今頃挽肉になってたぜ。


 鈍色の雲が、街の上に鎮座していた。

 うっすらと、霧も立ちこめている。


「ひどいのう」


 メシュラの街は、すっかりゴーストタウンになっていた。

 建物も立派で、さぞ密度の濃い街だったように思わせる。


「どっかにリ・ッキの手がかりがあるはずだ。探そうぜ」


「待て、その必要はないみたいだよ」 


 言った側から、敵に囲まれた。

 オレたちの視界に、無数のグールが。


「ハイモ卿は隠れていてください。馬車の守護を」


「心得た」

 カミュの指示により、ハイモ卿が後ろへ下がる。


「さて、どうするよ?」

「決まってるだろ。全部たたき切る!」

「そうこなくっちゃ! ヤロウ共、遠慮すんな!」


 彼らはおそらく元住民だ。

 しかし、闇に落ちてしまったなら、倒して浄化してやるしかない。

 

 いきなり全力で行った。

 剛毅ビシャモンを解放し、グールを切り刻む。

「なんだ、こいつら、数が多すぎるぜ!」

「街の人達全員が、グールにされている!」

 舞踊のような動きで、カミュは華麗に敵を排除していく。

 しかし、こいつも手こずっているようだ。


「そんなことできんのかよ!」

「リ・ッキならあるいは、ね!」

 カミュの放った銃弾が、グールの腹を貫いた。


「このままじゃ、マジでイタチごっこだ」

「そうだね。不自然に曇っているのも気になる」

「どういうことだ?」

「グールはゾンビより強いが、朝日が苦手なんだ。活動するときは夜が多い。だが、彼らは昼間から襲ってきた」


 ならば、あの雲が怪しいと。


「オレに考えがある。太陽の位置を計算してくれ!」

「ちょうど真上だ!」

「よっしゃ。ジンギ 剛毅ビシャモン!」

 オレはありったけのパワーを、銃弾に集中させた。


「いちかばちか」

 空に向けて、引き金を引く。


 甲羅の形をしたバリアを張りながら、銃弾が上空高く進んだ。

 サークル状に、雲を払う。

 

 太陽のまばゆい光が、オレたちを差した。

 

 暖炉の薪のように、グールたちの身体が焼け焦げる。

 まさか、お天道様が顔を出すなんて夢にも思っていなかったのか、全員が油断していたらしい。

 グール全員が日差しをまともに浴びる。


 建物に隠れたグールがいたら、オレとカミュで引っ張り出した。


 太陽光は狙い澄ましたかのように、グールの群れを焼き尽くす。


 グールの気配が、完全に消えた。

 一匹残らずいなくなったようだ。

「すごいよ、トウタス。そんなことができるなんて」

「オレが一番驚いてるんだよ」


「でも助かったよ。これで敵の気配は……」

 カミュの表情が、険しくなる。


「何かいるんだな?」


「ああ。あそこに、一際強い力を持った奴がいる」

 山の向こうにある屋敷を、カミュが指す。


「荘園か」

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