ウィル・オ・ウィスプ VS ヤクザ!

 オレたちはメシュラの荘園へ足を踏み入れた。


 庭に咲いている花が目に入る。

「見ろよ、この花」


 咲いたまま死んでいた。

 写真が実体化したのかと思うくらいに生気がない。

 

 中は、見事に何もない。すっからかんだ。クモの巣まで張っている。クモも、同じように剥製状となって死んでいた。


 もう何年も手入れすらされていないくらいに朽ちている。

 数日前に滅んだばかりだというのに。


「魂だけ抜き取られた感じだ」

「人が住まなくなったらこんなもんさ。ましてやアンデッドが住まう街なら尚更ね」


 領主の間に到着する。


 壁には、武器が立てかけられていた。どれも統一感がない。世界中から珍しい武具が集められたものらしい。


「手裏剣まであるぜ」

「彼も、コレクターだったみたいだね」


 そこには、一本の大剣が飾られていた。

 剣と言うよりナタに近く、不気味なオーラを纏っている。

 違う。これは、気配じゃない。実体がある。


「誰じゃ。我らが姫様の領地に足を踏み入れるのは?」

 赤い火の玉の集合体が、剣に取り憑いていたのだ。


「剣が生きてやがる!」

「ウィルオウィスプか! それにしては大きすぎる!」


 壁中に飾られた武器一式が、火の玉に集まってくる。

 中央の剣を取り囲むように。

 かと思えば、一斉に切っ先をこちらへ向けてくる。


「我らはグールのようにはいかぬぞ!」


 武器が一斉にこちらへ殺到してきた。ナイフが、手裏剣が、槍が、同じスピードで迫る。


 剛毅ビシャモンで、すべて弾き飛ばす。

「あまり広範囲にエネルギーを使わない方がいい」


 分かってはいるんだが、この数をピンポイントで弾けるかどうか。


「調子に乗りやがって。くらえ!」

 反撃に、亡霊銀で斬りかかる。


 オレの一撃は、無数の武装に遮られた。


「ムダだ、我々は一つにして全。無数の魂の集まり。それは姫様の手となり足となる」


 姫様だぁ?


 だが、今は考えている暇はない。

「どうやって倒すんだよ!」

「弱点はあるはずだ!」

 武器を弾きながら、思考を巡らせる。


「あの剣ヤロウは攻撃してこない!」


 一番大きくて強そうなのだが、中央で突っ立ったままだ。


「そうか。武器を操っている間は動けないんだ!」

 メモリ不足ってワケか。


「ヤロウを引っ張り出す! 剛毅ビシャモン!」

 オレは、ビシャモンの力で、全身をコーティングした。


「何をする気だ、トウタス? まさか!」


「さあ、きやがれ!」

 中腰になって、殺到する武器を迎え撃つ。


「無茶だトウタス。逃げろ!」

 オレは、カミュのアドバイスを無視した。


 全ての武器が、オレの身体に突き刺さる。


「い、っってえええええええええええ!」

 さすがに、霊力のこもった武器は、痛みを感じるらしい。


「トウタス!」

 カミュが悲痛な叫びを上げた。


「大丈夫だ。これくらい、どうってことねえよ!」

 踏ん張って、オレは武器が逃げないように、自分の身体を抱きしめる。

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