おめかしゾンビ作戦?

 キャンデロロ男爵と隣国との間に接点があるのか、調査する。

 賑やかになる夜まで待って、酒場へ。


「連れてきたよ」

 タマミが、商人タイプのゾンビを連れてきた。


 酒場の外で、商人ゾンビと打ち合わせを。

「奥に座ってるひげ面の商人、キャンデロロと組んで荒稼ぎしているそう。隣国にも詳しい」

 カウンター奥にいる客を、商人ゾンビは指さす。


 ヤツは、とびきり強い酒をあおっていた。高そうなチーズをツマミにしている。


「気分よく酔っているね」

「どうするの、お兄ちゃん? おとなの人にお話聞くのって大変そう」


 ここは、元ヤクザの本領を発揮するところだな。

「心配するな。オレにいい考えがある」

 オレはサムズアップで、二人の心配を振り払った。

 

 女装したオレ、カミュとタマミが、順にカウンター席へ座り、悪徳商人を目で射る。

 オレとタマミの服は、カミュのクローゼットから拝借した衣装だ。

 どうよ、最高の作戦じゃないか。


「ミルクでも飲んで帰んな」

 オレたちのウインクを無視して、商人は不機嫌そうに鼻を鳴らした。


 退散し、プランを組み直すことに。

「なんだよ。目一杯、露出を意識したってのにさ」

 自棄になったカミュが、ゲソを肴にミルクをあおる。


 どうもあの商人、オレたちの魅力に気づかないらしい。

 

 元々女性であるカミュはいい線いっていると思ったのだが。

 タイトスカート姿なんて初めて見たぞ。これはレアだ。


「ヴァンパイアには、魅了能力があるって聞いたが?」

「子どものボクには備わっていないよ。あったとしても、使えば怪しまれる。リ・ッキ絡みなら、相手もアンデッドに詳しいわけだし」


 オレの作戦ミスだった。

 カミュを当てにしていた段階で詰んでいたのだ。


「お前は飾らない所が魅力だからな。無理ないぜ」


 オレが慰めると、どういうわけかカミュがむせた。

「キミねえ、もうちょっとTPOをわきまえたまえよ、まったく」

 カミュがミルクで喉を潤す。

 ゲソが変な所にでも入ったのだろう。


「ごめんなさい、お兄ちゃん。わたしがいるせいで」

 白いワンピース姿のタマミが、カミュにならってミルクのジョッキをあおろうとする。

 持ち上がらなくて、結局チビチビと啜るが。

 自分も役に立ちたいと張り切って、ケバい化粧までしていた。


「気にするな、マリリン・モンロー。奴さんのせいだからよ」


 妹にべそ書かせる商人の野郎が悪い。

 少々荒っぽいが、強引にでも吐かせるか。


 オレが相手の胸ぐらでも掴もうと思った刹那、妖艶なリュートの音色が耳を撫でた。


 思わず、オレも聞き惚れてしまう。


 青白い肌を持った踊り子が、リュートを持って現れる。

 スケスケのジャケットとズボンの下にはビキニだ。耳や首に、金細工の装飾品が光る。彼女が回る度、装飾品が音を鳴らし、店内の明かりを反射させた。

 妖精が現れたのか、と思わせる。


「ソフィーさんだ!」

 同性のタマミでさえ、憧れの眼差しを向けてうっとりしていた。

 言われてみれば、そうだ。


 スケスケのスカートにビキニ姿だから、誰だか分からなかったが、確かにソフィーだった。

 なまめかしく踊り、大人の恋を歌う。

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