腐女シスター再び

「待て待てぇ」

 ドタドタと、噴水広場を駆ける巨乳がひとり。


 そういえばコイツ、力仕事は得意だが、足は遅かったな。

 だから、自走式の鉄球を武器にしているのか。


「あれ、悪者さんは?」

 セェレは、辺りをキョロキョロする。


 オレは、役場を指さす。

 兵隊が悪党を役場内に押し込んでいる所だ。


「ぜえ、ぜえ、よかったぁ。どなたか逮捕してくださったんですね」

 安堵の表情を浮かべる。

「あれ、トウタス? それにカミュ君まで。二人が捕まえてくれたの?」


「まあ、な。逃げられそうになったが」


「ありがとぉ。凶悪犯だから、早く捕まえなきゃって急いでいたんだけど」

 まだ、肩で息をしている。


「解決したから、落ち着け。それより、王族の護衛に回っていたって聞いたが?」


「そうなの! その人ね、大胆にも王の寝室に入ろうとしてね、返り討ちに遭ったの。逃げている拍子にアチコチの屋台を潰して回って」


 こんな俊敏なヤツを追っ払うとは、この国の王様は、腕が立つようだ。肝も据わっている。


「トウタスが助けてくれたんだ。彼がいなければ、取り逃していた」

 カミュが、オレの肩に腕を回す。


「ばっふ!」


 カミュの言葉を聞き、セェレは軽く噴射した。

 噴火レベル二ってところか。


「美少年二人の息のあったプレイ! ああ、神よ! どうしてわたしに、それを見る機会を与えてはくださらなかったのか!」


 お前がそんなんだからだよ。


「その子は、この間助けた子?」

「ああ。タマミってんだ。孤児だって言うから、オレが引き取った」

 セェレは、タマミと同じ高さまでしゃがんだ。

「わたしはトウタスの幼なじみでセェレです。よろしく、タマミちゃん」


「タマミです。おにいちゃんの妹です」

 丁寧に頭を下げ、タマミも挨拶をする。


「そうなのね、こいつ見た目より強がりだから、目を離しちゃダメよ」

「うんっ」


 お前ら、何を言って! 


「じゃあ、わたしは賊を引き取りますから」

 他の騎士団と共に、セェレは立ち去った。賊を王の直属兵に引き渡す。


 兵隊の一人がこちらを見た。

 何が不思議なのか、首をかしげている。

 側にいるセェレに話しかけた。

 

 何故か、セェレがあたふたし始める。

 何を焦っているのか、何かを説明しているかのようだが。

 また、兵隊がこちらを振り返るも、今度は引き下がる。


 オレの服の裾を、タマミが引っ張ってきた。

「いまの人、だあれ?」

 心なしか、タマミは頬を膨らませているようだ。

「お兄ちゃんのおよめさんこうほ?」


「違うな。あいつは男同士の恋愛以外に興味ねえから」

「だよね。お兄ちゃんには、カミュおやぶんがいるもんね」

 頬を染めながら、タマミはにこりと微笑む。


 お前も、そっち方面の道へ進む気か?

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