逃走犯を追え
「何があった?」
通行人に尋ねる。
「誰かが屋台を倒して行きやがったんだ!」
炎は他の店にまで燃え移った。人々が逃げ惑う。
やべえ。タマミが側にいたら、火に近づけない!
「ボクが行く、キミはタマミちゃんを見ていて!」
駆け足で、カミュが現場へ向かう。
「すまん頼む!」
オレは、タマミを抱きかかえ、できるだけ炎から離れる。
カミュが店の前で手を突き出す。目をつむって、不思議な言語を発した。
カミュの手に、白い靄が掛かる。
離れているオレにも分かるほど、冷気がカミュの手の平に集まっているのだ。
冷気は白い雪へと変化し、大きな氷へと変化した。カミュは屋台に向けて、氷塊を放つ。
浮遊しながら、氷の塊は火の手に近づく
やがて一気に氷が溶け出した。
雨となって、水が燃えさかる屋台に降り注ぐ。
屋台をなで回していた炎はたちまち消え去った。
引火していた店にも、カミュは同等の術を施す。
「あそこだ! あのヤロウだ!」
屋台の商人が、路地の向こうを指さした。
白い布で顔を覆った男が、路地へ逃げていく。
黒煙の舞う中、黒い影が路地裏へ。
「待ちやがれ!」
オレは後を追う。
賊がナイフを近くにある屋台に投げつける。
柱を支えているヒモが切れて、屋台が倒れてきた。
近くにいたタマミが頭を抑えてしゃがむ。
「タマミ!」
元の位置まで戻り、オレはタマミをかばう。倒れてきた屋台骨が、オレの背中に当たる。
「先に行ってる! キミはタマミちゃんを!」
カミュが飛びだしていく。
「タマミ、お前はじっとしてろ!」
「何事だ!」
兵士が駆け寄ってきた。
「悪党が出た。追いかけるから、この子を頼む」
近くにいた兵士の一人に、タマミを預ける。
「タマミ、お前はじっとしてろ!」
「うん」
タマミが、心配そうな顔をした。
オレはタマミの頬を手で撫でて、落ち着かせる。
オレとカミュで賊を追う。
赤煉瓦の屋根を、カミュが駆け抜ける。足跡一つ立てず。
それでも尚、敵の方が早かった。
「これでは、見逃してしまう!」
「くそ、どうすれば!」
オレも追いかけているが、敵はずっと先だ。
「こっちも加速すればいいんだよな?」
だとしたら、いい考えがあるぜ。
「ジンギ 剛毅ビシャモン!」
腕にジンギを発動させる。
「カミュ、オレの拳の上に乗っかれ!」
オレの合図に合わせ、カミュが天井から飛び降りた。
「吹っ飛べ!」
カミュの足の裏を殴る。
オレの拳をバネ代わりにして、カミュが跳躍した。
上空を見上げ、逃亡者がブレーキをかける。
瞬間、カミュが相手に落下した。そのまま敵に組み付く。
敵が暴れた拍子に、カミュのベレー帽がたたき落とされる。
銀色の長髪を、風が撫でた。
人並み外れた美貌のせいか、人々がカミュに目を奪われる。
「おとなしくしろ!」
手刀で、カミュは相手を昏倒させた。
「見事だぜ、カミュ」
タマミと合流し、オレたちは不審者を役場まで連行する。
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