ヤクザ VS 首なしライダー!

 王座の間は、何もかもが白く、当時の面影を残す者は何もない。一面の瓦礫だ。


 その状態ですら勲章であると言わんばかりに、デュラハンは堂々としていた。鉄の乗り物にまたがって。


「よく来たな、カルンスタインのお坊ちゃん。いや、お嬢ちゃんと言うべきか」


「その声は、ハイモ・ヘルツォーゲンベルク卿ですか?」

「いかにも!」


 一筋の光が、乗り物から放出された。

 腕を顔の前にして、カミュは目を塞ぐ。


 ワイバーンのサングラスのおかげで、オレは相手の乗る物体の正体を掴んだ。


 あれは、ライトじゃないか。


「なんだありゃあ。この世界に、バイクだと?」


「左様だ。よく我が正体に気づいたな。異邦人か?」

 バイクの先端部分にある生首が、口を利いた。両目から光を放ち、口の端をつり上げて。

 またがるのは、首なしライダーだった。


「キャンデロロ男爵から譲り受けた神秘の技術、鉄の騎馬! とくと味わうがいい!」

 デュラハンは、ウィリー走行で、オレたちを押しつぶしに掛かる。


 二人して、横へ飛ぶ。


「おいおい、ひょっとして、親父さんの友人が、敵に回ったってことか?」


「多分。デュラハンって聞いた時点で。怪しむべきだった。ここを統治しているデュラハンは、ハイモ卿なんだよ」

 カミュは、無念さを隠さない。


「おやめください、ハイモ翁。どうして、リ・ッキなんぞに!」


「ワシにもワシの事情があるのよ! 貴様らに恨みはないが、お命ちょうだい致す!」

 爆音を上げて、ハイモ卿がバイクで突進してきた。


 二手に分かれて、バイクを回避する。


 どうやって動かしてやがるんだ? この世界にはガソリン、及びそれで動く乗り物はないはず。


「魔力石か。あの鉄の馬、車体の殆どを魔法金属で構成している。そこに自身の魔力を流し込んでいるんだ」


 奴さんは、魔法使いタイプってわけだな。 


 壁を駆け抜け、バイクが向かってきた。なんて器用な。


 攻撃もダメ、回避も困難だ。オレたちは、逃げ惑うしかない。

「調子に乗りやがって!」


 オレが銃で相手を狙う手を、カミュが掴んだ。

「ダメだ。ボクは手出しできない。何か、理由がありそうだ」


 父親のダチには攻撃できないか。


「そうと決まれば、消滅しねえ程度に痛めつける!」

「よせトウタス、ハイモ卿が死ぬかも知れない!」

「けどよ、このままじゃやられちまう!」


 言い争うオレたちの間を、ハイモ卿が突撃してきた。

「作戦会議などさせぬぞ、若造共!」


 すかさず、オレはカミュに飛びつく。カミュを抱きかかえながら、押し倒す形に。


 かつてのダチのガキですら容赦なしかよ。

 なら、こちらも手加減はしねえ。


「カミュ、オレに任せてくれ」

 腹をくくった。こうなったら、半殺しだ。

「できるのか?」


「できるさ。オレのジンギなら」

 立ち上がり、オレはジンギを切った。


「ジンギ 剛毅ビシャモン!」

 前面に、甲羅のバリアを張る。


「そんな盾なんぞ役に立たぬ!」


「それはどうかな?」

 オレは、バイクの突撃を正面から受け止めた。

 オレの身体が吹き飛ぶ。

 が、カウンターでドスをデュラハンの頭部にをぶっ刺した。


「ぬおおお!」

 眉間から血を吹き出し、バイクが動きを止める。


「この剣の切れ味、亡霊銀ミ・スリラーか! さては貴様、不死の者!?」


「そんなに、亡霊銀って扱いが難しいのか?」

「武器の特性を知らぬのか。ミ・スリラーは、不死者でなければ真価を発揮できぬ。生者が扱えば、たちまち魂を抜き取られる」


 そんなおっかねえ武器をくれたのか。 

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