デュラハンの正体

 盗賊ギルドへ戻ると、ソフィーから重要な情報が。

 フェロドニア騎士団を、魔物の住まう古城へ引きつけておいて、キャンデロロが動き出す、とのこと。


「ヘルツォーゲンベルク城跡を治めているのは、デュラハンだって。だけど、それ以上は分からないわ。デュラハンの指示で、モンスターが集まっていること以外は」

 

 本来なら、騎士団も王族の護衛に当たらなければならない。

 しかし、この事態も見逃せず、動けないのだとか。

「これは、急いだ方がいいね。奴らの作戦を引っかき回してやろう」

「よし。古城へカチコミだ! キャンデロロの息が掛かっている奴らは根こそぎ始末する!」


◇ * ◇ * ◇ * ◇

 

 比較的少数のグループのみを連れていき、ザコ敵は彼らに任せた。


「散開!」


 まずはゾンビグループを数名、先陣を切ってもらう。

 剣や弓が、大量の魔物を屠って、屍の山を築き上げた。

 ゾンビとはいえ、さすが元冒険者である。

 魔物に恨みを持っている奴らばかりなだけあって、大した仕事ぶりだ。

 しかも、カミュと杯を交わしているため、戦闘力は数倍に強化されている。任せていい。


「これじゃ、ゾンビじゃなくてエインフェリアだね。ボクたちに出番はないよ」

「だな。ここは奴らに働いてもらおう」


 ザコを引き受けてもらい、オレとカミュ差しへ急ぐ。


「敵襲だ!」

 ザコは、やはりグール共だ。ここも、リ・ッキの息が掛かった奴らの巣かよ。

「しゃらくせえ!」

 剛毅ビシャモンを発動するまでもない。オレはグール相手にミ・スリラーの試し切りをする。

 ほんのわずかな魔力を込めるだけで、ミ・スリラーの切れ味は増す。

 しかも、切る度に相手の魔力まで奪っていった。

「すげえな、このドス。剛毅ビシャモンの節約にもなるぜ」

「バラドには金を弾まないとね」

 まったくだ。


 廊下に飾ってある、数メートルの石像が動き出した。

 動く度に地面が響き、石の棍棒を振り回す。


「まだこんな奴らがいやがるのか!」

「そこだ、ジンギ・隠者レフトアローン!」


 カミュは小手付きのサーベルを、指揮棒のように巧みに操る。

 サーベルが、銃の形へと変化した。

 銃口から、銀色に輝く光芒が伸びる。

 カミュが魔力の光を撃ちだしたのだ。

 

 胸を貫かれ、石像がピタリと動きを止める。


「心臓を狙うんだ、トウタス」

 二発目で、カミュはまた石像を倒した。


「ジンギ・剛毅ビシャモン!」

 ミ・スリラーの長ドスに、毘沙門天の力を流し込む。


 豪腕から繰り出される棍棒を、長ドスで受け止めた。


 さしもの石像も、人間に力負けするとは思っていなかったらしい。動揺の表情を浮かべた。


「おててがお留守だぜ!」

 ドスで棍棒を止めつつ、ビシャモンの力を銃に込めた。至近距離で、敵の心臓部へ撃つ。

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