情報抱え落ち撲滅キャンペーン大作戦!

「モンスターがでます。お気を付けて」


 フェロドニア周辺の洞窟へ。

 入り口の岩山の裂け目に案内してもらう。


 ゾンビたちが先頭に立ち、オレとカミュは後に続いた。


「天井が低いな」


「へい。武器を十分に振り回せなくて、負けたんでさ」

 大柄な冒険者ゾンビが、少し中腰になるのを強要されている。


「これじゃあ、まともに戦えなかっただろう」


 蛇や虫系の、毒を持つモンスターがひしめき合っていた。

 お互いを食い合って、強力な毒を作り出しているのでは、と思わせる。


 ゾンビになったからか、多少噛まれてもオレに問題は出ない。

 毒を付与された途端、たちまち浄化されていく。

 遺体を捜すついでに、自分の身体がどうなっているのか確かめる。


 モンスターは無害に等しい。

 

 とはいえ、素手で撃退するのは骨が折れる。何か、武器が欲しい。


「ここには、何の用事があったんだ?」

 戦士型のゾンビに、当時の様子を聞く。


「この奥に、盗賊のアジトがあるとタレコミがあったんでい。そいつらは、フェロドニアの商人ギルドを襲う計画を立てているってんでさぁ。ところが、ギルドに確認を頼んだら、そんな情報はねえって」

 戦士型ゾンビは唯一脱出できた。

 が、下水道のアジトに単独乗り込んで、返り討ちに遭ったとのこと。


 奥まで進んでいくと、数え切れないほど大量に死体が転がっていた。

 無残に切り刻まれた者や、ブレスで焼かれた遺体まで。

 みな、無念さを残した表情を浮かべている。


「ひでえな。これ全部、リ・ッキ配下の魔物がやったのか?」

「へい。チーム全体が騙されて罠にかかったり、待ち伏せされてノドをかき切られて」


 三〇体以上はあるだろうか。

 いくら屈強の冒険者でも、毒モンスターや狭い通路が相手では、力を発揮できなかっただろう。


 杯を取り出して、オレは死体に血を飲ませていく。


 死体だった物体がむくりと起き上がった。

 我を忘れて、オレに斬りかかる者も。


「お控えなすって!」

 オレが仁義を切ると、ゾンビらは動きを止めた。オレの心が分かったのか?


「あっしは、トウタス・バウマーと申しやす。ワケあって、あんた方を目覚めさせやした。どうぞ、ここは矛を納めて話を聞いておくんなせえ」


 互いを見合いながら、ゾンビたちは困惑する。

 どうも、仁義の意味が通っていないだけのようだ。


「彼は味方だ。キミ達の無念を晴らしに来たんだ」

 カミュが説得し、ようやくゾンビも落ち着いた。


「いくら杯の力があっても、混乱するゾンビがいるな」

「殺された記憶が、ダイレクトに呼び覚まされるせいだろう」


 どうあれ、彼らを目覚めさせれば、強い味方にできる。

 オレは作戦を続けた。

 ゾンビ組に、新たな仲間が加わる。


「よし。盗賊団共を壊滅させに行くか!」


 洞窟内に、ゾンビの雄叫びが鳴り響いた。


 ゾンビアラームに起こされて、洞窟からコウモリが一斉に飛び立つ。


 冒険者ゾンビの案内で、盗賊団のアジトへ。

 洞窟から近い、山奥の小屋に向かう。


「ここから先は、あっしらで向かいやす」「恨みを晴らしてきますぅ」「アニキらは全部終わるまで手を出さねえでくだせぇ」

 口々に、ゾンビたちは言う。


「危なくなったら、手を出すからな」

「それでOKです」


 一〇〇体を超えるゾンビが、小屋へ突撃していった。

 何が起きたか分からない盗賊たちは、不意打ちに遭って一瞬で壊滅する。

 三〇人いた荒くれが、生娘のように悲鳴を上げて、何もできずにゾンビの餌食となった。


 ただ一匹を除いて。


 両手に青竜刀を持ったデブが、唯一ゾンビたちを寄せ付けない。一〇〇体の攻撃を全て受け止めきっていた。

 しかも、笑ってやがる。

 あの野郎がボスのようだ。


「下がってろ!」

 いたずらに攻めても、ゾンビたちが切り刻まれるだけ。

 オレが出て行く。

 片手に短剣を持ち、空手の構えで、オレは迎え撃つ。


 短剣しか持たないチビに舐められたと思ってか、野党のボスは青筋を立ててオレに斬りかかってきた。


 オレは低い姿勢になって、デブの内ももに短剣を突き立てた。


 だが、それくらいでは盗賊のボスは怯まない。


 分かってる。これは布石。


 何事もなかったかのように、盗賊ボスは特攻してくる。


 オレは短剣の柄を足場代わりに、駆け上がった。盗賊ボスのアゴに、膝蹴りを喰らわせる。


 相手は強固な筋肉と柔軟な脂肪で守られていた。

 されど、脳を揺らされたら、ひとたまりもない。


 盗賊のボスは、膝を崩した。それでも、執念で刃を振り下ろす。


 ダメ押しで、更にもう一ひねり加えた。

 こめかみにフックを浴びせる。


 青竜刀がオレの首をはねるより早く、オレのパンチは相手の首をひねり潰した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る