蘇れ幼女
オレは死体の山をかき分ける。
いた。
一人だけ、ショートボブの少女が呼吸をしている。
だが、もう虫の息だ。
「魂を抜かれたんだ。強い魔力を持つ者が呼び起こさなければ、彼女は死ぬ」
カミュが、分析をする。
「おいカミュ、杯をよこせ!」
「無理だ、彼女はもう」
「いいからよこせってんだ!」
オレが怒鳴ると、渋々といった感じで黄金の杯を懐から取り出す。
「オレのしょうもない血で申し訳ねえけど、受け取れ!」
ナイフの刃の部分を握りしめ、オレは自分の血を杯に注いだ。
少女にオレの血を飲ませる。
「ゾンビの血じゃ、むしろ身体に悪いんじゃ」
「キミの血だ。それに、ビシャモン天の加護もあるからね。見てみるまではわからんさ」
少女の生存に消極的だったカミュも、オレの行いに興味を示したらしい。
オレの願いが天に届いたのか、少女が目を開いた。
「ここは?」
起きるなり、少女は肩を硬直させる。
オレは少女の肩に手を置いた。
「心配ねえ。オレたちは味方だ」
少女が、オレの後ろを指さす。
オレの背中が、斜めに斬り刻まれる。
まだ、残党がいたのだ。
その光景を見て、少女がわめき出す。
「大丈夫だ」と、少女を宥めた。
残党が、剣を突き立てながら迫ってくる。
お返しに、残党の土手っ腹に拳を打ち込んだ。
一人は倒したが、オレはあっという間に囲まれてしまう。
少女を背負ったまま相手にできるだろうか。
「そこまでです!」
突如、巨大な鉄球が、チンピラ共に直撃した。
ヘビのような動きで、悪党共をぶちのめしていく。
「この場は、我がフェロドニア騎士団が預かります! 神妙になさい!」
オレを助けてくれたのは、セェレだった。
「騎士団を連れてきたわ」
ソフィーが間に合ったのだ。
「またケガして! トウタス、見せなさい」
「いいって」
「背中にツバは付けられないでしょ?」
ヤバイ。
このままでは、オレが不死身のゾンビだってバレちまう。
「またお会いしたね、マドモワゼル」
セェレを制止したのは、カミュだった。
「ボクが面倒を見るよ。そういう約束なんだ。彼がボクの背中を守り、ボクが彼の命を保証する」
ウインクを決めて、カミュはオレの背からナイフを抜き取った。
特別な呪文を吹きかけ、オレの傷を塞ぐ。
「ぐほぉ!」
また、セェレの鼻腔が噴火した。
「そうでしたら、お任せします。では」
鼻を押さえながら、セェレは持ち場につく。
オレは少女を抱きかかえ、アジトまで連れて帰る。
「まったく、お人好しなんだから、キミは」
「うるせえ。それはお互い様だぜ。それよりすまねえ。リ・ッキについて、何も聞き出せなかった」
結局、リ・ッキの情報は空振りに終わった。何をしに街まで出たんだか。
「そのうち、イヤと言うほど出くわすよ。こんな稼業をしていたらね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます