幼なじみは爆乳シスター

 なんなんだ一体?

 双丘が当たってうれしいやら苦しいやら。乳圧に圧迫されて成仏しそうだ。


 ピチッと肌に密着した白いローブは、おそらく司祭の趣味だろう。道行く他のシスターは普通の修道服であることが何よりの証拠だ。


 マシュマロの感触をかいくぐり、オレはどうにか少女の顔に視線を向けた。


「お前は確か、セェレか!」


 セェレ・ギルモアは、オレの知り合いである。

 オレが八つの時に、ニンニクを卸している八百屋の看板娘だった。同い年で、よく遊んでいたのを思い出す。


「村がモンスターに燃やされたって聞いたけど、無事だったんだね。もう、心配したんだから!」

 涙声で怒りながら、セェレが訴えかける。


「そうか。世話をかけたな。この通りだ」

 ゾンビになってしまったが。


「トウタス、血が!」

「ああ、平気だ。ツバ付けりゃ治るって」

「ダメだって! 見せて」

 セェレがオレの手を掴み、自分の手をかざす。


「あれ? 傷が塞がってるみたい」

「だろ? 言った通りじゃん」


 まあ、ゾンビだからな。死にもしないし、傷の治りも早かろう。


「今はシスターなんだな?」

「うん。治癒魔法の素質があるからって」


 言われてみれば。

 膝をすりむいたときにコイツが撫でると、あっというまに傷が塞がった。素質があったらしい。


「神様とコンタクトしやすい身体なんだって。トウタスは何してるの?」


「冒険者登録をしてきた。村がなくなったから、独り立ちしようと思ってな」


 さっきの出来事を、オレたちの事情をなるべく伏せて説明した。嘘は言っていないはず。


「そうだったんだ。ごめんなさい。何も助けられなくて」

「その気持ちだけで十分だ。すまねえ」

 セェレは神に祈る仕草をする。

「あなたに、フェルダの加護があらんことを」


 オレが人間だったら、なんてことなかっただろう。だが、今はゾンビ。セェレの祈りで、オレは危うく天に召されそうになった。


「ちょっと、白目剥いてるけど、大丈夫?」

 オレを気にかけて、セェレが手を握ってくる。


 待ってくれ、その仕草だけでもオレには堪えるんだが。


「お、お友達と一緒か」

 カミュが戻ってきた。


「おう、もういいのか?」

「情報屋と話を付けてきた。夕刻に酒場で落ち合う予定さ。ところで」

 カミュが視線をセェレに移す。


「キミに彼女がいたなんて、聞いてないんだけど?」


 カミュの目つきが鋭い。


「待て。そういうんじゃねえよ!」


「そうですそうです!」

 オレに続き、セェレもうなずいた。


「だったら、このキレイなお嬢さんを紹介してくれないか?」

「幼なじみのセェレだ」


 カミュはセェレに近づき、会釈する。 

「どうも、ボクはカミュ・シェリダン。この街を拠点にしてるクルースニクだ」

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