第二章 インタビュー・ウィズ・ヤクザ

ニンニクの街 フェロドニア

 翌朝、オレとカミュは、フェロドニアの街へ繰り出した。

 屋敷から最も近いのが、この街だ。


 カミュの服装は、元の男装に戻っている。ベレー帽がブラウン柄に変わっている点か。抜群に似合っている。


  オレも、今日はカミュに服をチェックされた。オレは適当でいいと言ったのだが。

 なんか、カミュの方が変に気合いが入っていた。気のせいだろうか?


 この辺りの地域では中規模の街で、豊穣神フェルダを祭る大聖堂が有名である。


「フェルダ神は、他宗教にはちと厳しいかな」

「オレのいた国じゃ、排他的な宗教観はなんか馴染めん」


 とはいえ、こんな世界でどの神を崇めるとか、価値観のなすりつけ合いもどうかと思う。オレはオレのビシャモン天を信じる。


「フェロドニアはニンニク臭いんだよ。さしずめニンニクの神様だね」

 カミュは鼻をつまんだ。吸血鬼だけあって、ニンニクには弱いらしい。


「原産地だからな」


 フェロドニアは、よその地域から取り入れたニンニクを輸入し、独自の製法で自作している。形は小さいが、原産地より辛味が強く、料理用としては申し分ない。


「イチゴも作ってるんだから、イチゴの神様になればよかったのに」

「贅沢言うなって。ささ、調査調査」


 オレたちがここに来た理由は、闇市があると聞いたからだ。

 稼業は人身売買である。

 フェロドニアだけでなく、世界各地で禁止されている。

 

 それを取り仕切っているのが、魔族だというのだ。

 もしかすると、リ・ッキの差し金かも知れなかった。


「適当に宿を取って、夜まで待とう」

 宿屋で登録を済ませると、カミュはオレを武器屋へと連れて行った。


「馴染みの装備店がある。そこで顔を出しておけば、魔族もデカイ顔はできないだろう」

「いいのか? せっかく逃げているのに」


「今まではそれでもよかった。だけど、リ・ッキと戦うなら、多少のリスクは負うべきだ。キミがボクを守ってくれるのだろう?」


 もちろんだ。

 オレは、カミュに命を預けた。

 どんなことがあってもついて行く。


「ここだよ」


 木造の建物が並ぶ中、一件だけ小さな石造りの家がある。

 火災の時に火が燃え移らないようにするためだろう。

 煙突からは、煙がモクモクと立っていた。

 

 カウンターには、気難しそうな爺さんが、眉間に皺を寄せて剣の刃を研磨していた。ずんぐりむっくりしていて、背も低い。


「やあ、バラド」


「おう、シェリダンの坊ちゃま。フェロドニアに来ていたのか?」

 カミュの声に気づき、老人は顔を上げる。


「ちょっと仕事でね」

「まだリ・ッキを探してるのか? やめときな。ヤツにやられた同業者を何人も知っている」


 老人はそうカミュに忠告し、作業に戻った。

 どうやら、ナイフに紋章を彫っているらしい。


「彼はバラド。ドワーフの鍛冶屋だよ」

 本物のドワーフか。迫力がある。

 体系に似合わぬ腕の太さも、ようやく納得がいった。


「そっちのガキは?」

「オレか、オレはトウタス。カミュ坊ちゃまの子分だ」


「えらいベッピン連れているなと思った。メスかと思ったぜ」

 バラドの言葉から、侮蔑の感情は受けない。マジで女だと思われている。


「最近雇ったんだ。彼に見合う武器を用立ててくれるかい?」

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