姐さん、一大事です
姐さんがそんな凄い人だったなんて、にわかには信じがたい。
今でも、オレにとって姐さんは、イラストの先生で、オレはモデル兼アシスタントだ。
「驚きましたよ。まさか、あなたがテムジンと関わりがあったとは」
サティが、お茶のおかわりをくれた。
「待てよ。オレの、トウタス・バウマーが住んでいた村が襲われたのは、ひょっとすると」
「ボクを探していたのもあるだろうけれど、ビシャモン天の力を持つ者を探していたのかも」
もし、カミュの意見が正しいなら、リ・ッキがリキと関わりなくとも、許せねえ。
リ・ッキが姿を現し、魔物たちはまた活性化した。
カミュは改めて、リ・ッキと関わりのある者達の抹殺を再開したのである。
「多分、テムジンの身に、この世界に戻れないアクシデントが起きた。例えば、魔力が足りなくて帰れなくなったとか。そこで、キミに何らかの処置を施し、リ・ッキの討伐を託したのだと思う」
カミュが、オレに向き直る。
「悪いね。酷い言い方をして」
「いいさ。姐さんはいい人だった。何か事情があったんだろうさ」
「倒すべきは、ノーライフキングだ。彼を倒し、彼に寝返った奴らにも、落とし前を付けさせる。今度こそこの手でリ・ッキを。頼む。協力してくれないか?」
「分かった。手伝うぜ」
オレは改めて、彼に手を貸そうと決めた。
姐さんの役に立てるなら、姐さんにとってもリキが敵だというなら、オレも手を貸す。
「ありがとう。そのお礼に、キミの仇を探すのに協力させてくれ」
「できるのか、そんなこと?」
「心当たりがある。キミの探している下手人は、血を使って魔方陣を作った、と言っていたね? 実は、ノーライフキングも、同じような手を使う。彼はそうやって、グールを形成するんだ。もしかすると、リ・ッキの正体は同じ男かも知れない」
「言い切れるか?」
「人間だったらしいけど、彼は始めから人間ではなかった可能性もある。何らかの事情でキミの世界飛ばされて、力を取り戻すために事件を起こした。それなら、辻褄が合う」
話を聞いている限り、リ・ッキとリキが同一人物である可能性は濃厚だ。
だとすれば、敵は共通しているというワケか。
「よし、じゃあそのリ・ッキとかいう野郎を探そうぜ。カミュの親分」
「オヤブン?」
「ああ。この世界じゃ、あんたがオレの親分だ。よろしく頼むぜ」
カミュが、サティに目を移す。
サティは大げさに肩をすくめた。
「この山を下りれば、フェロドニアという街がある。明日はそこで情報を集めよう。それと、ボクをオヤブンって呼ばないでね」
「そっか。『二代目』って呼ぶ方がよかったか?」
「そういう問題じゃないから!」
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